自治体が行う保育の質を上げるための取り組み
今月のコラムは私が行っている自治体との取り組みについてお話したいと思います。
日頃より、児童発達支援管理責任者、保育士、発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考えるという活動を行っていますが、今回は具体的な3つの活動についてご紹介します。
①保育園巡回相談
私は自治体から事業委託として市内の「保育園巡回相談」を行っています。この保育園巡回相談は自治体によって方法はさまざまで、巡回相談自体を行っていない自治体もあるかと思います。今回は実際に行っている活動をご紹介します。
前期、後期に分けて園を訪問
私が行っている自治体では、年間50回、前期に1回、後期に1回、専門家が同じ園を巡回出来るように組まれています。巡回相談の目的は発達が気になるお子さんに対して、その行動の理由をお伝えし、保育園の中で出来る支援のアドバイスを行うことです。
療育に繋げることが目的ではなく、多様な発達の子ども達をどう支援しクラス運営を行っていくのかをお話します。
1回の訪問時間は2時間半で、その内1時間程度はカンファレンス、その他の時間は行動観察をします。対象のお子さんは4名程度までで、事前に必要情報を提出していただき、巡回訪問に向かいます。
前期と後期に同じ園を巡回できるようにしているので、前回のアドバイスからどの様に支援に活かせたか、その結果どう変化したかまでフォローアップできるようになっています。
②巡回相談と連動した事例検討会
巡回相談と連動して行っているのが、「事例検討会」です。こちらも事業委託としてアドバイザーの立場で参加しています。これは、事例検討会をそれぞれの園で質の高いものにして頂きたく、自園で出来るスキルを学んで頂くことが目的です。
事例検討会の進め方
事例検討会では、4園程度(1園1~2名)を1グループとして1回ごとに事例を出します。その事例について、参加園で情報の聞き取りや、支援のアイデアに導いていく流れを司会が進行しながら行います。最後に私が専門家の立場として支援の内容や進め方のアドバイスをします。
2グループあり、年間で4~5回程度行い最終日は総まとめとしてそれぞれの園が発表するという流れです。さらに、この自治体の素晴らしいところは、同グループ内で事例検討にあげたお子さんの支援の実践を巡回相談の際に同行し見ることができるということです。
③巡回相談、事例検討会と連動した保育ゼミ
さらに、知識の習得として年間5回の保育ゼミも行っています。市役所の会議室で市内の保育士さんたちが参加し、発達支援の学びを行っています。
この講師も私が行い、日頃から顔を合わせている園の先生方と明日からでも実践にいかせる学びを行っています。
私の研修はグループワークも多くしていることもあり、他園の先生とワークを行う中でさまざまな園との交流にもなります。年間、同グループで行うことで、段々と仲も良くなり和気あいあいとした楽しい学びの時間になります。
3つの取り組みが保育のスキル向上につながる
保育ゼミ、巡回相談、事例検討会を包括的に行うことで、現場保育士さんたちの知識とスキルが確実に向上します。結果として、現場の子どもたちの支援や多様な発達の子どもたちに関わる上でのマインドや日々の保育の質の向上につながっています。
また、外部からの専門家から、良い保育をしている、迷っていてもその関わり方で大丈夫と言われることが、現場の先生方の安心と自信につながり、保育士という仕事が楽しいものとなっています。
自治体の積極的な姿勢と地域全体での支援
この取り組みで大切にしていることは現場の保育士さんたちが、学びを深めて自ら子どもの行動の理由を考えられ、自ら支援方法を考え実践できる力をつけることです。常に受動的な姿勢でなく自主的に、能動的に出来る知識とスキルを習得してもらうということです。
このような活動が出来ているのは、自治体の多様な発達の子どもを含めた保育に対する積極的な姿勢があり、現場の先生を孤立させない皆で地域の子どもを育てていくという素晴らしい考えと行動力があるからこそだと感じています。皆さんの自治体でもこのような取り組みが行われていることを期待します。
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