いま園の防災対策が必要な理由

保育園では、まだ自分で自分の身を守ることができない小さな子どもたちを、限られた数の大人で守らなければなりません。しかし保護者は、「災害が起きてもきっと先生たちが守ってくれる」と信じて大切な子どもを預けています。保育園は、通常の防災知識だけでは対応が難しい特殊な現場。大勢の子どもたちを守るためにも、「保育防災」の知識が必要となるのです。
園の防災対策は大丈夫?

2011年(平成23年)に発生した東日本大震災で無事に全員避難出来た保育園の関係者は、「日頃から津波の際の避難訓練を行っていたおかげ」と話していました。多くの保育園が犠牲者を出すことなく避難できたのは、過去の災害の経験を伝承し、日頃から防災に対する意識が高かったからでもあると思います。
日々の保育業務に追われる中、防災に対する意識は二の次になりがちですが、「きっと起こらないだろう」と思っていては災害から子どもたちを守ることはできません。「もしも今災害が起きたら」という気持ちを常に持つことで防災意識は高まります。まずは自分たちの防災意識を高めることが大切です。
保育防災チェックリスト

1.マニュアル

防災マニュアルはあれば良いというものではなく、災害時にそのマニュアルを読めば誰でも対応できるものでなければなりません。どこに防災マニュアルがあるのかは全職員が把握し、定期的に読むことで内容をしっかりと理解しておくようにしましょう。
②防災マニュアルの改訂を定期的に行っているか?
防災マニュアルは、子どもたちと職員の命を守るための指針です。想定外と言われる災害が毎年のように発生する今、避難ルートや連絡方法を増やすなどさまざまな災害に対応できるよう定期的にアップデートすることが大切です。
③対応は複数決めているか?
マニュアルの中で、災害時の対応が1つのパターンしかない場合があります。たとえば、保護者への連絡方法が一つしかない、避難場所へのルートが1つだけ、などです。もしもその連絡手段が使えなかった時、避難ルートががれきで通れなかった時、どう対応するかを予め決めておけば焦ることはありません。
園での防災マニュアル作成については、こちらの動画でも詳しく解説しています。あわせてチェックしてみてください。
2.訓練

避難訓練の悩みで多く聞かれるのが「マンネリ化」です。毎回同じ訓練を行うことは、訓練に慣れるという意味では有効ですが、実際の災害が発生した時、臨機応変に行動することが難しくなるのです。子どもたちも、いつも机の下にもぐる訓練をしていたら、机のない場所でどのように身を守れば良いのかわからずにパニックになるかもしれません。いつも同じ場所で行うのではなく、屋外での訓練なども定期的に織り交ぜながら行うことが大切です。
また、避難訓練がマンネリ化するのは、リアルな災害想定ができていないからです。「地震」「火災」など大枠の想定だけでなく、地震であればどのくらいの規模の地震か、時間帯、天候、職員が怪我をしたら、と毎回具体的な想定をするだけでマンネリ化は防げます。
②訓練後のフィードバックを行っているか?

3.備蓄

大きな災害が発生すると、停電や断水が発生します。さらに公共交通機関も遮断され、保護者が迎えに来ることができるのは何日後になるかわかりません。最低でも子どもと職員の3日分の水と食糧、停電に備えたライトなどの準備を必ずしておきましょう。特に停電、断水時にはトイレの対策が重要です。ポータブルトイレやそれに代用できるもの(たとえばペットシートなど)をできるだけたくさん用意しておくと安心です。
②毎年すべての備蓄品を確認しているか?
災害発生時、備蓄品があっても電池切れや賞味期限切れなどで使用できないということでは宝の持ち腐れです。非常食は賞味期限が過ぎていないか、ラジオやランタンなどは壊れていないか、電池の備蓄は十分あるかなど毎年すべての備蓄品を確認しておきましょう。停電を想定した訓練を行い、実際に使って動作確認をするのもおすすめです。
今できる「備え」を
大切な子どもたちの命を守るために今できることは、「備える」ことです。災害はいつ起こるかわかりません。だからこそ、本当に役立つマニュアルや備蓄品を今のうちに備えるとともに、災害時に活かせる訓練を行うことが、命を救うことに繋がるのです。今回の記事が、園の防災を見直すきっかけになれば嬉しいです。
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