『別冊太陽』の絵本特集
別冊太陽『絵本で学ぶSDGs』の続きのお話です。前回は詳しく書かなかった『別冊太陽』について少し触れておきます。 カルチャー・グラフィックマガジン『月刊太陽』を源流とする創刊50年のムック(magazine+book)本である別冊太陽の特徴は、何よりも写真がキレイであるということ。
写真集的な楽しさと読み物としての面白さが同居する大好きな本です。
テーマはさまざまで、歴史、美術、生活など多岐に渡りますが、絵本をテーマにした号も多く、このコラムの「愛する絵本作家シリーズ」の参考文献として数多く愛読させていただいています。
『絵本で学ぶSDGs』
絵本でSDGs推進協会編 中川素子編集協力
平凡社/2020年 >>本の紹介はこちら
おすすめの2冊をご紹介
グラフィックマガジンと絵本紹介は相性が良く、今号も大きな白地の画面に鮮明に絵本の写真が載っていて読者をSDGs絵本のもとへ連れて行ってくれるような錯覚に陥ります。しかし、それはあくまでも絵本紹介であり、絵本の本当の良さは手に取って読んでみなくちゃわからない♪ 91冊の絵本の中から俺のピックアップ絵本を紹介します。
もしもみのまわりにこんなことが起こったら!?
『365まいにちペンギン』ぶん/ジャン=リュック・フロマンタル
え/ジョエル・ジョリヴェ
やく/石津ちひろ
ブロンズ新社 2006年 >>本の紹介はこちら
1月1日に宅配便が届きます。中身はペンギンが1羽入っていました。次の日もその次の日もペンギンが1羽ずつ送られてくるといった内容。
ペンギンがどんどん増えていく様子は愉快でかわいいのだが、エサや生活スペースの確保の問題が出てくる。最終的には365羽送られてきたところで原因がわかります。
それは南極の氷が溶けてきて住むところがなくなったペンギンが送られてきていたためだったということでした。
自分の生活と繋がっている遠いところのお話
『ゾウの森とポテトチップス』写真と文 横塚眞己人
そうえん社 2012年 >>本の紹介はこちら
日本から遠く離れたマレーシア、ボルネオ島。熱帯雨林には、ゾウなどのさまざまな生き物が暮らしています。
その熱帯雨林の周りは一見緑が豊富にあるようですが、実際には大農場でアブラヤシの木だけが植えられています。
そのアブラヤシの果実からはポテトチップス、マーガリンなどの食品、洗剤、化粧品を作るための「パーム油」が採れるのです。
そのパーム油をたくさん採るために、動物の生活の場が奪われているという内容となっています。
2冊の絵本を俺の言葉で紹介しました。別冊太陽『絵本で学ぶ SDGs』には、もっと的確に内容を捉えた紹介が載っているので、ぜひ読んでいただきたいです。
絵本を通じて見えてくる“世界”
どちらの絵本もペンギン、ゾウという子どもに馴染みの深い動物が切り口となっています。内容が進んでいくと難しい表現や用語も出てきますが、そこは写真や絵が補完して楽しむことが出来るようになっています。
それが絵と文字で読んでいく絵本の良いところ!!
絵本が気付きのきっかけに
保育園と日本の家庭で生活している中では、気付かない世界、見えない世界に絵本が連れて行ってくれます。どんな場所でもどんな時間でもいざなってくれるのが、絵本の楽しみであり読書の楽しみなのです。
しかし注意しておきたいのは、この内容を知っているから「温暖化に対して具体的に何か取り組みなさい。」「ポテトチップスを食べないようにしましょう!」ではないのです。
「知る」ということが大切であり、子どもたちに広い視野、新しい視点を持つことが出来るかもしれないきっかけとなることが大切なのです。
SDGsは特別なことではない
SDGsは特別なことではありません。保育園の生活の中で大切にしていることそのものが繋がってきます。
「物を大切に」 「友だちはどう思うかな?」 「みんなの力を合わせよう」といったこと全てにです。
『絵本で学ぶSDGs』は、そういった繋がりに気づかせてくれることで、子どもたちの新しい扉を開くきっかけとなります。
追伸
「ポテトチップスを食べるとゾウが困るのか~」と俺はポテトチップスを食べながら思うのであった。いいもんね!「知る」ことが大事なんだから…
いや、大人は「知る」からの行動も大切なんだよな。