子どもの「困りごと」の背景を理解して支援する

発達支援においては、子どもを変えようとするのではなく、環境を子どもの特性に合わせて設定し、支援することも大切です。子どもの行動から「何がその子にとって障害となっているのか」を考えることで、必要な支援が見えてくるのではないでしょうか。
今回は、「発達支援」に関するセミナーや記事をまとめてご紹介。さまざまな事例を挙げて解説していますので、保育のヒントとしてぜひ参考にしてみてください。
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インクルーシブ保育を考える(汐見稔幸先生)
セミナー内容(全1回)トピック①インクルーシブ保育とは
トピック②多様な関係性のなかで育つ
登壇者は、保育分野の第一人者である、東京大学名誉教授の汐見稔幸先生。
2022年9月、国連の障害者権利委員会は、日本に対して「障がい児を分離した特別支援教育の中止」を求める勧告(総括初見)を発表しました。現在世界で広がりを見せている「インクルーシブ教育」に逆行するものだという指摘があり、変革の流れが保育の現場にも求められています。
参考:日本の第1回政府報告に関する総括所見(和訳)|外務省
しかし、「インクルーシブな保育とは?」「保育者としての役割は?」といった疑問や、日本の教育・保育がどう変化していくのか、不安を感じている保育者の方も多いのではないでしょうか。
このセミナーでは、長年にわたり保育業界の変遷を見てきた汐見先生だからこそ見える、「インクルーシブ保育」が広がった経緯と、これからの保育現場に求められることについて詳しく解説しています。

多様な子どもたちの発達支援(藤原里美先生)
セミナー内容(全5回)①発達支援のマインドセット
②感覚の支援と環境の整え方
③記憶の支援とエンパワメントの使い方
④切り替えの支援と子どもとの関係づくり
⑤社会性の支援と遊び
藤原里美先生は、一般社団法人「チャイルドフッド・ラボ」の代表理事として活動されています。臨床発達心理士・保育士の資格を持ち、数多くの研修や講演へ登壇されると共に、YouTubeチャンネル「藤原里美の発達支援ルーム」では、発達支援や子育てに役立つ情報を発信しています。
今回のセミナーでは「多様な子どもたちの発達支援」をテーマに、障害や生きにくさを感じている子どものサポートについて、全5回でご紹介しています。
「子どもを変えるのではなく、社会を変える」という視点から、保育園で実践できる支援方法について具体的に解説しています。
この動画では、じっと座れない子が座れるようになる魔法のクッションや、多動が落ち着くリュック、気持ちの切り替えを行うための安心ボックスなど、子どもの気持ちに寄り添う支援グッズを写真と共に紹介しています。「あの子にこの方法を試してみようかな」と、明日の保育が楽しみになるセミナーです。

困っている子どもの理解と支援(伊丹昌一先生)
セミナー内容(全6回)①ASD(自閉スペクトラム症)特性のある子どもの特徴と支援
②DLD(発達性学習症)特性のある子どもの特徴と支援
③ADHD(注意欠如・多動症)特性のある子どもの特徴と支援
④DCD(発達性協調運動症)特性のある子どもの特徴と支援
⑤愛着障害のある子どもの特徴
⑥愛着障害のある子どもの支援
梅花女子大学心理こども学部で教授を務める、伊丹昌一先生が登壇。未来の保育者育成とあわせて、現場で実践している職員に向けて講演会や相談会などを通して支援を行っています。
このセミナーでは「困っている子どもの理解と支援」をテーマに、特性ごとの特徴と保育者の支援の在り方について、全6回でご紹介しています。
「障害とは、その子の特性によって日常生活に困難さが生じている状態」という視点から、子どもが園で集団生活を送るにあたって、安心して快適に過ごせるようにするための環境の作り方や保育者の役割を、事例を挙げながら解説します。
発達障害であっても、適切な支援を行うことで意欲を持って集団生活を送ることができます。一人ひとりに合った支援を模索する上で知っておきたいそれぞれの特徴や、保育者が支援を行う上で大切にしたい考え方が学べる内容となっています。

発達障害のある子どもとの関わり方(原哲也先生)
セミナー内容(全6回)①基礎編1〜発達障害とは?〜
②基礎編2〜発達障害の子どもの感じている世界~
③基礎編3〜「安心」と「わかる」を保障するポイント〜
④お悩みアドバイス編1「場面の切り替えが上手くできない子」への対応
⑤お悩みアドバイス編2「注目行動・試し行動が多い子」への対応
⑥お悩みアドバイス編3「3文字以上の言葉が喋れない子」への対応
言語聴覚士・社会福祉士として活動し、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPANの代表理事を務める原哲也先生が登壇。長野県にて児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」の代表を勤めると共に、「発達障害児の家族を幸せにする」を志に全国で講演を行っています。
このセミナーでは「発達障害のある子どもとの関わり方」をテーマに、発達支援について全6回でご紹介しています。「発達障害とは、その子らしさが出にくくなっている状態」と捉え、子どもが生き生きと集団生活を送るためのポイントを解説しています。
前半では、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)など、発達障害の基礎的な知識を学ぶことができます。後半では、「注目行動・試し行動が多い子」や「3文字以上の言葉が喋れない子」への対応など、具体的な事例を通して保育者の支援の在り方を考える内容となっています。

子ども理解からはじめる感覚統合遊び(高畑脩平先生)
セミナー内容(全10回)①感覚統合のトラブルとは?
②感覚の過敏・鈍感
③感覚と脳(低反応・感覚探求)
④感覚と脳(感覚過敏・感覚回避)
⑤感覚の識別・フィルタリングの問題
⑥姿勢の問題(ぐにゃぐにゃタイプ)
⑦ボディイメージの問題(ギコチナイタイプ)
⑧微細運動の問題(手先ブキッチョタイプ)
⑨両手の協調動作の問題(両手ブキッチョタイプ)
⑩眼球運動の問題(どこいったタイプ)
「感覚統合」とは、音や振動、においや痛みといった、さまざまな感覚を整理するための脳の機能。アメリカの作業療法士、 A・ジーン・エアーズ博士によって生み出された理論で、脳に入力された感覚が適切に整理されることで、運動や製作といった活動にも楽しく取り組むことができます。
しかし、感覚に過敏さ、鈍感さのある子どもの場合、刺激を強く感じてストレスを感じたり、刺激を受けとりにくく、脳が活発に働かずにボーっとしてしまったりするケースがあります。保育の活動では、その子の感覚タイプを理解し、楽しく活動に参加できるよう感覚の入力を調整していくことが大切です。
講師は、藍野大学医療保健学部で講師を務める高畑脩平先生。セミナー本編では、感覚統合遊びについて、脳の機能から見た行動の背景と、感覚のタイプにあわせた支援方法を解説。作業療法士による発達への理解と、保育者が持つ遊びのアイデアによって生まれる支援についてお話しいただきました。

ことばの発達(寺島理映子先生)
セミナー内容(全4回)①ことばの発達段階
②ことばの遅れ
③ことばを育てる関わり方
④保護者からよくある質問
ことばの発達は、乳幼児期における大人からの声かけや、視線やふれあいといったコミュニケーションによって徐々に育まれていきます。また、ことばを発せるようになるまでには、ことばに触れる機会を多く持つことで「伝えたい」という気持ちを育むことも大切です。
しかし、なかにはことばの遅れが気になる子がいたり、保護者から「なかなかことばを話してくれない」といった相談を受けたりする場合もあるのではないでしょうか。
そうした場合には、その子の行動を観察し、ゆっくりと発達しているのか、発達に何らかの要因となる背景があるのかをきちんと理解することが重要です。支援が必要な場合には、保育者が保護者とも連携して、その家庭にとって最適な支援先へとつなげていくことで、次のステップへと進んでいくことができます。
講師は、「認定NPO法人 発達わんぱく会」で言語聴覚士として個別療育を実施し、療育者・保育者向けの研修講師も務める寺島理映子先生。セミナー本編では、ことばの発達について、ことばを発するようになるまでの発達段階や、ことばの遅れが気になる子の支援のつなげ方について解説。保護者と連携して支援を行うための保育者の役割についてもお話しいただきました。

社会性の発達支援(井上綾乃先生)
セミナー内容(全5回)①子どもの社会性の理解
②社会性を育む保育者の役割
③社会性発達の道筋
④支援のポイント
⑤具体的な支援方法
ほいくisでもコラムを連載中の井上綾乃先生によるセミナー。合同会社シャインキッズの代表を務めており、児童発達支援管理責任者(保育士)として療育の現場で活動されています。子どもが「楽しい」と感じられる療育プログラムを実践すると共に、保育園の巡回相談や人材育成なども行っています。
このセミナーでは「社会性の発達支援」をテーマに、子どもに合わせた保育環境の作り方を全5回でご紹介しています。
子どもの社会性の芽生えから段階的な遊びを経た社会性の発達まで、人との関わりに焦点を当てながら、子どもにも保育者にもストレスのない保育を行うための方法を解説しています。
保育園・幼稚園は人と関わる場であると同時に、社会性が育まれる場でもあります。今回の動画では、社会性の発達について学びながら、子どもに無理のない支援方法を学ぶことができます。おもちゃの共有が難しい子や待つことができない子への対応など、具体的な支援方法が学べる内容となっています。

困っている子をとりまく保育環境(伊丹昌一先生)
セミナー内容(全3回)①発達を促す環境づくり
②ほかの子どもとの関わり
③他職種・関係機関との連携
伊丹先生によるセミナー第2弾。今回は「困っている子をとりまく保育環境」をテーマに、物的環境と人的環境の整え方を、全3回でご紹介しています。
園で過ごす子ども全員を対象とした「保育のユニバーサルデザイン化」の視点で、発達障害のある子どもへの支援を解説します。
支援が必要な子どもへの働きかけによって、周囲にいる他の子も協力しあう関係性が生まれていきます。この動画では、保育園で子どもが主体的に行動できる環境や、子どもたち同士が共に育ち合える環境を作るための保育者の言葉かけについて学ぶことができます。保育の現場から視野を広げて、他職種・他機関との連携についても考えるきっかけにもなるでしょう。

発達が気になる子をもつ保護者への支援(井上綾乃先生)
セミナー内容(全5回)①多様な発達を受容するということ
②「保護者に伝えたい、保護者を変えたい」と感じるのはなぜ?
③マインドチェンジで併走モード
④心の扉を開く、保護者への伝え方
⑤専門機関へのつなぎ役としての保育者
発達支援における保育者の悩みとして、「保護者がなかなか受容してくれない」「どう伝えたらいいかわからない」といった声が聞かれることがあります。園での生活で日々子どもを見ている保育者にとっては、「保護者にも協力してほしい」と考えることも多いのではないでしょうか。
しかし、園と家庭での生活は異なり、理想の子育てとの違いも感じている保護者にとって、障がいの受容は時間がかかることも少なくありません。保育者として、保護者の思いも汲み取って、必要な支援に向けて併走していくことが大切になります。セミナーでは、保育者のマインドチェンジや伝え方のコツ、つなぎ役としての保育者の役割について解説しています。

保護者に寄り添う保護者支援(原田まどか先生)
セミナー内容(全4回)①保育者の役割
②保護者からの相談
③気になる子をもつ保護者への伝え方
④気になる子の支援先とつなげ方
保育者として、子どもとの関わりとあわせて大切なのが、保護者との関わり。「うちの子は大丈夫?」「周りの子とどこか違うのでは」といった相談を受けたことがある方もいるのではないでしょうか。
保護者にとっては、大切な自分の子どもだからこそ、さまざまな不安や心配が生まれてきます。その気持ちを相談してくれたことは、保育者に信頼を寄せてくれているからでもあります。保育者として、保護者の気持ちに寄り添いながら、一緒に子どもを見守っていくことが大切です。
講師は、認定NPO法人「発達わんぱく会」で公認心理士として保護者からの相談支援に取り組んでいる、原田まどか先生。セミナー本編では、保護者支援について、保育者の役割や保護者からの相談への対応方法、適切な支援へのつなげ方について解説。悩みを抱える保護者に対して、気持ちに寄り添った関わり方のポイントについてもお話しいただきました。

困っている子どもの指導計画(伊丹昌一先生)
セミナー内容(全7回)①全体の計画・個別の計画
②指導計画作成の留意点
③指導目標の決定
④指導の手立て
⑤結果への対応
⑥事前の環境の調整
⑦適切な援助と記録・評価
伊丹先生によるセミナー第3弾。困っている子の支援にあたり、どのように指導計画を立てるのかについて、手順を追って解説しています。クラス全体での計画と、子ども一人ひとりに向けた計画の違いや、「できた」「できない」ではなく、取り組みのなかで見られた子どもの姿から計画を振り返るまでの手順を説明しています。

ケース別|一人ひとりにあわせた支援方法を解説
発達支援について、「どんな時はどうしたらいい?」といった事例ごとの対応方法や、発達を促す活動アイデアをまとめて紹介します。行動別の支援方法
児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上綾乃先生が、現場の保育士さんから多く寄せられるお悩みに回答しています。-
待つことができない子には少しの工夫で「待たせなくてもよい」保育を|発達支援の現場から
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発達を促す遊び
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園で生活する子どもの中には集団で行動することが苦手な子もいます。そんな子どもたちが集団生活を送るときのサポートとして利用できる絵カードを無料配布しています。子どもの行動をよく見るところから始めよう
今回は、発達支援に活用できる内容をまとめてご紹介しました。子どもの発達理解や支援のヒントがたくさん紹介されていますので、参考にしてみてくださいね。【関連記事】