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保育士特定登録取消者管理システムとは?導入の背景や対象などを解説

保育士特定登録取消者管理システムとは?導入の背景や対象などを解説
令和6年(2024年)4月1日より児童福祉法が改正され、「保育士特定登録取消者管理システム」が本格的に運用される予定です。このシステムの内容や導入される理由、対象、個人情報の保護についてなどをわかりやすくご紹介します。 

保育士特定登録取消者管理システムとは 

「保育士特定登録取消者管理システム」とは、児童へのわいせつ行為などで保育士資格を取り消された人の記録をデータベースで管理するものです。データに登録されるものは「特定登録取消者の氏名」や「保育士の登録の取消しの事由」「行った児童生徒性暴力等に関する情報」等となっています。 

システム運用の全体像は以下の通りです。 
  • 国がデータベースを整備する
  • 都道府県知事がデータベースに記録する
  • 保育士を任命又は雇用する者がこのデータベースを活用する
この仕組みは令和6年4月1日より本格的に運用され、児童へのわいせつ行為を行って保育士資格を取り消された人を、雇用する前に把握できるようになります。 

参考:こども家庭庁(保育士特定登録取消者管理システム説明資料P5)>>詳細はこちら 

保育士特定登録取消者管理システムはなぜ導入されるのか 

児童を性犯罪から守る環境を整備するため、令和4年(2022年)6月に「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、児童生徒性暴力等を行った保育士の資格管理が厳格化されました。 

具体的には以下の通りです。 
  • わいせつ行為を行ったと認められる場合、保育士資格は取り消しまたは失効 
  • 禁固以上の刑に処せられた場合、保育士の再登録は「期限なし」で不可 
  • 禁固刑以外は執行から3年後に保育士の再登録が可能(再登録が適当な場合に限定) 
  • わいせつ行為を行った保育士の情報を、保育士を雇用する者等が把握できるような仕組みを構築
児童へのわいせつ行為を行った人への資格管理を厳格化するだけでなく、「保育士特定登録取消者管理システム」を導入して、保育士として雇用する前に「わいせつ行為などで資格を取り消された記録の有無」をチェックして児童を守ります。 

 参考:第53回社会保障審議会児童部会(児童生徒性暴力等を行った保育士の資格管理の厳格化について資料P2)>>詳細はこちら 

保育士特定登録取消者管理システムは誰が対象なのか 

「保育士特定登録取消者管理システム」で管理されるのは「特定登録取消者」と呼ばれる人で、2つに区分されています。 

 ①児童生徒性暴力等を行ったことにより保育士の登録を取り消された者。(1号) 
②上記以外の者で、保育士登録を取り消された※もののうち、保育士登録を受けた日以後の行為※が児童生徒性暴力等に該当していたと判明した者。(2号) ※法施行前の取消や、法施行前の行為も含む。 


参考:令和4年6月に成立した改正児童福祉法について 新旧対照表P17>>詳細はこちら 

②は分かりづらいのですが簡単に言えば、 
・別の原因から保育士登録を取り消された 
・その後、保育士登録を受けた日から児童生徒性暴力等に該当していたことが判明 
という人も「特定登録取消者」になるということです。 

児童生徒性暴力等とは何か 

「性的虐待」が「児童生徒性暴力等」に当たると言われています。 

こども家庭庁の「保育所等における虐待等の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」では「性的虐待」の具体例を以下のように記載しています。 
  •  下着のままで放置する。 
  •  必要の無い場面で裸や下着の状態にする。 
  •  こどもの性器を触るまたはこどもに性器を触らせる性的行為。(教唆を含む)  
  •  性器を見せる。 
  •  本人の前でわいせつな言葉を発する、又は会話する。性的な話を強要する。(無理やり聞かせる、無理やり話させる)  
  •  こどもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆を行う。  
  •  ポルノグラフィーの被写体などを強要する又はポルノグラフィーを見せる。 
「児童生徒性暴力等」の定義はこども家庭庁の「保育士特定登録取消者管理システム説明資料P9」にありますので、詳しく知りたい人は資料をご確認ください。 >>詳しくはこちら

情報の取り扱いはどうやって、誰が行うのか? 

児童を性犯罪から守るための「保育士特定登録取消者管理システム」ですが、登録された情報はどのように扱われるのでしょうか?

予定されている主要な対策は以下の通りです。 
  • 施設又は法人の採用責任者に対し1アカウントのみ付与。 
  • 事業所内でのアクセス権限は、採用責任者として登録された1名に限定。 
  • 多要素認証(個人メールへの確認コードの送付)を採用責任者に紐づける。 
  • 採用責任者はアカウント付与時に不正利用しないための誓約を確認。 
  • データベース利用時には使用記録を付けて保管する。 
  • 不審な操作が確認された場合は、データベースの一時使用停止やこども家庭庁による事情聴取が行われる。 
ここまで聞くと管理の厳重さに驚いてしまうかもしれませんが、このシステムにアクセスできるのは少なくとも園長以上の責任者です。 

具体的には、 
  • 公立の施設や事業所の施設長 
  • 市区町村採用責任者(人事担当課長等) 
  • 私立の施設や事業所の施設長 
  • 法人の長 
などとなっています。一般の保育士が扱うことはまずありません。 社会福祉法人や企業が運営している園などでは、本部が一括して管理することも多いようです。

参考:こども家庭庁(保育士特定登録取消者管理システム説明資料P12・P18)>>詳細はこちら 

保育士ができることは何か 

ここまで「保育士特定登録取消者管理システム」についてご紹介しましたが、現場にいる保育士は何をしたらいいのでしょうか。 

まずは「保育士でも子どもにわいせつを行う人がいる」という認識を持つとともに、不自然な行動を見かけたら周囲に相談するなど声を挙げることです。 保育士には虐待行為を発見した際に通報義務もありますので、恐れず勇気を出して行動することが必要です。

参考)こども家庭庁(保育所等の職員による虐待に関する通報義務等について) >>詳しくはこちら 

社会全体で子どもを守っていこう 

子どもの育ちのために働く保育士が、子どもに性的虐待を行う事件が残念ながら増えています。決して許されることではありません。「保育士特定登録取消者管理システム」の運用を注視しつつ、目の前にいる子どもたちを現場の保育士がしっかりと守っていけることを願うばかりです。 

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織部 悟

この記事を書いた人

織部 悟

保育士歴16年のライター。都内の公立保育園に15年勤務して主任を務め、0歳~5歳児のクラス担任からフリーまで、全てのポジションを経験。1男1女の父でもあり、保育・子ども・遊び・子育てなど、豊富な経験を元にした記事をお届けします。

執筆歴・経歴等はこちら
https://gonta-web.com/

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