児童虐待とは
児童虐待とは、子どもを養育する上で行う不適切な行為を指します。近年では年間で70人以上の子どもが児童虐待により死亡しており、問題は深刻化しています。まずは、児童虐待の種類と現状について見ていきましょう。
出典:こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第20次報告)/こども家庭庁(令和6年9月)>>詳細はこちら
児童虐待の種類
児童虐待は、児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)により次の4種類に分類されています。身体的虐待
殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など性的虐待
こどもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする などネグレクト
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など心理的虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティックバイオレンス:DV)きょうだいに虐待行為を行う など出典:児童虐待の定義/こども家庭庁 >>詳細はこちら
児童虐待件数の推移
全国の児童相談所が対応した児童虐待件数は年々増えており、こども家庭庁が発表した『令和4年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数』によると、令和4年度(2022年度)中は214,843件と過去最多の数字になっています。令和元年度は193,780件、令和2年度は205,044件、令和3年度は207,660件と年々増加の一途を示しています。これは児童相談所が対応したケースの数字で、中には発見に至らない事例も多くあると考えられています。
内訳を見ると、最も多かった事例は、心理的虐待で128,114件となっており、全体の59.6%を占めています。また、前年度(令和3年度)の124,724件と比べると、3,390件増加していることが分かります。
心理的虐待は発見が難しいと思われがちですが、家庭内でのDVから児童虐待が浮き彫りになり、発見されるケースが増えていることが増加の要因として挙げられます。
出典:平成4年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数/こども家庭庁 >>詳細はこちら
子どもの様子に見られる児童虐待のサイン
児童虐待防止法では、保育施設などの職員に虐待の早期発見に努める義務が規定されています。日々子どもと関わる職業だからこそ果たせる役割ですね。ここからは、保育士がチェックしたい、「子どもの様子に見られる児童虐待のサイン」を紹介します。
出典:子どもの笑顔を守るために/全国保育協議会 >>詳細はこちら
ケガが多い
- 背中やお腹、足など目立たない場所にケガをする
- やけどしたような痕がある
- ケガが増える
- 常にケガをしている など
身なりや態度の違和感
- 手を伸ばすと体をこわばらせる
- とっさに体を守ろうとする
- 衣類の汚れやにおいが目立つ
- 食べ物へ執着する
- 家へ帰りたがらない など
情緒が不安定
- 急に泣き出す
- 保育者に過度に依存する
- 表情と表現が一致しない
- 長時間ぼんやりする
- 注意引き行動をする など
言葉や遊びが暴力的
- 他の子に対して攻撃をする
- 脅迫的な言葉や支配的な言葉を使う
- 他の子を無理に押さえつけようとする
- 玩具や物を意図的に壊す
- 自分の身体を傷つけようとする
発達の遅れ
- 体重が明らかに軽い
- 言葉が遅い など
疑われる事例を発見した際の対応
「虐待かも」と思ったら、速やかに上司に相談しましょう。その上で、対応策を決定していくことが大切です。ここからは、虐待の疑いを見付けた時の保育士の対応について紹介します。
記録をとる
確信が持てないながらも「虐待かも」と感じた時は、記録をとりましょう。保護者や子どもとの会話から気になる点があれば、話の内容や話しているときの様子などを、時系列でまとめておきます。身体に傷やアザがある場合には、写真を撮っておくと情報共有する際に役立ちます。
記録には、日付や時間を忘れずに記入しましょう。
専門機関や市区町村と連携を図る
保育園の場合は、まず自治体の担当部署と連携をとって対応を進めていくことが多いでしょう。保健師が自宅を訪問したり、健診のときに注意深く様子を見たりすることにも繋がります。近隣の人から通報が届いている場合、警察や児童相談所から保育園へ連絡が来ることも少なくありません。その際は、情報提供を求められることもあるので、記録を元に事実を伝えるようにしましょう。
相談窓口について
児童虐待による被害を減らすためには、気付いた人がいち早く専門機関に相談することが大切です。こども家庭庁は、誰でもすぐに連絡できるよう、虐待対応ダイヤルを設けています。番号は「189」で、「いちはやく」の語呂合わせになっています。
電話をかけることで、地域の児童相談所に繋がります。匿名での相談も可能で、個人情報や話した内容などは公になることはありません。通話は無料です。
保育士は、保護者や地域の人から虐待について相談を受けることもあるかもしれません。虐待対応ダイヤルの存在を周知していくことも、大切な役割の一つとなるでしょう。
また、こども家庭庁は「秋のこどもまんなか月間」の取り組みの一つとして、毎年11月に「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」を実施しています。保育士としては、こういった啓発活動にアンテナを立てておくことも大切ですね。
出典:こども家庭庁 >>詳細はこちら
子どもを虐待から守ろう
子どもへの虐待発生件数は年々増加しており、死亡に至るケースも少なくありません。保育士はまず身近にいる子どもたちに目を配り、疑わしい様子がある場合は、各所と連携しながら子どもを守っていきましょう。【関連記事】