エリック・カールの世界観の魅力とは
<作:エリック・カール/訳:工藤直子(くどうなおこ)/偕成社>赤や緑など、はっきりとした色で描かれたはらぺこなあおむし。皆さんも一度は見たことがありますよね。『はらぺこあおむし』は、エリック・カールさんの作品の中でも特に多くの方に愛され、長く親しまれてきた一冊です。
その他にも、娘に頼まれたパパが長い梯子で月に会いに行くユニークなお話の『パパ、お月さまとって!』や、さまざまな動物たちに合わせて身体を動かす『できるかな?あたまからつまさきまで』など、世界中でたくさんの人が手に取った作品が数多くあります。
エリック・カールさんが描く作品の最大の魅力は、見ただけで「エリック・カールさんの絵本だ!」と分かってしまうような鮮やかな色彩です。貼り絵の技法で描かれたイラストは、子どもにも分かりやすく目を惹きますね。
また動物が登場する作品が多いことも、魅力のひとつです。こおろぎやてんとうむしなどの小さな生き物が出てくることも多くありますが、この理由についてエリック・カールさんは「子どもの頃よく草原や林で小さな生き物の生態を教えてくれた後、注意深くもとの場所に戻していた父への敬意だと思う」と述べています。子どもたちにとっても動物や虫は身近で馴染みやすい題材ですが、生き物に対するカールさんの深い愛情が感じられる点が、より私たちの心を掴む理由なのではないかと思います。
そんな大人も子どもも夢中になるエリック・カールさんの作品の中から、今回は厳選した5冊をご紹介します。
エリック・カール作品のおすすめ5選
素敵な作品ばかりで選ぶことが難しいですが、特におすすめしたい5冊の魅力をまとめました。ね、ぼくのともだちになって!
作:エリック・カール出版社:偕成社
対象年齢:3歳、4歳~ [ね、ぼくのともだちになって! (偕成社・ボードブック) ボードブック]
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友だちを求めてでかけていく小さなねずみ。しっぽを見つけては「ね、ぼくのともだちになって!」さて、誰のしっぽなんでしょう?
実はこの作品は、過去に描いた作品の中でもエリック・カールさんが「一番好きだ」と答えている絵本なのです。ねずみが見つけるしっぽやおしりを見ながら、「これは誰?」「ライオン?」など、子どもたちとの掛け合いを楽しむことができます。
大切な友だちとの巡り合いや出会いを描いた温かい絵本です。お話の内容も、子どもたちが大好きなくり返しになっているので、ぜひ読み聞かせてみてください。
ホットケーキできあがり!
作:エリック・カール訳:アーサー・ビナード
出版社:偕成社
対象年齢:4歳~ [ホットケーキできあがり! ハードカバー]
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「でっかいホットケーキがたべたいなぁ」と思ったジャックですが、すぐには食べられません。小麦をかりとって、卵をとってきて、牛乳をしぼって…できあがるまでには、やることがたくさん待っています。
ホットケーキができるまでの様子を描いた作品です。しかし始まりが、すでにある材料で作るところからではないのがこの絵本の魅力。家にある材料も、その前には誰かが畑で育てたり、にわとりが産んだり…という過程があることを知ることができます。
少し文字が多く、ひとり読みするには難しいかもしれませんが、絵だけでもワクワクしてしまうのがエリック・カールさんの作品ならではですね。
やどかりのおひっこし
作・絵:エリック・カール訳:もりひさし
出版社:偕成社
対象年齢:4歳~ [やどかりのおひっこし ハードカバー]
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自分の貝殻につけたサンゴやヒトデたちと暮らしていたやどかりですが、少し窮屈になってきました。そこでやどかりは、みんなとお別れしておひっこしをすることに…
このお話は、エリック・カールさんが息子さんのために描いた絵本です。やどかりが自分に合った貝殻を見つけて棲む習性を題材にした、素敵なストーリーに仕上がっています。
1月、2月、3月…と月日が流れるのと共に、やどかりの姿もどんどん変わっていくところもおもしろいですよ。どんなふうに変わっていくのかは、ぜひ絵本を手に取ってみてくださいね。
たんじょうびのふしぎなてがみ
作・絵:エリック・カール訳:もりひさし
出版社:偕成社
対象年齢:5歳、6歳~ [たんじょうびの ふしぎなてがみ (エリック・カールの絵本) ]
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チムは誕生日に、ふしぎな手紙を見つけました。その手紙には、★や▲などが書かれています。これをたどっていくと…?
不思議な謎解き絵本に大人も子どももワクワクすること間違いなし! 「これはなに?」「こういうことかな?」と興味を持ち、頭を悩ませながら読み解いていくと、最後にたどりつくゴールは⁉ この1冊の中にはたくさんの楽しみが詰まっていて、つい夢中になってしまいます。
少し難しい絵本かもしれませんが、子どもたちへの読み聞かせだけでなく、大人のための絵本としてもおすすめしたい1冊です。
くまさん くまさん なに みてるの?
作:ビル・マーチン絵:エリック・カール
訳:偕成社編集部
出版社:偕成社
対象年齢:3歳、4歳~ [くまさん くまさん なに みてるの? (エリック・カールの絵本) ハードカバー]
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「くまさんくまさん ちゃいろいくまさん なにみてるの?」くまさんが見ている先にいるのは、赤いとり。次はとりに聞いてみます。「とりさんとりさん あかいとりさん なにみてるの?」
1993年(平成5年)に中央児童福祉審議会・特別推薦文化財を、1996年(平成8年)に日本子どもの本研究会選定図書を受賞しているロングセラー絵本です。1ページに大きく描かれたイラストが印象的。
くり返しで分かりやすいだけでなく、子どもと「なにみてるの?」と掛け合いをしながら楽しむこともできます。リズミカルでテンポ良く読み進められるので、低年齢児への読み聞かせにもおすすめです。
【番外編】はらぺこあおむしの本当の魅力
作:エリック・カール訳:もりひさし
出版社:偕成社
対象年齢:5歳、6歳~ [はらぺこあおむし ハードカバー – イラスト付き]
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最後に番外編としてご紹介するのは、言うまでもなく大人気の「はらぺこあおむし」。お腹を空かせたあおむしがいろいろな食べ物を食べて、どんどん大きくなっていき、最後には美しい蝶になる姿は圧巻ですよね。エリック・カールさんの美しい色彩と技法だからこその迫力があります。
「はらぺこあおむし」の魅力は、実はイラストや色彩だけではありません。お話の中には「りんごをひとつ」「なしをふたつ」「すももをみっつ」と、数字が出てきます。ひとつずつ増えていく食べ物に合わせて、自然に数に触れられるようになっているのです。
そして、たくさん食べたらさなぎになる様子や、最後にはきれいな蝶になる様子など、生き物の変化や成長、生命の営みについても自然に知ることができます。子どもたちに長く親しまれている理由は、1冊の絵本の中にたくさんの要素が込められているからこそなのかもしれません。
通常の絵本以外にも、持ち歩きできるミニサイズ版や飛び出すポップアップ版、自分で色を塗って自分だけのはらぺこあおむしができる塗り絵絵本など、さまざまなタイプが販売されています。ぜひ、改めてこの作品の魅力に触れてみてください。
エリック・カールの世界をこの先も!
エリック・カールさんの作品は、どれもメッセージが込められた素敵なものばかりです。子どもだけでなく大人も楽しめる世界観は、きっとこの先も長く愛され続けるでしょう。【ほかおすすめの記事はこちら】