『ノージーのひらめき工房』のステキなところ
前回の「tupera tupera作品が保育現場で放つ魅力とは」では、代表作や俺のお気に入りの絵本を紹介しました。今回のコラムでは、より保育の視点に寄っていくことで、その魅力を深掘りしていきます。 tupera tupera氏は布雑貨アーティストとしてスタートした後、活動範囲をどんどん広げています。現在は絵本だけに留まらず、パッケージデザインや演劇など、多方面で楽しいことをやっておられます。その中でも、NHKのEテレの番組『ノージーのひらめき工房』のアートディレクションを務めていることに注目したいと思います。
>>ノージーのひらめき工房
この番組をご存知でない方も、「ノッポさん」「ワクワクさん」の後継番組といえば想像がつくのではないでしょうか?
ノージーの面白いところは、“ひらめきの素”を取り上げるという部分。以前の番組では、工作の仕方や作り方が中心でした。ノージーでは、視聴者の子どもたちが、工作に対する自分のアイデアや工夫のヒントをもらえるような内容にシフトしています。
この考え方ってステキではないでしょうか?
「大人の考えを子どもが模倣し、完璧に出来て100点」。もちろんそれも大切なことですが、子どもたちと一緒に作り上げていくことも大切です。なおかつ、そちらの方が絶対に面白い!!
子どもたちと一緒に作る楽しさ
そんなtupera tuperaの考え方が色濃く出ていると感じることが出来る絵本を紹介いたします。『かおノート』
tupera tupera
コクヨ株式会社/2008年 >>詳細はこちら
こちらは文房具メーカーのコクヨから出版されています。リングノートのそれぞれのページには、さまざまな顔の輪郭が描かれています。本のタイトルが『かおノート』でなければ、「これ顔なの?」と思ってしまうような輪郭も多々あります。
ノートの最後には目・鼻・口などの「かおパーツシール」がついていて、それを選んで自分の好きなように張り付けて顔を完成させます。購入しただけでは、まだ半分しか完成していません。tupera tuperaと、読者の協同作業によって完成となります。
これを実際に子どもと一緒に作っていきました。保育士が作ると、左右対称を意識したり、わざと少しずらしてみて、「おもしろいかな」と逆の思考をしたりします。しかし、「子どもは感性豊か」とはよく言ったものです。保育士の思考は軽く飛び越えて、愉快な顔が出来上がります。見比べてみてください。
こちらの写真は、保育士が作った顔たち。
どこかまとまった感じがあります。
一方、下の写真は子どもの作った顔。
大人が作った上の写真と違って、パーツは揃っているけど不揃いな配置は真似できません。 この本の面白いところは、一度貼ったシールは貼り直すことが出来ず、すべてが一発勝負!なところ。偶然が必然となり、絵本が完成します。この顔たちは一例で、シリーズで3巻出ています。何冊も買っては、その都度子どもたちと楽しんでいます。
「遊びを提供する」ではなく「遊びを作り上げる」
もう一つ、絵本ではないのですが、面白い商品があります。『CUBE SUGOROKU』
tupera tupera
コクヨ株式会社/2018年 >>詳細はこちら
こちらは、キューブ型の箱にすごろくのマスとなるカードがたくさん入っています。これらを、自分たちで好きなように組み合わせてコースを作ります。すごろくという偶然性の高い遊びに、さらに自由度を増す仕掛けで楽しさは無限大です。本来ならば入れ物の箱がサイコロになっているのですが、こちらは“マイサイコロ”で遊んでいる時の写真です。 子どもと一緒に作り上げていく楽しさを大切にすること。保育士や周りの大人が100%準備した遊びを提供することよりも、遊びのヒントや材料を基に子どもたちと一緒に作り上げていくこと。どちらも保育における大切な視点です。
tupera tupera作品には、これらの要素がたくさん散りばめられていて、保育現場で魅力を放つのです。
「読者と一緒に楽しむ」
「絵本は読んで完成」
こういった作風が、多くの保育現場で受け入れられ、読まれていく理由なのです。
次回予告
次回のコラムでは、「鳥取市男性保育士会じゃんぐる☆じむ」という団体が、tupera tupera亀山氏と一緒に開催したワークショップの内容などを中心に、魅力を更に更に深堀りしていきたいと思います。▼合わせて読みたい!おすすめ記事