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結局「良い絵本」を決めるのは誰?【良い絵本ってなんだろう⑤/もこ もこもこ】

よい絵本と書かれた帯
絵本専門士として活動する保育士うっちー先生による、絵本愛あふれるコラム。シリーズ「良い絵本ってなんだろう」の第5回目はいよいよ完結編。結局、良い絵本って誰が決めるの? というテーマを掘り下げます。
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良い絵本はどうかは誰が決める?

世の中には“良い絵本”が溢れています。全国学校図書館協議会選定の『よい絵本』という、絵本についている帯を見たことがあるでしょうか? これは、全国学校図書館協議会絵本委員会の方々が選ばれていました。この中には絵本専門士委員会委員の先生もおられます。
よい絵本と書かれた帯
『よい絵本』と、しっかりとわかりやすく目に見えるように帯に書かれているので、それを見た人たちは確かに良い絵本として認識することでしょう。

しかし、俺にはこう読み取れるのです。

『これを読んだ多くの人が楽しい時間を共有できた(または、これからそうなる)絵本』と。

有名な話ですが、今では確固たる地位を築いている絵本
 
もこ もこもこ
『もこ もこもこ』
作 谷川俊太郎
絵 元永 定正
文研出版 1977年


出版当初、絵本を手に取った多くの大人たちは、意味がわからなかったそうです。「なんだこの絵本」「つまらん」と当時の専門家の声も聞こえてきそうです。しかし、子どもに絵本を届ける現場(主に保育園幼稚園)では、子どもたちが大喜びという事態が続出! 「これはなんたることや!」となり…現在に至っています。

以前のコラムに載せましたが、出版されてから20年以上読まれているという条件を満たしている絵本なので、これは良い絵本という方もおられるでしょう。俺も読みます。しかし、このケースで最も大事なのは、その背景から現在までの道筋を決めたのは、分別のある大人ではなく、子どもたちだったという事実です。




子どもと大人で異なる絵本の選び方

もう少し身近な所で考えてみます。絵本を50冊以上入れて運ぶ俺の絵本トランク。いつもは自分の働く園に置いてあります。そのトランクをあけて絵本を読もうとすると…。

大人は、「まだ読んだことのない絵本を読んでほしい」と言います。子どもたちは、いつも読んでいる絵本を読んでほしいと伝えてきます。「またぁ?」と言ってしまうこともしばしば。今は児童発達支援センタ―勤務ですが、保育園勤務の時も同じ状況が多くありました。現場で働いておられる読者の方々も経験があるのではないでしょうか。
 
やきざかなののろい
『やきざかなののろい』
作 塚本やすし
ポプラ社 2014年


昨年度の子どもたちはこの絵本が大好き。やきざかながこどもを呪います。それがおもしろくて、楽しくて、大好きすぎて、年間200日ある平日のうち半分近くは読んでいたので、テキストもページをめくるリズムも身に沁みつきました!!

家にいても同じことが起こります。家にあるたくさんの絵本の中から「パパ絵本読んでよ~」と言って息子が持ってくる絵本は読んだことある絵本ばかり。
絵本を読む男性と子ども
1冊目は必ずと言っていいほど読んだことある絵本。しかも、特別有名な絵本ばかりではなく、前にたまたま手に取って読んだことがある絵本だったり、絶版になっているあまり世の中では読まれ続けていないような絵本だったりします。息子にとっては、それらが繰り返し読んで楽しい時間が共有できる良い絵本のようです。

『良い絵本ってなんだろう』シリーズ全5回。焼き鳥の話から始まり、息子との2ショットで締めました。

つまり俺が言いたかったことは、

良い絵本とは「この絵本良い!」って感じた絵本

ということです。良い絵本かどうかは他人ではなく、読んだ人が決めます。

もちろん、より多くの人が「この絵本良い!」と思った絵本が残り、それが積み重なって現在に至るわけです。絵本を探している時は、おすすめや良い絵本として紹介されている絵本、書店で売れ筋の絵本をあたるのは間違っていません。

しかし、できればステレオタイプな思考で探さず、たくさんの価値観を持って絵本を選び、子どもに届け、子どもにとっての良い絵本を見つけていきたいものです。保育園・幼稚園から子どもたちの絵本の世界を広げていきましょう!!

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