母性と父性についておさらい
絵本作家・宮西達也氏のえほんばなしの続き。前回は、宮西氏の略歴と作品紹介。そして、母性と父性について綴りました。今回は、ここから振り返るために改めて記載します。
佐々木正美 著 山脇百合子 絵
福音館書店 2017年
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母性…母性性とは、家庭のなかで子どもや家庭を受容、承認する力です。そのままでいいよという安らぎ憩い、くつろぎの体験を十分にさせてやるものです。
父性…父性性は、子どもの成長にしたがって、さまざまな規律、約束、義務、努力、緊張といったことを教えていきます。
『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』佐々木正美 福音館書店2017年より引用
これは保護者だけではなく、保育士にも当てはまることだと思っています。母性豊かな保育士は、子どもの姿や行動をじっくりと見守り、その全てを受容する眼差しをしています。父性豊かな保育士は、約束や規律の中から、協同性や協調性を子どもたちに気づかせ身に付けていくことで子どもの成長を促していきます。
もちろん一人の保育士の中に両立するものであり、母性と父性をバランス良く持ち合わせながら保育をしていきます。母性の強い男性保育士や父性の強い女性保育士も身の回りにいることでしょう。
俺は、新年度クラスがスタートするときに子どもと保護者には、クラスの約束を必ず伝えるようにしています。
- 話を聞くときは、目とおへそを話している人の方に向ける
- 部屋を出る時には行き先を先生に告げてから出る
あとは柔軟に子どもたちとクラスの約束事を一緒に決めていったり、すぐフザけるちゃらんぽらんだったりしますが、このふたつは最初からしっかり守るように伝えます。身に付けることで将来のためになると思っているから。俺が大切にしていることを考えたならば、かなり父性の強い保育士ということになります。ほら父性強そうに絵本読みを指導してる(笑)

宮西作品の根底に流れる「家族愛」
宮西達也氏の絵本に戻ります。改めて、この観点で宮西作品に目を向けていきます。父親をテーマにした絵本を出版して注目されましたが、実は…「父親」というフレームではなく、ストレートに表現された親子、きょうだいという「家族愛」がフレームになっています。親はどれほど深く子どもを愛しているか、子どもにとって父や母はいかに大切な存在であるかを繰り返し語り続けています。面と向かっては言えないような照れ臭いことも、確かな画力に裏打ちされた、シンプルでユーモラスにデフォルメされた紙面から、ド真ん中の直球勝負で届いてきます。
愛に溢れた母性と、大切なことを響かせてくれる父性の同居した宮西作品をこれからも愛していきたいと思います。巨匠でありながら、フランクでスマートガイなお人柄の宮西達也先生。これからもストレートな作品をたくさんお願いします。以前にイベントの楽屋でお話した、バレーボールをテーマにした絵本『アタック』の出版もいつまでもお待ちしています♪

それでは最後に俺のお気に入りを紹介。

みやにしたつや 作
学研教育出版 2010年
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この表紙を見て、どちらがイイモンでどちらがワルモンか想像してみてください。見た目や、意思疎通ができないというだけで誤解を受けるという展開で、「本当の正義とはなにか」をテーマに作られた物語。俺も0歳児クラスに入ると泣かれるんだよなぁ…(それは正義とは関係ない)。
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