保育園が無かった町の開園手続き
日本で「保育園を開園する」というと、さまざまな手続きがあります。そのため、その準備たるや、大変なことだろうと想像できます。しかし、ここはブラジル。しかも2000年というと、まだ幼児教育というものが認識されていないような時代。大都市では既に保育園が存在していましたが、私が今住んでいるこの小さな田舎の町には、そうした施設は存在していませんでした。
まず私は、保育園を開園するためにはどんな準備が必要なのかを知るために、市役所を訪れました。すると、
「保育園を作る?」
「はい。」
「だれが?」
「私と友人達で」
「あなたが?」
「はい。」
「場所はあるの?」
「はい。」
「それはそれは。がんばってね!」
「えっ?」
「必要な書類とかないのですか?」
「ないわよ。」
どんな保育園を作ろうか?
市役所から戻った私は、あっけにとられていました。提出すべき書類もない。どんな保育園でも勝手に作っていい。では、どんな保育園を作ろうか?
母親たちと話をしていると、こんな話をしてくれました。
「これからの時代、簡単な読み書き計算ができないと社会で生きていくことはできない。そのため、最低限のことを学ぶためにも、義務教育である小・中学校を卒業できるようにしてほしい。」
まずは学校に行けるように、子どもたちの育ちを見守っていく必要があります。
小さな村の学校事情
この村には小学校分校があり、小学5年生までが通っていました。教室が1つしかない場所。そこに1~5年生が一緒に学んでいますが、左右にある窓を覗くと、右を向けば海。左を向けば砂丘と森。登校して1時間も経たないうちに1人、また1人と、子どもたちはいなくなっていき、午前の授業が終わるころには児童が1人も残っていない…ということもよくある状況でした。 ブラジルの小・中学校は3部制になっており、午前、午後、夜間と、子どもたちが入れ替わります。2019年現在は全日制を推進していて、私が住む小さな田舎の町でも、公立学校45校中1校ですが、全日制を実践しています。しかし、ほとんどの学校は未だ3部制で、午前の部は7~11時、午後の部は、13~17時、夜間の部は17~21時とされているのが現状です。
小・中学校に行くためには、まず子どもたちが教室に留まる必要があります。2000年当時、基本的に6歳になると就学前教室に1年通い、その後、小学校に入学することになっていました。
しかし、“エステーヴァン村”というこの小さな漁村の小学校分校だけでなく、カノア・ケブラーダに唯一ある公立の小・中学校にも、就学前教室はありませんでした。そのため、子ども達は7歳になって初めて学校というところに通うことになるのでした。
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