「自然の中で保育をしたい?」
と聞かれると、大体の人はYESと答えるでしょう。
しかし、その「YES」の後に浮かんでくるのは「でも・・」という言葉ではないでしょうか。
- 自然は危ない。
- 怪我・事故が怖い。
- 人数が多くて安全が保てない。
安全であることが最優先の保育をしている場合は、自然の中での保育は少しチャレンジが必要かもしれません。
そのチャレンジとは、子どもたちの持っている“危険を回避する力”を信じてみるというチャレンジです。
子どもたちに必要なのは、安全を保つことだけではありません。
“危険を回避できる力”を育むためには、ドキドキ・ヒヤヒヤする体験も必要です。
ある4歳児の男の子Aくんが、初めて森遊びのプログラムに参加した時のことです。
いつも参加している5歳児たちは、森の中を走り回ることに慣れているので、道のない薮の中をかき分けて行きます。
Aくんは、自分もその子たちと同じように動くことができると思っていましたが、実際は足元がおぼつきません。
森の地形は、木の根が張っていたり、斜めの道があったり、急に下ったり・・と変化に富んでいるので、平地ばかりを歩いている子とっては、歩くこともひと苦労。
いつも森で遊んでいる子どもたちが、急な崖を走り降りるのについて行こうとしたAくん。それを見て、私はとっさに危険を感じて止めました。
Aくんもそこで少しハッとし、意識が変わり、ゆっくりと足元をよく見ながら進むようになりました。
子どもたちは、ヒヤッとする高い場所やグラグラする場所が大好きです。
それを体験することで、自分ができることの範囲を知ります。
いつも大人が守って、危険な体験をさせないということは、自分の能力を知らないで育つことに繋がります。
以前、自分がどれくらいの高さからジャンプしたら大丈夫かを知らずに、屋根から飛び降りて両腕を骨折した小学生がいました。
その子は小さな頃にあまり冒険的な遊びの体験がなかったと親御さんから聞きました。
“子どもの成長に必要なリスク”というものがあります。
危険と思われるものを何でも排除してしまうことだけがリスク回避ではないのかもしれません。
以前、私が園長をしていた園では、入園説明の時に親御さんに「擦り傷・切り傷は日常茶飯事です。それはお子さんにとって大切な体験の一つです」ということを必ず伝えていました。
保育のプロとしてそのことを話すと、ほとんどの保護者は納得し、賛同してくれます。
もちろん、大きな怪我や事故はさせないという覚悟はします。
みなさんが想像するよりも、自然の中での大きな怪我というものはありません。
かえって人工物での怪我の方が大きな怪我に繋がることがあります。
安全やルールでがんじがらめの保育は本当に子どもを守ることに繋がるのでしょうか。
ドキドキ・ヒヤヒヤの体験が、子どもたちの持っている危険を回避する力を育てるのです。
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