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言葉は大切、伝えたいという気持ちはもっと大切 |発達支援の現場から 

言葉は大切、伝えたいという気持ちはもっと大切
児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上さんが、現場の保育士さんから多く寄せられるお悩みに回答します。>>連載一覧はこちら

巡回相談や保育所等訪問支援で園を回ると先生方から「言葉が出ない、または言葉の発達がゆっくりなお子さんに園で出来ることはありませんか?」という質問を受けることがあります。

言葉は伝える手段の一つ

玩具の取り合いで、友達に手が出る、友達の物をとってしまう、困っていても助けを求める事が出来ない。このような場合、どう対応していますか?

「貸してと言ってね」「手伝ってと言ってね」

具体的に伝える言葉を教える事も良いでしょう。

氷山モデル

しかし、言葉は表面的なものであって(氷山モデルの見えている部分)その子自身が誰かに何かを伝えたい気持ちは育っているかという(氷山モデルの水の中)事を考えるのが大切です。

いくら手段を知っていても、それを使いこなすには、相手に伝えたいという意欲が育っていないと意味がありません。

言葉は独り言ではなく、コミュニケーションとして使ってほしいのです。



伝えたいという気持ちを育てるには? 

おむつが汚れているとなく園児

伝えたい気持ちとはどのように育つのでしょうか?

新生児の頃は泣くことで「お腹が空いているのかな」「オムツが汚れているのかな」「眠いのかな」「抱っこしてほしいのかな」と周囲の大人が赤ちゃんの要求を探り、想いをかなえていきます。

こうして、泣くことで想いがかない、この人なら私の気持ちを分かってくれる、だからもっと伝えようというコミュニケーション意欲が育ちます。

ところが、泣いても自分の要求が叶わなかったら、どうなるでしょう。次第に泣くこと(伝える事)を諦めていきます。

では、幼児期はどうでしょうか? 

ブロックで遊ぶ園児

発達に偏りをもっていると、興味の幅が狭い、限定的である様子が見られます。遊びも一人で遊ぶ、困ったことがあっても、誰かに助けを求めずに諦めるといった様子でコミュニケーション自体、必要性を感じていない事もあります。

このような場合、まずはその子の「好き」に寄り添いましょう。その子の世界をよく観察し、少しだけその世界を共有させてもらうイメージです。

電車が好きなら、その子がやっているのと同じように並べてみましょう。そこに大人だからこそ出来る、本人が興味をもちそうなプラスワンをしてみてください。

例えば、ブロックでトンネルを作るとします。すると、自分でトンネルを作れなければ、もっと作ってほしいと要求を出してくるでしょう。これがコミュニケーションです。

自分にとってプラスなことが起きる、だから伝えたい、そしてそれが叶う、だからもっとこの人に伝えたい。というサイクルです。

コミュニケーションは言葉だけではない

コミュニケーションは言葉だけではありません。身振りサインや視線等のノンバーバル(非言語)コミュニケーションであっても、まずは伝わったという経験を積み重ねる事が、更に伝えたいという気持ちを育てます。

大切なのは、この人になら伝えたい、この人なら私の伝えたい事を分かってくれる、楽しいことをしてくれるという関係性をつくること

子どもが大人に合わせるのではなく、大人が子どもに合わせる。そこからコミュニケーションの意欲が育つのです。



井上さんからアドバイス

出来ないことを表面的に捉えるのではなく、この子に取って今大切なことはなんだろうという本質と向き合うことで、園の中で出来る事が見えてきます。

狭い視野でなく広い視野で考え、今できていることに目を向けることが、その子らしさを伸ばす保育に繋がります。一人でも多くの先生方にこの想いが伝わりますように。

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井上綾乃(いのうえ あやの)

この記事を書いた人

井上綾乃(いのうえ あやの)

発達支援センターでの実践や短大非常勤講師の経験を積み、自ら法人を立ち上げ、児童発達支援管理責任者(保育士と)して療育の現場で活動中。子どもをプログラムに合わせるのではなく、子どもに合わせた療育プログラムを行いながら、「楽しい」と感じる事で発達する支援を実践。現在では自治体の保育園巡回相談、保育ゼミ講師、依頼を受けての保育園、幼稚園研修講師等人材育成も行っている。
<シャインキッズホームページ>
https://shine-kids.com/

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