所変われば絵本の読みあいは変わる
以前のコラムで【絵本は自然に読む】ことが一番子どもたちと絵本を楽しむことができると綴りました。絵本の読みあいは一度として同じことはありません。同じ絵本を読んでも、所変われば読みあいは変わるという出来事をいくつか紹介したいと思います。
①『はらぺこあおむし』
『はらぺこあおむし』作:エリック・カール
出版社:偕成社 1976年
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保育士ならだれでも知っているであろう『はらぺこあおむし』。この絵本を知らない保育士に会ったことがありません。絵本の魅力はまたいつか存分にお伝えします。
この絵本をどう読みますか? ゆったり読む人もいれば、歌って読む人もいると思います。俺は大型絵本とぬいぐるみを使って読む時もあります。
この本の中で蛹(さなぎ)になって眠るシーンがありますね。俺はその時、読むスピードがゆっくりになっていき、声のトーンも落ちていきます。演出としてそうしているわけではなく、オートマチックにそうなっているようです。指摘してもらったことがあります。
子どもがじっくりと絵本の世界に入り、お腹いっぱいになって大きくなった青虫が蛹になる姿を見守っている時は、俺もそのまま何日も眠ります。実際にゆっくり目を閉じて蝶々になるのを子どもと共に待つのです。その間の静寂がとても心地良い。
その一方で、歌ったり、歌うように言葉あそびも含めて土曜日の食べ物をつらつら~っといった時は子どもたちもウキウキ気分なのでそのまま、ふとっちょ→蛹→蝶々までをある程度リズム良く読み切ります。
②『ぼうしとったら』
『ぼうし とったら』作:tupera tupera
出版社:Gakken 2012年
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外遊びに出掛ける前、帽子を被りイスに座って絵本を読みました。
登場人物の被っている帽子を取ると、中からいろいろな物が出てきます。帽子を取るという単純な繰り返しですが、帽子を取る(めくる)仕掛けとユーモア溢れるキャラクターが楽しく、何度読んでも楽しい絵本です。
絵本を読んでいると、ひとりの子どもが自分の帽子を取り始めました。絵本の世界に自分も入っているのでしょうか。楽しそうだったので、絵本を読み終えた後「○○ちゃんの帽子取ったら~…ボサボサ~。」とみんなの帽子を取って遊ぶことに…。
次の日の連絡ノートにお母さんから「なんだかわからないけど私に帽子を被せて脱がせて喜ぶんです。」と書いてありました。俺は返事に絵本の読みあいの場面を詳しく伝えるとさらに次の日。「その絵本の読み聞かせ動画を再生したけども、いまいち喜びませんでした。」とのこと。
この子どもにとっては、絵本の世界を自分に置き換えて真似し、その後クラスの友だちや先生と帽子を取る遊びも全部ひっくるめて楽しんだのではないでしょうか。
子ども×絵本×保育士の掛け算で楽しむ
前回のコラムで【絵本は淡々と読む】と学生時代に教わったと書きましたが、この場合、極論を言えば動画や朗読CDを再生すれば事足ります。じっくりと絵本の世界、文学の世界に没頭したいときには有効でしょう。保育園での絵本の楽しみ方は、文学としても含めてもっともっと広い。いろんな楽しみ方があって良い。【絵本は自然と読む】と、子ども、絵本、保育士の数の掛け算で楽しみ方は無限大。
これからも保育×絵本のエピソードをお伝えしていきます。続編をお待ちください。
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