なぜ保育園で絵本を読むのか?
これまで正しい絵本の読み聞かせ方についてシリーズでお伝えしてきました。全ての回を通してお伝えしてきたことは、【絵本は自然に読む】ということです。【絵本はこう読みましょう!】では、堅苦しく絵本の楽しみを限定しがちです。保育現場で働いていると、さまざまな状況の中で絵本を読んでいきます。同じ絵本を何回読んでも、読み方は変わってきます。
では、なぜ絵本を読むのでしょうか? 保育園って絵本があって、保育の中で必ず読んでいます。みなさんはなぜ絵本を読んでいますか? 俺はいつも同じ答えを持っていて、これまでずっと同じ答えをしてきました。
それは…楽しいからです!! なんてことはありません。絵本を読むのが楽しいから。それだけ。
- 子どもたちと絵本をきっかけにコミュニケーションをとると楽しい
- 一緒に物語の世界にダイブしていくと楽しい
- お決まりの繰り返しを習慣化して何度も何度も同じ絵本を読むと楽しい
毎日繰り返し絵本を読むと…
そうだ!お決まりの繰り返しを楽しむエピソードをひとつ。『はーい!』
みやにしたつや
アリス館 2013年
>>本の紹介はこちら
いろいろな動物が自分の体を駆使して返事をしていく、思い切りのよい、楽しいあいさつ絵本。この絵本の最後の「はーい またね」という部分をすごく好きな自閉症の男の子のお話。最後のシーンがやってくるとニヤニヤしていましたが、声を出して笑うようになりました。この子が楽しんでいるのがうれしくて、毎日読んでいくことに。すると、最後のシーンが近づくと堪えきれなくなり数ページ前から笑うようになりました。お次は、絵本の表紙を見るだけで最後を想像して笑い、最終的には「さぁ絵本読むよ~」と、絵本かばんを出すだけで笑うようになっていました(笑) その頃にはみんなも最後を楽しみにするクラスに。
これは、毎日一緒にいるという、クラス担任している保育士だけの楽しみでもあります。
数のお勉強をしましょう。行事食について知りましょう。言葉の獲得のために読みましょう。そんな時に絵本はとても有効かもしれません。わかりやすく親しみやすい。認知的能力の向上に役立つこと間違いなしです。
しかし、俺はそんなことを遥かに超える、子どもと絵本を読みあう楽しさに重きを置いています。保育士と子どもが絵本を通して繋がる。三項関係を築いている瞬間です。クラスで絵本を読むと、保育士と子どもは繋がっていますが、実は隣の子どもとも絵本を通して繋がっているのです。同じ絵本の世界を楽しむ。そこには共感や協同など気持ちが同じ方向を向いています。保育指針の注目ポイントのひとつ、非認知的能力の向上にも繋がります。
これまでのコラムで提示してきたように、絵本の楽しみ方は決まっていません。読み方もいろいろあって良い。保育の中の絵本はもっともっと自由であってほしいと願います。
保育場面での絵本読みで大切にしたいこと
そんなことを日々考え、関りのある方たちに伝えてきていました。するとそこに! 自分にとってバイブル的存在となる本が出版されました。『保育をゆたかに絵本でコミュニケーション』
村中李衣 著
かもがわ出版 2018年
>>本の紹介はこちら