愛する絵本作家~“ナンセンスの神様”長新太<その2>【ころころにゃーん】

絵本専門士として活動する現役保育士「うっちー先生」による、絵本愛あふれるコラム。“ナンセンスの神様”長新太(ちょうしんた)を取り上げたシリーズの第2弾。今回は、作品と子どもたちとのエピソード。保育士さんにはとても参考になると思います。

前回は長新太氏の経歴や作品について綴りました。今回のコラムでは、保育の中で感じた具体的な長さん作品と子どもたちのエピソードをお伝えしたいと思います。

絵本好きな女の子

俺が年長クラスの担任をしている時のこと。生活の中でたくさん絵本を読むため、必然的に子どもたちもたくさんの作品を知ることになります。園文庫と合わせて、内田コーナーも作り、そこからも毎週の絵本の貸出をします。絵本は本棚に入っているよりも手に取って読んでもらえることの方が幸せですから。

そのクラスは年中からの持ち上がりで2年間担任。2年間で90回絵本を借りて帰りますが、その最後の貸出日。
  • 俺「今日が最後の絵本借りる日だけな~これまでで一番好きな絵本かおもしろかった絵本借りたらいいんでないかい。」
  • 子「は~い」「へ~い」「ほ~い」「わっかりやした~」「がってんでござんす!」
次々に思い思いの絵本を持ってきました。そして最後の一人。女の子が本棚を見て悩んでいます。その女の子は絵本の時間が大好きで、いつも絵本の世界にどっぷりつかって楽しんでいました。悩み悩んで持ってきたのは…

『ころころにゃーん』
作:長新太
福音館書店:2011年
長さん最後の作品です。単純な繰り返しのようでそうではない。意味はないけど意味がある。ナンセンスの塊。説明なんてしようがないわけで…。

一度だけ子どもたちに読んだことがある絵本。確かに本棚から出してきて読んでいるのをみたことがある。
  • 俺「最後の絵本はこれ?なんでこれが良いと思った?」
  • 子「わからん。わからんけどこれがいい。」
愚かな問いかけでした…。未だに反省の気持ちとその時の女の子のうれしそうな顔が残っています。

ある日布団の中で

午睡までの間に着替えを終えた男の子が、残りの時間でクラスの本棚からお気に入りの絵本をたくさん持ち込んで読んでいました。好きな絵本には大きく喜び、興味のない絵本は「ふーん」といった感じ。長さんの絵本も本棚に数冊入れていますが、保育士があまり選ばないので鎮座していることも多く、読むのは俺だけ?

いいえ、そんなことはありません。この男の子の中にもしっかりと長さん絵本がいて、そこにいたのです。とてもうれしくかわいい療育の中の一コマでした。

大人は「??」子どもは「ウフフ」

長さんが亡くなった後、仕上げを和田誠氏が行った絵本が数冊ありますが、これはハードカバー化されていない一冊。

『ハンバーグ―チョキパー』
作・絵:長新太/和田誠 しあげ
福音館書店:2009年
ハンバーグとハンバーグがぐちゃぐちゃしながらじゃんけんをする。全く意味のないナンセンス極まる絵本。長さんは最後の最後までこんなことを考えていたと思うと尊敬しかありません。

この絵本を保育の中で読んだ時のことです。読み終えたあと一緒にいた保育士が「ちゅうとはんぱ~。」と言いました。確かにその通り! 起承転結はありそうでなく、盛り上がりもありそうでなく、〈出会い→じゃんけん→別れ〉とそれだけ。意味を持たせようと思っても無理です。長さんの中では万物全てに命が宿り歩いてしゃべっていたのですから、同じステージには立てません。でも子どもってそんな節ありますよね。ハンバーグがじゃんけんしても不思議じゃない。

読んだ後の子どもはといえば…うれしそうに本棚から出してきてもう一回読んでいました。かわいいな~♪

それでは最後に〈その1〉の冒頭、長さんの名言について解説。長さんの調査をしてきたからわかるかな♪

片方の耳をネジのように巻くと、脳みそのゼンマイが回転を始め、シュルレアリスムふうな発想が、鼻の穴から出てくる。


片方の耳を巻くと、脳みそが動き、鼻の穴から、現実を超えたアイデアが出てくるというわけである。

………やはり、ちょっと何を言っているのかわからない。答えがないからおもしろい!最高です!

そして、長さんのように「人生まぁうまくいった。」と人生の最後に言いたいです。
うっちー先生

この記事を書いた人

うっちー先生

鳥取市で働く傍ら絵本専門士として活動する現役保育士。本名は内田大樹。専門士同期男性3人で組むユニット『trio de 絵本』など、絵本関連イベントで精力的に活動。自称「日本一絵本の読み聞かせをしている人」。保育士歴17年。3児のパパでもある。
<ブログ>
https://ameblo.jp/uchiuchi571101/

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