保育士の配置基準とは
保育士の配置基準とは、「子ども1人につき保育士が何人必要なのか」を定めた国のルールです。現在の配置基準は以下の通りです。<現在>
参考:「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第三十三条/厚生労働省>>詳細はこちら
政府が示した保育園の配置基準の見直し案
<2024年度~>2024年度(令和6年)から
【4〜5歳児クラス】
- 「30対1」を「25対1」に改善する
- 従来の基準より手厚く配置した園に運営費を加算する(公定価格上の加算措置)
- 「20対1」を「15対1」に改善する
【1歳児クラス】
- 「6対1」を「5対1」に改善を進める
また、第9回こども未来戦略会議の参考資料『こども未来戦略における主な施策等について』では、時期の記載はありませんが3歳児クラスについても触れられています。
※児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(2024年4月改定)>>詳細はこちら
【保育士不足と経過措置】政府の見直し案の注意点
保育士の配置基準が今後改善されていきますが、ここで注意点があります。それは「すべての保育園が保育士を増やせるのか?」ということです。ただでさえ保育士不足と言われているので、「求人しても保育士が見つかりません… 」という保育園がたくさん出てくることが予想されます。そこで政府は「一定期間は元の配置基準でも良い」という経過措置を設けて、保育現場の混乱を防いでいます。
しかし、この経過措置には期限が明示されていないので、配置基準に法的な縛りがかけられるか不透明な部分もあります。保育士としてはこの政策が本当に実行されるのかを注視する必要があります。
参考:こども未来戦略における主な施策等について(スライド8)>>詳細はこちら
配置基準を満たさない保育園はどうなるのか?
経過措置が終了し、配置基準が法的な効果を持った際に、それでも保育士が足りない保育園は一体どうなるのでしょうか?配置基準に違反したまま保育を行えば、認可の取り消しや運営停止などにつながるので、クラスの子どもの数を減らして保育園を運営する方法などが考えられます。
保育士の数を増やして手厚い保育を行うための配置基準の改善ですが、保育士が不足していると子どもの不利益になる可能性もあります。
保育士アンケートからわかる保育園が望む適正な配置基準
では、保育園で勤務している保育士たちは、配置基準についてどのように感じているのでしょうか? 以前もほいくisでは取り上げられていましたが、配置基準についてほいくisの読者にアンケートを行うと、「適性と思われる保育士の人数」は現行の基準では足りないという声が多く聞かれました。0歳児クラスのアンケート結果
【質問】現在は保育士1人あたり子ども3人ですが、適正と思われる人数はどれくらいですか?回答 | 割合(件数) |
---|---|
4人 | 8.0%( 482件 ) |
3人(現状) | 13.8%(833件 ) |
2人 | 71.1%(4,278件 ) |
1人 | 7.0% (424件 ) |
1歳児クラスのアンケート結果
【質問】現在は保育士1人あたり子ども6人ですが、適正と思われる人数はどれくらいですか?回答 | 割合(件数) |
---|---|
7人 | 1.6%(104件) |
6人(現状) | 3.0%(188件) |
5人 | 20.4% (1,291件) |
4人 | 75.0% (4,757件) |
2歳児クラスのアンケート結果
【質問】現在は保育士1人あたり子ども6人ですが、適正と思われる人数はどれくらいですか?回答 | 割合(件数) |
---|---|
7人 | 1.0% (65件 ) |
6人(現状) | 10.9%(706件) |
5人 | 50.6%(3,289件) |
4人 | 37.6% (2,442件) |
3歳児クラスのアンケート結果
【質問】現在は保育士1人あたり子ども20人ですが、適正と思われる人数はどれくらいですか?回答 | 割合(件数) |
---|---|
21人 | 0.4% (29件 ) |
20人(現状) | 3.1%( 205件) |
15-19人 | 37.6% (2,476件) |
14人以下 | 58.9% (3,883件 ) |
4歳児クラスのアンケート結果
【質問】現在は保育士1人あたり子ども30人ですが、適正と思われる人数はどれくらいですか?回答 | 割合(件数) |
---|---|
31人以上 | 0.2% (15件 ) |
30人(現状) | 1.5% (100件) |
21-29人 | 25.0%( 1,625件) |
20人以下 | 73.3%( 4,773件 ) |
5歳児クラスのアンケート結果
【質問】現在は保育士1人あたり子ども30人ですが、適正と思われる人数はどれくらいですか?回答 | 割合(件数) |
---|---|
31人以上 | 0.2% (11件 ) |
30人(現状) | 2.8% (187件) |
21-29人 | 27.9% (1,839件 ) |
20人以下 | 69.1% (4,548件) |
どの年齢のクラスでも、保育士は「現行の保育士の人数」に不足を感じているのが見て取れます。そして、政府が進めている配置基準の改善内容と、保育園現場の求めている水準には大きなズレがあるのがわかります。
そのほか詳しい内容については以下からご覧ください。
保育士の配置基準はおかしいのか?
現場の想いとズレるたった1つの理由
「配置基準が76年ぶりの改定」と言っても、保育園の現状や職員の願いとは大きなズレがあります。なぜこのようなズレが生じるかと言えば、この配置基準は「最低基準」であり、あくまで「子どもを安全に見られる保育士の数」にすぎないからです。保育園現場で子どもたちを保育する職員は「丁寧に保育をしたい」と思っています。1人1人の気持ちに寄り添って、しっかり育てていきたいと願う人ばかりです。
ただ、その願いを叶えるためには現行の配置基準では保育士の数が十分ではなく、「本当はこの子の気持ちにもっと寄り添いたいのに… 」と思いながら、それができない辛さの中で保育をしています。
配置基準の改善はもちろん歓迎すべきことですが、現場で日々頑張っている保育士の声を聞いて、「改善がまだまだ足りない」ということを政府にわかってほしいのが保育園現場の本音ではないでしょうか。
保育士の配置基準の今後を注視しよう
1歳児、3歳児、4〜5歳児の保育士の配置基準が改善されると言っても、本当に実施されるか未知数な部分があります。「保育士の数」は日々の保育や職場環境に影響するだけでなく、子どもたちの成長に直結する大切なことです。今後の動向をしっかり見守っていきましょう。【関連記事】