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山陰を代表する絵本作家。安野光雅編①【愛する絵本作家/かぞえてみよう】

畑と山
絵本専門士として活動する現役保育士「うっちー先生」による、絵本愛あふれるコラム。「俺の愛する絵本作家」シリーズ第6弾は、2020年12月に逝去された安野光雅さん。山陰を代表する絵本作家ということで、鳥取県出身のうっちー先生の想い入れも深いようです。
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山陰が誇る絵本作家

昨年、またひとりの偉大な絵本作家が逝去されました。我が山陰地方が誇る大作家の安野光雅(あんのみつまさ)氏です。晩年まで絵本製作に取り組んでおられ、「次の新しい絵本は♪」と楽しみにしていたので、とてもとても残念です。安野光雅氏を偲びながら、まずは振り返っていきます。
 
〈略歴〉
1926年(昭和元年)島根県津和野町生まれ
幼少期を津和野で過ごし、終戦を兵隊として迎える。美術の先生などを経験しながら絵の仕事を始め、42歳の時に『ふしぎなえ』(福音館書店)を出版。その後、昭和・平成・令和を跨ぎ、絵本を出版し続けた。
2020年(令和2年)12月24日ご逝去。

〈作品〉
『ふしぎなえ』『さかさま』『旅の絵本』『ABCの本 へそまがりのアルファベット』(福音館書店)
『かぞえてみよう』(講談社)
など多数。

鳥取県に住む俺としては、同じ山陰の島根県出身である安野氏に対して勝手に親近感を覚えていました。俺の生まれ育った所はド田舎です。子どもの頃は、住んでいる自治体に信号機はひとつ。国道に出る交差点に押しボタン式信号機があるだけでした。安野氏がいろいろな著書の中で語っておられるのが、「私はいまでも電車のことを汽車と言って笑われる」という一言。今でも山陰のほとんどの路線では、電車ではなく機関車が走っていて、俺もついつい都会に行ったときでも「汽車」と言いそうになってしまいます(山陰地方では方言も含めて機関車のことを「汽車」と呼んでいるのです)。絵本ではありませんが1冊紹介。
 
少年時代
『少年時代』
安野光雅
山川出版社/2015年

[少年時代 単行本]

80年も昔のことをとても細かく覚えておられて、生き生きと過ごした少年時代を見事に描いています。時代は違えど、自分と重ね合わせながら読み…そして、ふるさとが懐かしくなり、先日、田舎に帰って懐かしい場所を廻ってきました。

保育と安野光雅氏の絵本

畑と山
滝

数十年ぶりに訪れた地元の名所の滝はひとっこひとりおらず、何とも神聖な雰囲気。この野山を駆け巡った少年時代に、俺は安野氏の絵本を読んでいた記憶があります。数年前に思い出しました。

しかし、保育士になってから保育の中で安野絵本を読んでいたかと言えば…決してそうではありませんでした。安野氏の絵は、水彩の淡い透明感と、幻想的でありながらも実物として写実的でもあります。不思議な世界の絵本、世界各地の旅の絵本、数学の絵本。ストーリー性のあるものもたくさんありますが、自分の好みの絵本の多くは、絵がハッキリしていて起承転結のわかりやすい本ということもあり、長年手に取ってきませんでした。


久しぶりにきちんと絵本として向き合ったのは、絵本専門士養成講座の中で『旅の絵本』(福音館書店)についての取り扱いがあった時のことでした。保育園の本棚にはこのシリーズのうちの多くが揃っていましたが、絵本の貸出で借りられたところを見たことがありませんでした。そこで、本棚から抜いて一通り読んだ後、保育室に置いておきました。すると、男の子がじっくり時間をかけて読んでいました。そして、「この人ここにもおるわー」とつぶやき、近くにいた子どもと、どんどん探し始めました。この絵本には一人の旅人が登場していて、世界各地を回っているのです。

その子どもの背中を見た時、俺も子どもの時に『ふしぎなえ』や、『さかさま』を何度も何度も読んでいたことを思い出しました。すると、本棚にある安野絵本が次々と目に入るようになり、そこからは保育の中で読む回数が増えてきました。

最近よく読んだ絵本は
 
かぞえてみよう
『かぞえて みよう』
安野光雅
講談社/1975年

[かぞえてみよう (講談社の創作絵本) 単行本]

クラスに数字の好きな子どもが多く、何度も読みあいました。数が増えていくと、家、人、木など、街並みにあるものも同じ数だけ増えていきます。「これは?」「これもじゃない?」と、いろいろ見つけながら対話も含めて楽しめる本♪ 文字なし絵本だからこその、永遠とも思えるくらいの楽しみ方がありそうです。

次回のコラムでは、保育士なら一度は口にしたことがありそうな言葉について安野絵本で考察していきます。俺が感銘を受けた安野氏の名言もご紹介いたします。気になる方はぜひお楽しみに!


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