子どもたちの”ワンダー”
「あ!あ!」と驚いたような顔をして、木の方を指さしていた2歳になったばかりのイトちゃん。「みて!みて!これ、おもしろい!」と古い小枝を持ってきて、手でポロポロと崩れるのを見せてくれた3歳のハルくん。
「ここにいるから。ほら」と冬眠していたカエルを樹のウロから得意気に引っ張り出してきた5歳のコウちゃん。
子どもの発見は、わかりやすく共感できることもあれば、何を面白がっているのかわからないこともあります。
でも、そこにはたくさんの子どもたちの”ワンダー(驚き)”が詰まっています。 自然の中での保育とは、こうした時間を子どもと共有する保育だと思っています。
毎日がセンス・オブ・ワンダー
素敵なタイトルをつけて頂いたこのコラムは、今回が最終回となります。コラムのお話をいただいた時、担当の方からは 、「野村さんが書きたいことを書いてください!どんなことでも保育観が伝わるはずだから、日常の感じたことなんでもいいんです!」 と、心強い言葉を頂きました。
その時から私がこだわって書いてきたことは、”体験のシェア”です。
最近では、”ストーリーテリング”とか”ナラティブ”という言葉が使われ、経験を織り交ぜてプレゼンなどをする手法として用いられているようです。それだけ”体験”は人の心に響くものがあるということでしょう。
冒頭に書いた2歳のイトちゃんの姿は、つい先日の出来事です。
窓を開けて窓際で過ごしていた暖かい日のことでした。イトちゃんが何かに気づいて「あ!あ!」と窓の外の木を指さしたのです。
ザザ〜っと一陣の風が通りすぎ、その拍子に木の枝が揺れて、数枚の葉がハラハラと落ちました。
まさに”センス・オブ・ワンダー”(自然の神秘や美しさに目を見はる感性)の体験。
子どもたちのこの感性は、大人よりも敏感で鋭いのです。 その自然の情景を共有したとき、イトちゃんの体験と私の体験がつながった瞬間でした。
子どもの”今”に寄り添い、自然に添う保育
「2歳児だからこの時期はこれができるようにする」とか「5歳児だからもっとこれができているはず」という行動の目標よりも、どんなことに興味を持ち、何を楽しんでいるのかを知ることで、子どもの内的な成長や心の動きを喜ぶ保育になります。
何かができるようになるための保育よりも、心が豊かに育つ保育が大切なのではないでしょうか。
子どもの”今”が見えていると、育つ力に感動します。子どもの心の動きを見守りたくなります。子どもの呟きの面白さに気づき、大人の声の大きさや言葉の多さが気になってきます。
こうした、子どもの”今”に寄り添い、自然に添う保育では、季節の移り変わりの中で豊かな体験ができるのです。
”今、目の前の体験” ≒ 試行錯誤
人は体験を通して育ちます。失敗も成功もありません。あるのは、”今、目の前の体験”。
その体験を通して「こうすればよかったんだな」「こうしたらうまくいった!」と、試行錯誤することで、様々な力が育まれます。
これは私たち大人も同じです。
「完璧な保育を確立している!」と言える人はいないはずです。そう言った途端に、大人の独りよがりな保育になってしまいます。
子どもたちと一緒に試行錯誤を楽しむことが、これからの保育には大切だと思っています。そして、保育の質の向上にもつながると考えています。
知識や方法を知るよりも、知恵を絞り、工夫する体験から培われる想像性や創造性が大切な時代だからです。 こうした保育は、決まりや方法を求める人には、難しく感じるかもしれません。
しかし、試行錯誤しながら行なう保育では、1日の保育を振り返った時、子どもたちの顔が浮かび、耳に声が残っていることでしょう。
そして「今日もおもしろかった。明日はこういう日にしよう。」と思えるのではないでしょうか。 毎日そう思える保育こそが、「毎日がセンス・オブ・ワンダー」なのかもしれません。
自然と子どもの姿に、”神秘と美しさ”を見出す感性を保育者のみなさんが持ち、”保育”というとても大切な仕事を体験し、愉しんでほしいと願っています。
おわりに・・
また今後は、私のnote(https://note.com/new_littletree)やInstagram(https://www.instagram.com/littletree_naonao/)などで様々な発信をしていきたいと思っていますので、引き続き応援していただけたら幸いです。
約5年間連載していただき、そしてそれを読んでくださったみなさまには感謝しかありません。本当にありがとうございました。
またどこかでご縁がありますように・・ それでは、また会う日まで。
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