加配保育士とは
加配保育士とは、障害の診断がある子どもや、発達障害などで支援を必要とする子どもをサポートする保育士のことです。各自治体で基準やルールは異なりますが、クラス担任にプラスして保育士配置が行われるため、特定の子どもに寄り添った支援をしていくことが可能になります。加配保育士になるために特別な資格を取得する必要はありません。クラス担任と同様に、園の采配で決まるため、保育士資格を持っていれば、加配保育士の役割を担う可能性があると言えるでしょう。
障がい児保育の現状
厚生労働省が2023年(令和5年)に公表した「厚生労働省の取組について」によると、2021年(令和3年)の障がい児受入保育所数は21,143カ所、受け入れをしている障がい児数は86,407人となっています。また、2022年(令和4年)4月1日時点での障がい児保育担当職員数は46,720人(常勤25,605人、非常勤21,115人)で、多くの人が障がい児保育の役割を担っていることが分かります。
受入保育所数・障がい児数ともに年々増加の傾向にあるため、加配保育士の需要も増してくることが予想できます。
出典:厚生労働省の取組について/厚生労働省(令和5年3月16日)>>詳細はこちら
加配保育士の配置基準
加配保育士に関しては、国による配置基準は設けられておらず、自治体によって対応が異なります。みずほ情報総研株式会社が2017年(平成29年)に公表した「保育所における障害児保育に関する研究報告書」によると、各市区町村における「障害児保育に係る加配職員の配置基準」の状況に関して次のようなデータが出ています。
【加配保育士の配置基準の有無】
障害の程度を問わず基準が一律 | 28.0% |
障害の程度により基準が異なる | 22.4% |
具体的な基準はない | 42.5% |
さらに、「障害の程度を問わず基準が一律」としている市区町村においても、配置基準の内容には次のような違いが見られました。
【加配保育士の配置基準】
概ね障害児1人あたり保育士1人 | 34.3% |
概ね障害児3人あたり保育士1人 | 23.0% |
概ね障害児2人あたり保育士1人 | 19.7% |
これらの結果から、加配保育士の配置に関する考え方は各市区町村によって大きく異なっていることが分かります。
出典:保育所における障害児保育に関する研究報告書(平成29年3月)/みずほ情報総研株式会社 >>詳細はこちら
加配保育士の役割・仕事内容
ここからは、加配保育士が園で担っている役割と仕事内容を見ていきましょう。子どもの生活支援・見守り
加配保育士は主に、担当している子どもの生活支援を行います。排せつや着替えなど、一人で行うことが難しい部分を手伝ったり、集団での行動が困難な場合に個別対応を行ったりします。
直接的な支援だけでなく、子どもの気持ちに寄り添ったり、他児との関わりを広げていったりすることも大切な役割と言えます。
療育機関との連携
保育園と並行して、療育機関に通っている子どももいます。その場合は、療育機関のスタッフとの連携も大切な役割となります。情報を共有することで子どもに対する理解を深め、より良い支援に繋げていくことが可能になります。個別カリキュラムの作成
0~2歳児の指導案には、クラス全体のものと個別のものがありますよね。これと同様に、支援が必要な子どもに対しても個別カリキュラムが必要です。一人ひとりに合ったねらいを設け、子どもに合ったペースで発達を支援していくことが大切です。
保護者との連携
子どもの発達や、親としての関わり方などに不安を抱えている保護者も少なくありません。そんな保護者の気持ちに寄り添い、支えていくことも重要な役割のひとつです。子どもの成長を一緒に見守りながら、コミュニケーションを密にとっていくことが求められます。
加配保育士の悩み
一般の保育士と役割や仕事内容が異なる加配保育士は、特有の悩みを抱えることも。次のようなものが挙げられます。- 子どもと信頼関係を築くまでに時間がかかる
- 子どもに合った支援の方法が分からない
- 支援の成果が見えにくい
- クラス担任との連携が難しい
- 保護者との関係構築が難しい
悩むのは、子どもとまっすぐに向き合っている証拠です。「この子は自分が担当しているのだから」と気負い過ぎず、悩んだ時は先輩や同僚などに相談しましょう。また、前年度までに担当していた先生や加配保育士を経験したことがある先生がいるときは、相談にのってもらうのもおすすめです。
クラス担任や療育機関、保護者などさまざまな人と連携を図りながら、みんなで子どもの成長を見守っていきたいですね。
加配保育士に求められるスキル
ここからは、加配保育士が身に付けておきたいスキルを見ていきましょう。障害に関する知識
担当する子どもの障害に関する知識は必須です。子どもの行動にどのような特性があるのか知っておきましょう。言葉のかけ方や支援の方法など、基本的な情報は頭に入れておきたいですね。また、書籍やインターネットから得られる知識だけに頼るのではなく、目の前の子どもとしっかりと向き合うことが大切です。性格も特性も子どもによって異なるため、その子に合った支援の在り方を見付けていきたいですね。
観察する力
日頃から子ども自身と、子どもを取り巻く状況をよく観察しておきましょう。子どもの考え方や行動のパターンが掴めると、支援の必要なタイミングが分かるようになります。いつも側に寄り添うだけでなく、時には少し離れたところから子どもの様子を見守り、本当に必要な支援は何かを考えることが大切です。
子どもと向き合う気持ち
子どもと向き合い、少しずつ信頼関係を築いていきましょう。困っていることを支援するだけでなく、生活を一緒に楽しむことも大切です。「障害」の部分にこだわらず、一人の子どもとしての関わりを丁寧に積み重ねていくことで、その子に対する理解も深まっていきます。時間はかかるかもしれませんが、焦らずゆっくりと向き合っていきたいですね。
落ち着いた対応
困っているときや気持ちが昂っている時に、走り出したり泣き出したりする子もいます。そのような時には、子どもの気持ちに寄り添い、落ち着ける状況を作ることが大切です。保育者はどのような場面でも冷静に状況判断をし、適切な対応を行うよう心がけましょう。
多様性を尊重する雰囲気作り
障害のある子どもが集団の中で生き生きと過ごせる環境を作ることも、加配保育士として重要な役割となります。そのため、障がい児だけでなく、周囲にいる子どもたちにも働きかけることが大切です。クラスの担任保育士と連携を図りながら、子ども同士で多様性を尊重できる雰囲気を作っていきたいですね。
子どもの一番の理解者に
加配保育士は、サポートしている子どもの「一番の理解者」になり得る存在です。信頼関係を築きながら、子どもが安心して過ごせる環境を整えていきたいですね。加配保育士を任されている方は、参考にしてみてください。
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