植物がテーマの絵本
保育現場ではとても身近な自然物、花や草や葉っぱに木の実。それらをテーマにした絵本はとても多岐にわたっています。図鑑のような絵本もあれば、植物の生態に焦点を当てた絵本、物語の絵本、植物をモチーフにした絵本。今回はそのさまざまな種類を知って、手に取っていただきたいと絵本専門士である筆者が比較的新しい絵本も入れ選びました。植物あそび
植物あそび (福音館の科学シリーズ)作・絵 ながた はるみ
出版社 福音館書店
読んでもらうなら3歳ごろから・自分で読むなら小学2年生頃から
保育者・保護者におすすめ
「植える」、「育てる」、「食べる」、「遊ぶ」と植物をテーマにさまざまな遊びが紹介されています。大人たちが公園で見かける草花の名前を知っていたり、遊び方を知っていたりすることで、子どもたちの興味につながるような保育のヒントがたくさん掲載されています。とても繊細で丁寧な植物の絵に「公園で見たことある」と子どもたちの声が聞こえてきそうな絵本です。さまざまな遊びを紹介している絵本なので、図鑑的な要素も強いかもしれません。大きい組の子どもたちなら、手に取れる場所に置き、子どもたちから「せんせいこれやりたい」との声を待つのもいいかもしれません。
どのはな いちばん すきな はな
どのはな いちばん すきな はな? (0.1.2.えほん)作 いしげ まりこ
絵 わきさか かつじ
出版社 福音館書店
読んでもらうなら0歳から 自分で読むなら 字が読めるようになってから(4歳ごろから)
あかちゃんといっしょに
「ぱーっとひらいた」や「びゅーんとのびた」などオノマトペが楽しい赤ちゃんから楽しめる絵本。色々な種類のお花が出てきますがお花の名前は書かれていません。花壇やお散歩で見かけたお花を子どもと楽しんでみるのはいかがですか?絵本いっぱいの大きなお花と鮮やかな色彩。お膝に座った小さな子どもたちとは「綺麗だね」「タンポポかな?」と語りかけがしやすい構成です。読み聞かせの場面では子どもたちの声を拾いながらお花の名前を考えてもいいですね。とてもシンプルな絵は「お花が描きたい」という子どもたちの心もくすぐる、そんな一冊です。
まねっこカメレオン
まねっこカメレオン作 リト@葉っぱ切り絵
出版社 講談社
読んでもらうなら2歳ごろから 自分で読むなら 字が読めるようになってから(5歳ごろから)
素材を楽しむ葉っぱの絵本
変身が得意なカメレオンは「今日はお出かけすることにしよう」とお出かけすることにしました。そこで色々な虫や動物に出会い変身! 「次に出会ったのは・・・」カメレオンは何に変身するでしょうか?葉っぱの切り絵のこの絵本は、SNSで毎日様々なモチーフにした切り絵を配信していた作者から生まれました。葉っぱの色の美しさと背景の空や草などに浮かび出るカメレオンと仲間たち。葉っぱとは思えないくらい美しい切り絵です。お散歩に行った公園で拾った葉っぱの形や色に興味や関心を向けるきっかけになるかもしれませんね。
ちいさな木
ちいさな木作 角野 栄子
絵 佐竹 美保
出版社 偕成社
読んでもらうなら3歳ごろから 自分で読むなら 字が読めるようになってから(5歳ごろから)
魔女の宅急便のコンビが送る冒険物語
ちいさな木は同じところにずっと生えていてちいさいまま。家出をしてきた犬のゴッチが「好きなところに行くんだ」というのを聞いて、行ってみたくなります。「動けない」というちいさな木。「やってみなくちゃわからないよ」とゴッチ。ここから冒険が始まります。さぁどんな冒険になるのでしょう?植物の絵本は植物の様子や生態系のような絵本が多く、主人公になるような物語はとても少ないような気がします。しかしこの「ちいさな木」は犬のゴッチとともに立派な主人公。その冒険の様子を名作「魔女の宅急便」の作者と絵を描いた画家がユーモラスに描いています。しかし、文章をじっくり読むと大人の私たちの心に響くフレーズがたくさん。「やってみなきゃわからない」というメッセージが今必要なのは大人の私たちなのかもしれません。そのメッセージをぜひ子どもたちにも!
ちいさいタネ
ちいさいタネ作 エリック・カール
訳 ゆあさ ふみえ
出版社 偕成社
読んでもらうなら4歳ごろから 読むなら小学校低学年から
現代アートを楽しみながら
秋になって花の種は空に飛び立ちました。仲間たちと旅立った種はどこに行くのでしょうか?野を越え、山を越え、海を超えていく種。どこまで行くの?そしてその種はどうなるの?秋から始まり一年旅した種のお話。誰もが知っている「はらぺこあおむし」のエリック・カールが送る、たねのお話。保育の中で遊びとしてスパッタリング(絵の具を飛ばす)やスクラッチ(引っ掻く)合わせ絵などやったことがあるかもしれません。その技法が絵の中にたくさん出てきます。その絵を楽しむだけでも見応えのある絵本ですが、種がとぶ、そこで育ち花がさくという植物の不思議も感じることができます。絵の具遊びの導入にもなりそうです。
ねっこぼっこ/根っこのこどもたち目をさます
ねっこぼっこ作・絵 ジュビレ・フォン・オルファース
訳 秦 理絵子
出版社 平凡社
読んでもらうなら 3歳ごろから ・自分で読むなら 字が読めるようになってから(5歳ごろ) 根っこのこどもたち目をさます
作 ヘレン・ディーン・フィッシュ
絵 ジュビレ・フォン・オルファース
訳・編 いしいももこ
出版社 童話館出版
読んでもらうなら 5歳ごろから 自分で読むなら 小学生中学年ごろから
絵は同じだけど文の違いを楽しむ
地面の下の根っこたちは春が来る前に準備で大忙し。春をみんなが待っています。春の野原、水辺の様子、そして秋になると根っこの子どもたちは土の中に帰って行きます。根っこを擬人化してわかりやすく、一年を通した植物や生き物たちの物語。この絵本の絵を描いているジュビレが文も書いている「ねっこぼっこ」は詩のようなリズムと短い文章でお話が進んでいきます。一方「根っこのこどもたち目をさます」の文章はヘレン・ディーン・フィッシュが物語を書きました。根っこを擬人化しているところは同じでも文章が違うと受ける印象も違います。幼児には「ねっこぼっこ」の方がわかりやすいかもしれませんが、同じ絵に違う文章で出版されている絵本があるということを知っていただきたいと選びました。
絵本を通じて植物のことを知ろう
自然の中でこどもたちは「不思議だな」「なんでだろう」に出会います。子どもたちと自然の出会いに絵本を活用してするというのも絵本の楽しみ方だと感じますし、私たち大人がこのような絵本を手に取り自然を身近に感じていただくきっかけになったら嬉しいです。【関連記事】