子どもへの対応で意識してほしいこと
「こんなときどんな対応をしたらいいの?」「どういう声かけをしたら子どもに伝わるんだろう…」と、保育をする中で子どもへの声かけや対応に悩んだ経験のある保育士さんは多いのではないでしょうか。子どもによっても、シチュエーションによっても適した声かけは異なり、正解はありません。しかし逆に、どのような場面でも「ここだけは気を付けておきたい」「ここは間違ってはいけない」という共通のポイントがあります。保育士の声かけの基本とも言えるところですので、まずはその点を確認し、理解していきましょう。
強制しない
「〇〇しなさい」「やめなさい」など、命令系の声かけはNGです。子どもの主体性や意思を尊重することは、保育の重要なポイント。強制や命令をするような声かけは、保育士さんが主体になっているため好ましくありません。感情的になるとつい出がちな言葉なので、特に注意したいポイントですね。否定しない
「こんなこともできないの?」「そんなのダメに決まってるでしょ!」など、子どもの言動を否定することは避けましょう。子どもも頭ごなしに否定をされては、自分に自信がなくなってしまったり、感情表現ができなくなったりしてしまいます。もし言動を注意するときは、まずは子どもの気持ちを受け止めてからいけないことを伝えたり、提案の形に言い換えたりするといいですよ。比較しない
「〇〇ちゃんはできてるのに…」「できないのは〇〇くんだけだよ」など、他の子どもと比較する声かけは、子どもの自信や挑戦心を奪ってしまうことがあります。大人でも、他人と比べられるのは気持ちがいいものではありませんよね。向き不向きや得意不得意は、子どもにもあって当然です。できないことに焦点を当てるのではなく、できることに目を向けて声かけをしていきましょう。脅さない
「〇〇しないと置いていくからね」「そんなことばっかしてるとお母さんが迎えに来てくれないよ」など、子どもが「それは嫌だ!」と思うような声かけをして無理矢理行動させたり、やめさせたりすることは、実はよくあることです。しかしこれは、「~させる」ための声かけであり、子どもにとっては強制的な怖い声かけ。脅すような言葉で、言うことをきかせても意味がありませんよね。ついつい使ってしまう言葉かもしれませんが、できるだけ避けるようにしましょう。
言動の理由を考える
どんな場面でもまず最初に必ず行ってほしいことは、「どうして子どもはそのような言動をしたのか?」と考えることです。子どもの行動や発言の裏側には、うまく言葉にできていない気持ちが隠れていることも多いですよね。保育士さんは、その裏側の気持ちを考え、読み取り、受け止めましょう。もちろん、子ども自身に聞いてみるのもOK。気持ちを受け止めてもらえたという経験が、子どもたちの自己肯定感を育むきっかけにもなります。【事例別】子どもへの対応ポイント
今回は、ほいくis公式Instagramに寄せられた保育士や幼稚園教諭の皆さんのお悩みから、「特定のシチュエーションでの声かけや対応」についてお答えしたいと思います。いくつかの事例について、対応のポイントをまとめました。ただし、ここでご紹介するのはあくまで提案であり、保育の正解ではありません。目の前の子どもの状況や発達、気持ちなどを一番に考慮して、ひとつの参考として読んでいただければと思います。Q、「マイペースな子への対応はどうしたらいい?」
マイペースで集団の動きから遅れてしまう、みんなと一緒に行動できない、ということであれば、急かしてみんなと合わせる必要はあまりないかもしれません。誰でも自分の中に落ち着いて生活できるペースがあります。「マイペースな子」は、それが少しゆっくりなだけ。同じくらいのペースで行動する子どもたちや、みんなに合わせて速さを変えられる子のペースを基点に考えず、そもそも「個々にペースは違うもの」と思いながら対応してみましょう。例えば「みんな行っちゃったけどどうする?一緒に行けるかな?」と問いかけてみて難しいのであれば、無理にみんなと合わせる必要はありません。とは言っても、保育園や幼稚園は集団生活の場でもあり、ひとり遅れていると保育士さんたちも大変かと思います。ケースバイケースで、できる範囲で個々の意思やペースを尊重できるといいですね。
Q、「すぐに諦めてしまう子どもへの対応は?」
「難しいことがあるとすぐに『できない!』『やりたくない!』と言ってしまう子への対応」に悩んでいるという保育士さんのお悩みです。まずは、なぜ「できない」「やりたくない」と言ってしまうのかを考えてみましょう。子どもによって動機はさまざまだと思いますが、例えば「悔しい(できないことが)」「恥ずかしい(上手じゃないことが)」と感じているのかもしれませんし、そもそも今やっていることが現段階では難しすぎるのかもしれません。また、もしかすると実は無理に「やりたくないこと」をやっているのかもしれません。まずは、目の前の取り組んでいることは、子ども自身が選択してやっていることなのかを考えてみましょう。指示されたことや無理にやらされていることだと、すぐに嫌になってしまったり諦めてしまったりしやすいことがあります。
また、「失敗してもいい」ということを子どもに伝えるのも大切。何回でも挑戦すればいいし、違うやり方を試してもいい、困ったら助けるし見守っているよ、ということを言葉で伝えてみましょう。最初はできる範囲から始めて、少しずつ目標を高くしていくのもいいでしょう。失敗することは、子どもたちの成長にはとても大切なことです。失敗する機会を奪わず、できたことを褒めたり、受け止めたりしながら少しずつ成功体験を増やしていけるといいですね。
Q、「大きな声を出して先生の話を遮る子がいます」
他の事例と同じく、まずは「どうして大きな声を出しているのか?」「なぜ保育士さんの話を遮るのか?」を考えることから始めましょう。子どもによって理由は異なると思いますが、保育士さんの気を引きたい、話を聞いてほしい、など「自分を見てほしい」という想いから来ることも少なくありません。もしも全体に向けて話をしているときに遮ってしまうのであれば、「自分のことだけ見てほしい!」という気持ちがあるのかもしれませんね。そんなときは後から改めて向き合い、ゆっくりと話を聞いてみましょう。そのうえで、「みんなにお話しをしているときは聞いてくれるとうれしい!」と伝えてみるのもいいですね。
Q、「ケンカの対応はどうするべき?」
「ケンカをした際、ごめんねを言わせるべきか?」「謝罪後は許させるべきか?」というお悩みです。保育園でトラブルが起きたとき、「ほら、なんて言うの? ごめんねでしょ?」「〇〇くんがごめんねだって。△△くんはなんて言うの?」というやり取りは、一度は経験があるのではないでしょうか。「悪い方が謝る」というのも、トラブルが起きたときには大事なことですが、子ども同士のトラブルではどうしても明らかに「〇〇くんが悪い!」といかないときもあります。また、もしどちらが悪いか目に見えていても、なぜそのような行動をしたのか、という気持ちの部分は見えないことも多いですよね。
「お友だちからおもちゃをとってしまった」という行動も、とってしまった子どもの心の中では、「一緒に遊びたかったけれど言葉が出ずにとってしまった」という気持ちが隠れているのかもしれません。
一方的に叱ることで、子どもの自尊心を傷つけてしまい、余計に謝りにくい状況を作ってしまうこともあります。子ども同士のトラブルでは、白黒つけて謝らせる、許させる、ということよりも、お互いに納得のいく方法を探したり、子どもの気持ちを確認して受け止めたりしてみましょう。もし素直に謝ることが苦手な子なのであれば、保育士さんが一緒にサポートしながら謝ったりするのもひとつの方法です。
「良くないことをしてしまった」「相手を傷つけてしまった」という事実に気付き、それを認めて謝るというプロセスは自分自身で築いていかなければいけません。トラブル時の対応は難しいですが、根気よく寄り添っていけるといいですね。
Q、「すぐに活動に飽きてしまう子がいます」
活動を始めてもすぐに集中力が切れてしまう、すぐに別の遊びにいってしまう、という光景はよく見かけますよね。なぜ子どもたちは活動に飽きてしまうのでしょうか?「集中できる環境設定がされていない」「今やりたい活動ではない」「その子にとっては魅力的な活動ではない」…など、いろいろな原因が考えられますよね。ここでもやはり大切になってくるのは、前出の“諦めてしまう子”と同じく「自分で選べること」。子どもは、自分で興味を持って選んだことには夢中になります。
保育士さんがまず取り組むべきことは、環境設定です。子どもが活動に没頭できるような環境が整っているかどうか、改めて確認してみてください。もしもひとつの活動に飽きてしまったとしても、次にまた自分で好きな活動を選んで取り組めるように、コーナー設定はぜひ積極的に取り入れていきたいですね。
一人ひとりに合った対応を
今回は、ほいくisに寄せられたお悩みの中からいくつかのケースを抜粋して取り上げました。どのシチュエーションも、保育士さんであれば一度は経験したことがあるようなものでしたね。ひとつの例として対応方法をご紹介させていただきましたが、実際の対応は人それぞれ異なります。まずは目の前の子どもの姿をよく見て考え、少しずつ適した対応方法や声かけを知っていけるといいですね。>>ほいくのQ&Aひろば
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