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絵本の読み方はひとつじゃない【正しい絵本の読み聞かせ方って?③/おばけだじょ】

絵本読み聞かせ会でポーズをとる男性
絵本専門士として活動する現役保育士「うっちー先生」による、絵本愛あふれるコラム。回を追う毎に核心に迫る「正しい絵本の読み聞かせ方って?」シリーズの第3回は、「絵本の読み方はひとつじゃない」について。楽しい実例を交えて解説してくれました。
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無限大にある絵本の読み方

絵本の読み方はひとつじゃない!

特に保育の現場においては保育士と子どもの数だけそれぞれ違った読みあいがあります。それは、文章ひとつ読んでも、絵を一場面見ても人それぞれ感じ方や伝わり方が違うからです。日によっても違います。

尊敬する児童文学作家 村中李衣先生に紹介していただいた絵本の楽しみ方のひとつを、実践例を入れて紹介したいと思います。
絵本「ふしぎなナイフ」の書影
『ふしぎなナイフ』
作:中村牧江 林建造
絵:福田隆義
出版社:福音館書店 1997年

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板の上に置いてある何の変哲もない一本のナイフ。このナイフが曲がったり、捻じれたり、ちぎれたり…。現実世界では起こることのない現象が絵になることで起こりうる。シンプルで最高に楽しい定番のトリックアート絵本。

人間がナイフになる!

この絵本の楽しみ方というのは、人間がナイフになる!です。

表現あそびのうちのひとつとして楽しんで読んでいきます。絵本の中のナイフが曲がれば人間も曲がる。捻じれれば捻じれる。

今年の6月に職場だけではなく、いろんな場所で絵本を読ませていただく機会がありました。図書館、幼稚園、書店、講話、子ども向けコンサートなど。そして、全ての場所で『ふしぎなナイフ』を読みました。それぞれの場所にいてくださった大人や子どもたちに協力していただいて、ナイフになりきってもらうことに。

①ふしぎなナイフが まがる
②ねじれる
③きれる
いろんな場所で読みましたが、一度として同じ表現はありませんでした。すごく短い言葉「まがる」「ねじれる」「きれる」という言葉を受け取っても解釈の仕方が違い、身体表現もそれぞれ違う。

子どもたちがその場で立ち上がったり、ステージに立ってもらったりして楽しみましたが、隣の友だちの真似はしていてもやっぱりみんなが違う。あっ、でも絵本の最後のページはほとんど全員が同じ表現になります。絵本を手に取っていただければご納得かと。

読み手の工夫、どちらが正解?

冒頭にも述べましたが、どんな絵本にも通ずることだと思います。そして、これは受け手だけのはなしでしょうか? いいえ。俺は、絵本を持っている届け手も同じであると考えます。こんなことがありました。
絵本「おばけだじょ」の書影
『おばけだじょ』
作:tupera tupera
出版社:学研 2015年

>>本の紹介はこちら

俺はこの絵本のテキスト「おばけだじょ」という部分を「おばけだじょ↘」と「じょ」の部分を下げて読みます。「おばけだじょ?」という部分が後から出てくるため、そこと差をつけたいからです。

先日、この絵本を他園の先生が読んでくださいました。すると冒頭から「おばけだじょ↗」と上がっているではありませんか! そして、子どもたちも絵本を楽しんでいます。へ~と思うと同時に、たった6文字なのに読み方が違うんだなと強く思いました。

俺が正解でしょうか? この先生が正解でしょうか? 答えはお分かりの通り、読みあいの場で子どもたちと絵本を楽しむことが出来ていたのであれば、どちらも正解です。

6文字でも声に出すと変わってくる。受け取る方も、『ふしぎなナイフ』の実践でもわかるように必ず違ってきます。とすると、【絵本は○○と読む】と決めることが出来にくいのではないでしょうか。しかし、そういう自分も前回【絵本は自然に読む】とお伝えしています。これは広い意味で絵本の読み方をとらえていただきたいと思っての言葉です。

もう少しだけ掘り下げてみます。これまでは、テンポ、強弱、音程、文章の受け取り方、場によっての読み方(楽しみ方)などを伝えてきました。次回は声を視覚化した絵本の取り組みから考えてみたいと思います。

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