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母親たちが抱いていた大きな不安とは【みんなで作るカノア保育園・その1】

カノア保育園の園舎
2000年、ブラジル北東部にある人口300人の小さな漁村“カノア・ケブラーダ”に保育園を作った鈴木真由美さんのストーリー。学生として幼稚園や保育園の実習を経験する中、ふと「世界の子どもはどうなのだろうか?」と思い立った鈴木さん。知人の紹介でブラジルの保育園での仕事を体験したことをきっかけに、自分の進むべき道を意識し始めるのでした。
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ここは天使が住む村だ

私たちが運営する「カノア保育園」は、ブラジル人が「地の果て」と呼ぶような場所にある、海と砂丘に囲まれた、自然豊かなところにあります。ここを訪れたある人は、「ここは天使が住む村だ」と語っていましたが、訪れる人がそんな風に感じてしまう場所なのです。

2000年。私は、“保育園を作る”ために、この場所に来ました。そこには、サンパウロで保育士として働いていたエヴァさんという方がいて、この村で療養をしながら自宅を開放し、日本でいう、“子育て広場”のような場所を開いていました。
エヴァさんの家にホームステイしていた私は、毎日午後のコーヒータイムになると子どもを連れてやってくる母親たちの姿を目にするようになりました。彼女たちは、それぞれ悩みや、子育ての面白話など、いろいろな話をざっくばらんにしていきます。子どもたちはお絵描きをしたり、歌を一緒に歌ったり、物語を聞いたり…自由に過ごしています。




母親たちが抱いていた将来への不安

多くの母親たちは、観光地として名高くなっていく“カノア・ケブラーダ”での暮らしに大きな不安を抱いていました。小さな漁村であるこの村。彼女たちは、海と砂丘、そこにある自然豊かな森に囲まれた村で生まれ育ちました。

しかし、そんな状況も1980年代後半から大きく変わってきていたのです。物々交換で生活していた彼女たち。観光地化が急激に進む中、貨幣経済の波にのまれ、日々の暮らしにお金が必要となってきたのです。

漁師だけでは暮らしが成り立たなくなり、観光地の民宿やレストランなどで母親たちは洗濯や食器洗い、掃除などをしながら働くようになっていました。「昔のように、大家族の中で子どもたちが育つという環境がなくなっている。」そう母親は訴えたのです。

なぜか?

大人は仕事に出ているため、家にいません。子どもたちだけで家にいるといっても、10代になると売春や麻薬などに手を出す子どもが後を絶たちません。小さな子どもだけを家に残していくのは難しいという現実。どうしたらよいのか?

子どもたちを預かる場所を作る

そこで私たちは、この村に、小さな子どもたちを預かる場所を作ろう!と、提案したのでした。
幸いにも、この小さな村で活動していた環境NGO団体から部屋を1つ使ってもいいという許可を得ることができ、その場所を「カノア保育園」として、3~5歳の子ども12人を預かることとなったのです。2000年4月のことでした。


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