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保育の『ポートフォリオ』を解説|目的・作り方・活用法

写真の画角を決めるポーズをしている保育士
最近、保育現場でも耳にすることが増えた「ポートフォリオ」。子ども一人ひとりの成長を可視化し、保育の質を高めるツールとして注目されています。今回は、保育園におけるポートフォリオの目的や活用法について紹介します。

ポートフォリオとは

コルクボードにピン止めされた「Portjolio」と書かれた付箋
最初に、ポートフォリオについて見ていきましょう。

一般的なポートフォリオの意味

もともと「ポートフォリオ」という言葉は、イタリア語の「Portafoglio​​(ポルタフォリオ)」が語源で、「紙ばさみ」や「書類入れ」という意味があります。現在では、ビジネス用語としても使われていて、例えば、アーティストやクリエイターが自分の実績を紹介するためにまとめる「作品集」をポートフォリオと呼んだりしています。

保育におけるポートフォリオ

砂遊びをしている男の子
保育におけるポートフォリオは、子どもの姿や成長を記録したものを指します。写真にコメントを添える形でまとめることで、子どもの発達過程を可視化することができます。

保育記録としてポートフォリオを作成しておくことで、保護者や他の保育士と子どもの姿を共有したり、成長を振り返ったりすることが可能になるため、保育の質を高めるツールとして注目を集めています。

ポートフォリオを作成するためには、子どもの姿をよく観察することが必要です。ただ見るだけではなく、深い考察も必要となってくるため、保育士としての洞察力を高めることにも繋がります。

記録の手法の違い

ポートフォリオに似た保育記録として、「ドキュメンテーション」があります。ポートフォリオは子ども一人ひとりのあるがままの姿に焦点を当てて、客観的に記録を行います。それに対してドキュメンテーションは、活動を通じた子どもたちの姿に視点を置き、保育士の気付きも加えながら記録します。

また、ポートフォリオに挟む記録には「エピソード記録」という手法を用いることがあります。保育の一場面を切り取って、子どもの姿や心情をエピソード(短いお話)で書きます。エピソード記録は後から読み返した時に、子どもの心の動きが生き生きと伝わってくる手法です。

ポートフォリオを導入するメリット

続いて、保育にポートフォリオを導入するメリットについて見ていきましょう。

子どもの成長を可視化する

スナップ写真のイメージイラスト
子どもの心と身体は日々成長していますが、人の記憶だけではその様子を留めておくことは難しいですよね。子どもの姿を写真や文章で記録しておくことにより、子どもの成長を可視化することができます。

保育の質を向上させる

ポートフォリオの記録を、保育の振り返りに活用することで、子どもの姿や自身の保育を客観的に見直すことができます。

子どもの発達を促すために必要な支援を改めて考える機会となり、保育の質の向上へと繋がっていきます。

保護者と子どもの成長を共有する

子どもを抱いている保護者と会話をする保育士
普段の保護者対応や個人面談の際にポートフォリオを活用すれば、子どもの成長を分かりやすく伝えることができます。子どもをよく見ていることが保護者に伝わり、信頼関係の構築にも役立つことが期待できるでしょう。

ポートフォリオ作成のポイント

ポートフォリオを作成する際に意識したいポイントを3つ紹介します。

子どもの成長を記録する

遊具で遊んでいる女の子
ポートフォリオを作成する時には、子どもの成長をさまざまな視点から記録しましょう。

例えば、次のような場面が挙げられます。
  • 基本的な生活習慣の獲得
  • 個性や興味関心
  • 学びや挑戦
  • 友だちとの関わり
  • 心情や思考
できるようになったことだけでなく、内面的な育ちや成長の過程にも注目して記録していきましょう。

子どもの姿を具体的に書く

文章で記録をする際には、事実を客観的に書くことが大切です。「楽しそうだった」「成長を感じた」など、保育士の主観的な思いや個人的な感情は省きます。

子どもの行動や発言を具体的に書けば、より生き生きとした情景を伝えることができるでしょう。

【記入例】
  • 今週はずっと逆上がりに挑戦していたAくん。今日は初めて成功し、「お腹に力を入れたら、できたよ!」と笑顔を見せていた。
  • いつもは保育士に手伝ってもらいながら靴下を履いていたBちゃん。今日は保育士の手伝いを断り、10分程かけて自分で履くことができた。

定期的に記録する

「定期的」と書かれた積み木
ポートフォリオは、定期的に更新を行っていくことで子どもの成長が分かるようになります。頻度は子どもの人数や園の方針によって異なりますが、月1回程度は記録を行っていきたいですね。

1回の作成に凝り過ぎると、継続することが難しくなります。シンプルな構成で、「子どもの成長を伝える」という本来の目的を達成しましょう。

ポートフォリオ作成の注意点

次に、ポートフォリオを作る際の注意点について3つ紹介します。

ポジティブな視点で記録する

木で作られたカメラのおもちゃ
ポートフォリオは、子ども本人や保護者など、さまざまな人が閲覧する記録です。見た時に、子どもの成長を喜び合えるよう、ポジティブな視点で記録を残しましょう。

子どもが挫けたり、落ち込んだりしている姿は一見ネガティブに感じられますが、挑戦の過程として捉えておきたい姿ですね。

個人情報の取り扱いに気を付ける

忘れてはいけないのは、ポートフォリオは子どもの個人情報という点。誰でも閲覧を可能にする場合は、保護者の許可をとる必要があります。

特に着替えや排泄の場面には気を付けなくてはいけません。子どものプライバシーを守れるような写真の撮り方にも配慮が必要ですね。

写真を撮ることに気を取られ過ぎない

ポートフォリオに使う写真の撮影に気を取られて、保育が手薄になっては本末転倒です。「たくさん撮っておいて、後で選別しよう」と思っても、使わない写真が大量にあっては時間ばかりが取られてしまいます。

撮影する時は、子どものどんな姿を撮りたいのかをあらかじめ決めておき、適度な撮影頻度に留めておきたいですね。

ポートフォリオの活用法

小さな黒板の上に置かれたスナップ写真
最後に、ポートフォリオの活用法について3つ紹介します。

子どもと一緒に振り返る

ポートフォリオを子どもが閲覧することで、自分や友だちの成長を振り返ることができます。身体が大きくなったことや、できることが増えたという事実は、子どもの自尊心を育んでくれます。

可能であれば、絵本と同じように、いつでも手に取れる場所に置いておくと良いでしょう。

子どもへの理解を深める

保育士同士でポートフォリオを見合うことで、子どもの育ちを共有することができます。記録をもとに、子どもに合った支援や保育のあり方を考える手立てにもなりますね。

職員会議や園内研修などで、事例としてピックアップする時にも役立つでしょう。

保護者と子どもの成長を共有する

マスキングテープで貼られた3枚のスナップ写真
ポートフォリオは、子どもの成長を保護者と共有する際にも活用できます。園での子どもの姿は、口頭での会話だけだと伝わりづらいかもしれません。定期的に更新されたポートフォリオを見返すことで、子どもの発達についても話しやすくなります。

保護者との共有の仕方は園によって異なりますが、いつでも閲覧できる場所に置いておく場合もあれば、必要に応じて出し入れして使用する場合もあります。

子どもの育ちを記録しよう

ポートフォリオは、子ども一人ひとりの成長を可視化した記録です。作成を通して、保育士としての観察力や洞察力が向上していくことも期待できるでしょう。記録を活用して、保育の質も高めていきたいですね。

ポートフォリオの導入を検討している方は参考にしてみてくださいね。

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佐野 きこ(さの きこ)

この記事を書いた人

佐野 きこ(さの きこ)

現役保育士。
現在は子どもだけでなく、保育士や保護者など、子どもに関わる人をサポートする仕事がメイン。子どもも保護者も保育士も、みんなが笑顔になれる保育を目指している。
座右の銘は「保育士は、保育のプロである」
保育の専門家として、わかりやすく保育を語れるよう奮闘中。
家庭では、2人の息子のお母さん。

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