今回のお悩み:療育と保育がうまく連携できていない
にこちゃんさん(児童発達支援管理責任者/6年目)からの質問
発達支援事業所で働いてます。
年中のお子様がデイサービスで療育を受けています。通ってる認可外保育園から指示が通らずどうしたら良いか相談を受けたので、様子を見に行きました。
環境の配慮が出来ておらず、張り紙や装飾がたくさんで、色々なものが目に入ってしまう環境に思いました。先生達も大きな声で、指示するだけに感じ、保育の場には適してない印象を受けました。
なので、環境の配慮やスケジュール、子どもの接し方や日案等アドバイスをしてるのですが改善されず、お子様本人の問題としか捉えて貰えません。
保育園とデイサービスと連携が必要と考えますが、療育と保育違うからと、なかなか理解して貰えない場合、どのようにアプローチしたら良いか、アドバイスをお願いします。
専門家からにこちゃんさんへの回答
ご質問ありがとうございます。私も、市の委託事業として、保育所等訪問支援として保育園や幼稚園、学校に訪問する日々です。その中で大切にしている私の考え方と、方法をお伝えします。まずはじめに相手の立場を考えてお話するということです。療育の現場と保育園の環境では大きく違います。大人対子どもの人数比も違えば、先生方のスキルも違います。
そのため、まずは、その先生が何を考え環境を設定しているのか、どう考えお子さんと関わっているのかを相手の視点に寄り添って考えます。お子さんへの支援に繋げたければ、まずは、保育園の先生のことを知るということです。
実際に行っている訪問でのやりとりの方法
STEP1
保育園の先生とお話しする際に、先生の良いところを話し、承認し、保育園の先生から「療育の先生が敵ではない」ということを感じてもらえるようにします。お子さんのことを一緒に考え、よい方向性に導く仲間だということをお話します。STEP2
子どもの行動の理由を理論的に伝えます。例えば、張り紙や装飾がたくさん貼ってあったら、なぜ言語指示が通りににくいのか? を伝えます。この場合は、感覚面の偏りから、必要な情報だけを選択し、いらない刺激を排除する刺激の調整が難しいために先生の指示が入りにくいことが考えられます。STEP3
保育園で出来ることを伝えます。例えば、子どもたちの素晴らしい作品を飾りたいという気持ちは理解したうえで、教室内で展示物の位置を後ろだけにするように伝えます。具体的には、一斉指示で先生が話す際は、展示物(刺激)のない教室の前に立ち行うようにする。これなら子どもの作品は後ろの壁に展示することが出来ます。指示の通りにくい子には全体指示の後、個別に場所を変えて指示だけに集中できる環境の中で伝えることもできますね。
STEP4
いくつもの支援方法をお伝えし、園や先生の考えに合うものをその中からチョイス出来るようにします。今回のケースの場合は、刺激の調整だけがその子の困りごとの理由とは限らず、言語理解や指示に沿いたくない等の社会性の側面も考えてお話することをお伝えするといいでしょう。STEP5
お伝えした中から「先生に出来そうだと思えることはありますか」と問いかけます。すると「これならできそう」というアクションにつながりやすくなります。STEP6
質問があれば、質問をしてもらいます。より具体的な支援につながるようプロの視点、意見がお伝え出来ます。私が行っている流れはこのような形です。ぜひ、ご自身の活動と照らし合わせてみて、まだやっていなかったなというところがあれば取り入れてみてください。
訪問を行う療育の先生へお伝えしたいこと
私が訪問する際にいつも大切にしていることは、療育の専門家であれ相手との関係性の中で上下はないということです。お互いに働く環境は違うものの、かわいい子どもに関わる仕事をしている同じ立場でもあります。また、近年では発達のアンバランスさをもつ子ども達が増加している中でも、クラス運営を行い、大きな集団を保育する素晴らしさは尊敬に値します。そんな気持ちで、自分のスキルも磨きながら相手視点に寄り添ったお話をできるように、日々過ごしています。
ご質問してくださった先生も、こちらにご相談を寄せてくださるということは、どうにかしたいという気持ちの表れで、さらにステップアップできる助走段階にあると思います。専門家からアドバイスを受ける側の読者の方も多いと思いますが、今回の内容が良いと思えたらぜひ使ってみてください。応援しています。
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