誤嚥とは
誤嚥は、口に入れたものが何かの拍子で気管(空気の通り道)に入り込んでしまう状態です。気管に異物が引っかかり空気の通りが悪くなると、せき込みや喘鳴(ぜんめい:ゼーゼーする症状)などの症状が見られます。誤嚥の中でも特に怖いのが、気管に異物が詰まってしまう窒息です。窒息状態になると、息ができなくなるため、意識不明に至ることがあります。
※誤飲(ごいん)とは 言葉の響きが誤嚥と似ていますが、こちらは食べたり飲んだりしてはいけない異物を飲み込んでしまうことです。同じく事故のリスクもあります。子どもの誤飲によく見られるものとして、たばこや医薬品などがあります。 |
誤嚥の原因
生後5~6か月頃から、手で触れた物は何でも口に持っていくようになります。これは子どもの成長過程で見られるものですが、口に入れた物で喉を詰まらせてしまうことがあります。また1歳半頃までの乳幼児は、物を飲み込む機能が未熟な上、大人のように食べ物を噛んだりすりつぶしたりすることが出来ません。子どもの口の大きさは最大39mm程(乳児は32mm)と言われていて、このサイズより小さい物は口に入ってしまううえ、十分に咀嚼できず飲み込んでしまうことがあります。
保育園で見られるケース
1日の活動の中で、常に誤嚥のリスクは潜んでいます。よくある場面で確認していきましょう。室内遊び
玩具の大きさに注意を払っていても、玩具が劣化し壊れたはずみで小さな部品が取れてしまっていることもあります。容易に口に入ってしまうサイズになっていることもあるため注意が必要です。屋外遊び/戸外活動
小石や木の実など、子どもの好奇心を刺激する物がたくさんあります。なんでも口に入れて確かめたくなる月齢の子どもは、目に入った物は簡単に口に含んでしまうことがあります。食事の場面
粘着性が高く唾液を吸収して飲み込みにくいパンや、丸い形でつるつるしているミニトマトやブドウ、ゼリー、固くて噛み切りにくいグミなどは誤嚥リスクが高くなります。硬い豆やナッツ類はかみ砕く必要があり誤嚥リスクも高いため、5歳以下の子どもに食べさせてはいけない食材となっています。また普段食べられているものでも、その日の体調により上手く食事を摂れないこともあります。お弁当を持参する日は、お弁当カップや爪楊枝など、食材以外にも注意が必要です。
※参考:「食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!―気管支炎や肺炎を起こすおそれも、硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで―」/消費者庁
誤嚥の応急処置
誤嚥により窒息した状態が続くと、死に至ってしまうこともあります。窒息の症状には、「顔色が悪くなる」「声を出せない」「喉に手を当てる」などがありますが、気が付かないうちに静かに進行している場合もあります。窒息が疑われる場合は、年齢に合わせた早急な対応が重要です。【1歳未満】背部叩打法と胸部突き上げ法
まずは1歳未満の乳児に対応した、背部好打法(はいぶこうだほう)と、胸部突き上げ法をご紹介します。- 子どもの頭が低くなるよう、片方の腕の上にうつぶせに乗せ、手のひらであごを支える
- もう片方の手の平の付け根部分で、肩甲骨の間を4~5回強く叩く。
- 膝の上で仰向けにし、片方の足を脇に挟んで体が落ちないようにする
- 両乳頭を結ぶ線の少し下を指2本で圧迫する
- 胸の厚さの1/3程度が沈む位の強さで4~5回圧迫する。
胸部突き上げ法(動画)
【1歳以上】腹部突き上げ法(ハイムリック法)
続いては、1歳以上で対応できる腹部突き上げ法(ハイムリック法)をご紹介します。1歳未満の乳児に対しては、内蔵損傷などの危険があるので実施は避けてください。- 子どもの背後から両腕を回す
- 一方の手をグーに握り、親指をおへその少し上に当てる
- もう片方の手を握った手に重ね、手前上方に一気に強く突き上げる。
腹部突き上げ法(ハイムリック法)
予防・対策について
誤嚥は未然に予防ができます。ポイントを絞って確認していきましょう。食事の場面
給食や食事の場面でチェックするポイントをまとめました。- 子どもの発達や保護者からの情報をもとに食べさせてはいけない食品、形状を判断する
- 食事中に眠ってしまった場合は、口の中に食物が残っていないか確認する
- 食材はよく噛むよう声を掛け、飲み込むまで目を離さないようにする
- 大声で話しかけたりせず、食事に集中できるよう配慮する
- 普段食べている食材でも危険性のあることに留意する
環境を整える
続いて、環境面でのチェックポイントです。- 使用する玩具などの形状や数をチェックし、危険なものは置かないようにする
- 戸外活動の際、小石や木の実・プラスチックのゴミなどの有無を確認し、活動中は子どもの様子を注意深く見守る
保護者への連絡
誤嚥が発生した際は、保護者への連絡も重要となってきます。再発防止のためにも、どのような時に誤嚥の症状が見られたのか、時間や場面などを正確に伝えましょう。緊急時であれば子どもの対応と平行し、職員間で連携をとりながら保護者へ連絡をすることも大切です。誤嚥リスクの視点で保育の振り返りを
保育現場は、さまざまな場面で誤嚥と隣り合わせであると言っても過言ではありません。その視点で日頃の保育を振り返り、保護者が安心して子どもを預け、子どもが安全に過ごせるよう園全体で取り組んでいきましょう。【関連記事】