「いのち」の大切さをどう伝える?
人はもちろん、虫や動物、植物など、子どもたちの身近なところにはたくさんの「いのち」があります。さまざまな機会を通して、「いのちを大切にする」ということを子どもたちに伝えていきたいですよね。しかし、実際にどう伝えたら良いのか悩んでいる保育士さんも多いのではないでしょうか。今回は、子どもたちに「いのち」の大切さについて伝えていく方法や、子どもたち自身で学んでもらうための方法をご紹介します。合わせて、おすすめの絵本もご紹介しているので、こちらもぜひチェックしてみてくださいね。
虫を殺すのは興味や好奇心
子どもは小さな虫や生き物に出会ったとき、踏んだり石で潰したり、大人から見ると残酷なことをしてしまうことがあります。しかしこれは、「殺そう」と思っているのではなく、興味や好奇心から来ることが多いです。
例えばよくあるのは、アリを捕まえようとしたら指で潰してしまった…という場面です。「先生、アリさんいなくなっちゃった」と、子どももポカンとしていることがありますよね。きっと子どもの中では、「アリが逃げてしまう!捕まえたい!」と思って指で捕まえようとしただけのことなのです。
まだ経験が少ない子どもたちは、いま自分が持っている知識の中でいろいろな方法を試そうとしています。「これをしたらどうなるのかな?」「こうやったら捕まえられるかも」と、方法を探っているのです。
「触っちゃダメ」「そんなことしたらかわいそうでしょ」という声かけをついしてしまいがちですが、子どもたちは悪いことをしているという意識ではないので、少し伝わりにくいかもしれません。では、どのように伝えていくと良いのでしょう。
「いのち」や「死」は実体験で学ぶ
生き物(昆虫や虫)の「いのち」
例に挙げたように、子どもたちは、小さな虫たちとの関わりの中で「いのち」と「死」を学ぶ機会はとても多いと思います。子どもたちが園庭や公園で虫を見つけて、好奇心で水をかけたり、木の枝でつついたり、ちょっかいを出しながら遊んでいるうちに、少しずつ虫は弱っていきます。ここで子どもたちから、どのような言葉が出るのか観察してみてください。「かわいそうだからやめよう」「動かなくなったぞ!」「もっと水をかけてみよう」「死んじゃったかも?」など、さまざまな声が聴こえてくるはず。
もしかすると、本当に虫は死んでしまうかもしれませんが、そのような経験をきっかけに本当の「いのち」の大切さを学んでいきます。「自分がこのようなことをしたら死んでしまった」と気付き、悲しみ、そこで初めて、小さな虫や生き物にもそれぞれ「いのち」があることを実感します。
このような場面では、保育士さんが、「アリさん、動かないね。どうしたんだろう?」と声をかけて、子どもが考えるきっかけを作るのもひとつの方法です。捕まえた虫の種類や状態によっては、園で育てて、エサをあげたり観察をして、身近なところで「いのち」に触れる機会を作るのも良いでしょう。
大人にとっては少し残酷に思えることもあるかもしれませんが、「ダメ」と一方的に伝えるのではなく、子どもたち自身で考え、気付くためのきっかけ作りが大切です。
植物の「いのち」
虫や生き物と比べると、保育士さん自身も意識することが少ないかもしれませんが、植物にも「いのち」があることを伝えられると良いですよね。この場合も、虫のときと同じように、子どもたちの実体験が大切になってきます。園でできる一番身近な経験として、植物栽培を通して成長を見守る活動をおすすめします。初めは種や芽だった植物に、子どもたち自身が水や肥料をあげることで、日々少しずつ成長する姿を体験していきます。時には枯れてしまったり、何らかの衝撃で茎が折れてしまったり…ということがあるかもしれませんが、これも経験です。
「水をあげると大きくなる」「枯れてしまったらお花は咲かない」など、植物の「いのち」について子どもたちなりの解釈ができるようになっていくでしょう。植物が少しずつ背を伸ばしていったり、花や実をつけたりする姿を、子どもたちとじっくり観察できる時間があるとより良いですね。
「いのち」について伝えるおすすめ絵本
人や動物、植物など…身近にあるさまざまな「いのち」について、子どもたちに伝えるきっかにできる絵本を厳選してご紹介します。大人にもおすすめの絵本なので、ぜひ手に取ってみてください。テスの木
作:ジェス・M・ブロウヤ―絵:ピーター・レイノルズ
訳:なかがわちひろ
出版社:主婦の友社
6歳の女の子テスと、175歳の木。テスは木のことが大好きで、いつも一緒に遊んでいました。しかしある嵐の日、木が折れてしまいます。木は切り倒されることになり、それを受け入れられなかったテスですが、最後にはあることを思いつきます。
『テスの木』は、大切な木との別れをテスがどう受け止めていくのか…という場面が見どころ。小さなテスなりに考えた方法が温かく、人や動物の命以外にも「いのち」があることを知ることができるお話です。
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命はどうしてたいせつなの?
著:大野正人絵:ハラアツシ
出版社:汐文社
人は今までもらってきたたくさんの命で大きくなっています。命をもらって食べること、それが生きるということ。
自分が今生きているのは、たくさんの命をいただいているから。そんなことに改めて気付かせてくれる深いお話です。普段はなかなか意識することがない「食物連鎖」について、イラストと言葉で分かりやすく描かれています。絵本自体は少し長く、対象年齢も高めなので、読み聞かせや大切なところを抜粋して子どもたちに伝えるのもいいですね。
>>本の紹介はこちら
その他、こちらの記事では動物のいのちについてのおすすめ絵本をご紹介しています。こちらも併せてチェックしてみてくださいね。
「いのち」の学びは体験から
「いのち」について学ぶということは、とても難しいことです。子どもたちは、その大切さをしっかりと理解するまでにたくさんの経験をしていく必要があります。保育士さんたちは、子どもたちの学びの機会を見守ってあげてくださいね。▼ほかおすすめの記事はこちら