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東京おもちゃ美術館で聞いた!保育現場で注目の「木育」とは?

東京おもちゃ美術館の木製おもちゃ
近年、保育や子育ての場で耳にすることが多い「木育(もくいく)」。「木を活用した保育のこと?」「木のおもちゃで遊ぶこと?」と、言葉は知っていても実際の活動内容はどのようなものなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。今回は「木育」の意味や保育に取り入れる中で大切なことを、積極的に情報発信をしていることで知られる『東京おもちゃ美術館』で伺いました。

保育分野で広まる木育

「木育」という言葉は、保育現場で働いていると耳にすることも多いのではないでしょうか。最近では、絵本屋さんにも木のおもちゃが置かれている様子をよく目にします。また、先日取材した保育関係者向けの展示会「保育博2019」でも、木育ブースには多くの人が集まっており、注目度の高さを感じました。

今回は、新宿区にある『東京おもちゃ美術館』にて、副館長の馬場清さんに木育についてのお話を伺いました。この美術館は、さまざまな木のおもちゃに実際に触れて遊ぶことができます。また、木育に関するセミナーを開催したり、情報発信を積極的に行っていることでも知られています。


木育とは?

「東京おもちゃ美術館で考えている”木育”とは、その字の通り『木で育てる』『木で育む』ということです。木はなるべく地域材を使用することも大切にしています。木のおもちゃで遊んだり、木でできた空間で過ごしたり、木で何かを作ったり、実際に森に行ったり…。さまざまな木育があると思います」

木で育む、と聞いて浮かび上がったのは、「木で何を育むのか?」という疑問。それについて、馬場さんはこう話します。

「木育で大切なのは、『育む、育てる』というところです。先ほども挙げたように、さまざまな木育がある中で、その活動で何を育てるのかです。そこで私たちは、木育を『かきくけこ』でまとめました」

か=環境を守る「木育」
き=木の文化を伝える「木育」
く=暮らしに木を取り入れる「木育
け=経済を活性化させる「木育」
こ=子どもの心を豊かにする「木育」


「例えば『環境を守る木育』。昔は木を切ることは、環境破壊だと言われていました。しかし、今は違います。無謀な伐採はもちろん環境破壊になりますが、今の日本の森の状態で言うときちんと切ること、そして切ったものを使うことでお金になり、そのお金が森に戻ってそれで環境整備をすることが、環境を守ることにつながります。そのようなことを、木育活動を通して知ってもらいたいですね」(馬場さん)

木のおもちゃで遊ぶ、木でなにかを作る、ということももちろん木育のひとつ。保育者としてはどうしてもその部分だけをイメージしがちですが、実はそこに留まらず、木育というひとつの言葉の中にも、さまざまな想いが込められていますね。

ウッドスタート宣言園

保育者としては、保育現場や施設への木育の取り入れ方が気になるところ。現在、東京おもちゃ美術館で普及を進めている「ウッドスタート」という取り組みについてご紹介します。

これは、木を真ん中に置いた子育てや保育の環境を整備して、木を感じながら生活を豊かにしていくための活動です。

その中には、幼稚園や保育園と取り組むものもあり、園はある一定の条件を満たすと「ウッドスタート宣言園」となることができます。

❶保育ナチュラリスト・木育インストラクターの資格を持った人材がいる
②木育・自然教育の継続的な学びを行っている
❸木育絵本・木育おもちゃがある
④環境やからだにやさしい木のお手入れをしている
⑤木や自然を活かした遊びや活動を取り入れている
⑥自然を五感で感じられる園庭がある
❼自然とふれあうお散歩へのこだわりがある
⑧園舎やその内装に関する木質化をしている
⑨木製遊具を使用している
⑩木の箸や器など食育の実践に木を使っている

※●⇒必須目標 ○⇒努力目標

出典:森の恵みと幼保育園がつながる 木育ガイドブック ウッドスタート宣言園になるために/認定NPO法人グッド・トイ委員会(現芸術と遊び創造協会)東京おもちゃ美術館

町中にある園だから木育はむずかしい…と思い、諦めていた園でも大丈夫。木育にはさまざまな視点からの意味や取り組み方があります。こちらのガイドを参考に、ぜひ園でできることから木育を始めてみてはいかがでしょうか。

木育が子どもたちに与える影響

木育を園で取り入れたとき、どのような影響を子どもたちに与えるのでしょうか。木のおもちゃの効果について馬場さんは、以下の3つを語ってくださいました。

五感の刺激

「木のおもちゃは五感を刺激します。乳幼児期は、一番五感で生きている時期だと思っています。大人になると視覚や聴覚が主になっていきますが、子どもの頃はにおいを嗅いだり舐めたり、五感を駆使していますよね。だからこそ、この時期に五感を働かせるものに出会って、発達させていくことが大切です」

子どもたちの五感は、大人以上に敏感で鋭いですよね。木のおもちゃは、触ったときの感触、それぞれの木のにおい、木目の美しさなど、五感を働かせる要素がそろっています。子どもたちが遊びながら五感を発達させていくのに最適なんですね。

遊びが広がる

「木のおもちゃは、ただの丸い木だったりと単純なものが多いです。でもそれは、いくらでも遊びを広げられるということです。

私たちは、木のおもちゃを『面倒見の悪いおもちゃ』と言っています(笑)。置いてあっても動くわけじゃない。こちらから働きかけないと遊べないんですよ。でも、働きかけることによっていろいろなものに見立てられますよね。想像力を鍛えてくれます

このお話には、思い当たる節がありました。私が保育園で働いていたとき、子どもたちはおままごとに木の積み木を使っていました。他の場面では、車の上に乗せている子もいれば、カチカチならして遊ぶ子も。保育現場で見た光景が、木のおもちゃの効果を表していたのですね。

いのちを学ぶ

「木は、いのちを意識できる素材です。例えば『この積み木は、あそこの森の木を使って作られたんだよ』ということで、つながりが見えやすいです。いのちをいただきながら遊んでいる、ということを意識しやすいんです。

木を伐採するところを見に行くのもいいですよ。木を切る音や木目のきれいさ、木の香り、そして倒れる瞬間の音。自然の中の木が自分たちのものになっていくことを直接感じられるこの瞬間に子どもたちが立ち会うことで、さまざまな学びの場になるのです。まさに、木育の醍醐味を味わえるのです」

子どもたちの感性は、とても豊かです。森にある木が自分たちの手元にあるものになっていく様子を目で見ることで、木のいのちを感じることができます。

木育活動の先にあるもの

「保育園や幼稚園で木育を行うのであれば、やっぱり地域材や国産材を活用した木のおもちゃや棚、いすなどを取り入れることが始めやすいと思います。しかし、問題なのは『使っておしまい』になること。

木をどう生かして、子どもたちになにを伝えていくかが大切です。導入にとどまらず、その先まで考えて木育を保育の場に導入してもらえたらうれしいですね」

ただ木を取り入れるだけでなく「どうして木を使うのか」「木によって子どもたちに何を伝えたいのか」というところまで考えることで、木育の魅力がさらに広まっていくのではないでしょうか。園での木育活動に興味がある方は、ぜひ第一歩に踏み出してみてください。
 
東京おもちゃ美術館では、木育を通した保育環境について考えるセミナー、「森のめぐみの保育環境セミナー2019」を開催しました。

実際にウッドスタート宣言園になっている保育園や幼稚園の実践報告などもあり、木育をより知ることができます。ぜひ、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。

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ほいくis(ほいくいず)編集部

この記事を書いた人

ほいくis(ほいくいず)編集部

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