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“インタレスト”な絵本が魅力。安野光雅編②【愛する絵本作家/赤いぼうし】

安野光雅美術館がある島根県津和野町
絵本専門士として活動する現役保育士「うっちー先生」による、絵本愛あふれるコラム。前回、「俺の愛する絵本作家」シリーズの第6弾として取り上げたのは、2020年12月に逝去された、山陰を代表する絵本作家の安野光雅(あんのみつまさ)さん。後編では、作品の魅力をさらに深掘りします。
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「赤いぼうし」が難しい理由とは

前回のコラムでは、安野光正氏の略歴や、俺と作品の関わりを綴りました。今回は、ある1冊の絵本に注目し、保育の一場面について考えていくことから始めていきます。
安野光雅美術館がある島根県津和野町<安野光雅美術館がある島根県津和野町>
 
安野光雅美術館の銘板
これからするのは、訪れた時に開催されていた企画展で知った絵本のお話しです。
 
赤いぼうし
『赤いぼうし』
野崎昭弘 文
安野光雅 絵
童話屋/1984年

[赤いぼうし (美しい数学 (5)) 単行本]

安野氏の代表作といえば、『旅の絵本』(福音館書店)をはじめとする美しい風景画を用いた絵本が思い浮かびます。そしてもう一つ、それらと並んで印象に残るのが、“かがく絵本”や、多くの数学者とタッグを組んで作り上げてきた“美しいすうがく”絵本たちです。

その中から今回は、『赤いぼうし』を紹介します。内容はちょっとややこしいけど、読んでほしい一冊。ぜひ手に取っていただきたいです。
  1. 登場人物は4人。ぼうしやさんと太郎くんと花子さん、そしてかげぼうしさん(自分)。赤い帽子と白い帽子を持っているぼうしやさんは、子どもが目を閉じている間に帽子を被せるのが仕事とのこと。
  2. はじめに、ぼうしやさんが持っている帽子の種類と個数を伝えてから、目を閉じて帽子を被せます。
  3. 例えば、「赤い帽子1白い帽子1」目の前には太郎くんがいて、目を閉じて開けると目の前の太郎くんは「赤い帽子」を被っている。
  4. かげぼうし(自分)さんは何色を被っていますか?答えは「白」
という内容で、帽子の種類が変わったり、個数が増えたり、太郎くんと花子さんになったりと、どんどん複雑になっていきます。これがかなり難しい! 「もし〇〇…」と、一旦考えてから推論を消去していく作業が難しいけども楽しいのです♪

一緒に行っていた保育士仲間と「赤だろ」「白じゃないの?」「決して赤とは限らんだろ!」と、「あーでもないこーでもない」と言いながら結構長い時間楽しみました。
つまり俺が言いたいのは、物理的に相手の視線を想像しながら物事を見るということがとても難しいということです。



思いやりの気持ちを育む「もし…だったら」

そのとき一緒にいた仲間とは、「物理的にでも難しいのに、相手の立場になって気持ちを考えてみるって無茶苦茶難しいことだよな」と再確認しました。

子どもがお友だちと一緒に生活する中で、おもちゃや場所が譲れなかったり、意見や思いの食い違いでアクションが起こったりすることは日常茶飯事。そんな時に保育士は、「そんなことをして、もし○○ちゃんだったらどんな風に思うかな?」と声を掛けてしまうことも多いかと。

「赤いぼうし」の体験から改めて考えると…、これって実はすごく難しくて、軽々に言えることじゃないのかな!?と思いました。

しかし、このテーマに関するヒントではないですが、絵本の解説にこんなことが書いてありましたので一部引用させていただきます。

「もし…だったら」という考え方は、とても大切です。「もし…」と考えて初めて、本当によくわかってくることもあります。「もし私がお母さんだったら…」とか、「もし私がこの子の立場だったら…」と考えてみると、それまで気が付かなかったいろいろなことが見えてくるものです。それが思いやりへの第一歩です。
※『赤いぼうし』解説より引用

安野光雅美術館の入り口
相手の気持ちを全て理解することは出来なくても、思いやるという気持ちを育むためには、子どもの気持ちに寄り添いながら「もし…」を考えられるきっかけを作り続けていくこと。それが保育士として必要な姿勢であることを再認識できました。

“インタレスト”が大事

1冊の絵本紹介でコラムが終わってしまいそうですが、最後に感銘を受けた安野氏の“アンノ語録”をひとつ。

勉強はインポータントではありません。勉強はインタレストなのです。


「楽しいだけじゃダメ? 否!楽しくないとダメなんです!」。楽しいからこそ自分の力になります。そんなことを、気付かせてくれる一言でした。これからも保育士として、子どもたちが本当に楽しめる活動を追い求めていきたいです。

そして、絵本専門士として、未だ見ぬ“インタレストな”安野絵本を追い求めていきます!


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