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工夫を楽しむ力?子どもに育んでほしい“レジリエンス”とは

野外で遊ぶ子どもたち
自然の中での保育を専門にしている野村直子さんによる、「子ども」と「自然」をテーマにした連載。今回は、近年よく使われるようになった“レジリエンス”という言葉について。いったいどういう意味で使うのでしょうか?

“レジリエンス”という言葉が数年前から出てきていますが、皆さんには馴染みはあるでしょうか?

“再起力”とか“心のしなやかさ”“折れない心”など、さまざまな言葉で表現されており、「逆境から立ち直る力」という意味合いが強いようです。

先日読んだ本には、“レジリエンス”は、フランス人の文化にある“ブリコラージュ”という、「今ある物でなんとかしてしまおう」という考えに似ているということが書かれていました(フランス人は物を大切にします)。この“なんとかする力”、必要な物が何でも手に入る便利な日本で育っている今の子どもたちの弱い部分かもしれません。

自然の中で遊んでいると、子どもたちの“なんとかしようとする姿”が度々見られます。




モグラの穴を見つけるとそれを掘りたくなる子どもたち。

先日も、2人の子どもがモコモコとした土の盛り上がりを見つけて、「モグラでてくるかな?」と言いながら、Aちゃんが手で掘り始めました。するとBちゃんは周りを見回し、近くに落ちている棒を拾ってきて、その棒で掘り始めました。それを見たAちゃんも近くの棒を拾って掘り始めましたが、掘り始めてすぐにポキっと折れてしまいました。

Aちゃんは、Bちゃんの棒をちらっと見てから他の棒を探しに行きました。「これにしよっと」と独り言を言いながら少し細長い棒を拾って来て、それで掘り始めるも、またポキっと折れてしまいました。
それを見たBちゃんは、「こういうふといのがいいんだよ」と自分の平べったい木の板のような形の棒を見せました。Aちゃんは、「ふ〜ん」と返事をしながらまた探しに行くと、今度は太くて先が斜めに折れている、掘りやすそうな棒を見つけて来ました。

「これがいい!」と言いながら嬉しそうに拾い、土を掘り始めました。今度は掘りやすかったようで、しばらく没頭して穴掘りを楽しそうにしていました。

自然の中には、便利な道具も過ごしやすい環境も整っていません。しかし、自分の工夫や発想で、シャベル代わりになりそうな棒や樹木の皮や木の破片などを探し出すことはできます。

このように、子どもたちなりの“今あるものでなんとかする力”を元々持っています。

しかし、便利な道具に頼ってばかりいると、「シャベルがないから掘れない」とか「おもちゃがないから遊べない」と、自分で工夫する楽しさを体験する機会がなくなってしまいます。“レジリエンス”とは、こうした工夫を楽しむ力のことを言うのではないでしょうか。

代替え案を考え出す思考や、知恵を絞る体験があれば、困難な場面にぶつかったとき、心がくじける前に「さぁ、どうしようかな」と前向きに次を考え出す力になります。

逆境を悲観的に捉えるのではなく、目の前に出てきた問題に向き合いながら、ただ一歩一歩前に進んで行く。このことが今の時代には大切なのです。この力は、新しい時代に移行していく過渡期に逞しく生き抜く力へと繋がるのです。



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野村直子(のむら なおこ)

この記事を書いた人

野村直子(のむら なおこ)

「子ども」と「自然」をキーワードに国内外での保育と自然体験活動などの経験を重ね、 “森のようちえん”という自然保育の活動に関わる。小規模保育室園長を経て、現在は新しい視点で子育ての質を伝えて行くため『new education LittleTree』代表として研修事業をメインに活動中。
<ホームページ>
https://www.new-edulittletree.com/

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