現場でよく聞かれる質問
保育園の巡回相談や保育所等訪問支援で保育園や幼稚園の相談を受けた際に、先生方からよく出る質問の一つに「保護者の方がお子さんの状態を受容してくれずに療育につながることが出来ません」というものがあります。
先生方の価値観の中に「子どもファースト」があり「子どものために」という強い想いから、目の前で起きている子どもの困り感を知ってほしい、そして受容してほしいという願いにつながり、このような保護者の気持ちを置き去りにした関係性を生み出してしまうことがよくあります。
本当に子どものため、保護者のためになっているか考えてみよう
ここでよく考えていただきたいのは、保護者の方は保育士のように集団の中で日々子どもを見ているわけでもなく、何十人もの子どもを育てた訳でもありません。初めての子育ての場合もあり、誰かと比較することなく目の前の子育てを必死に頑張っています。集団の中でたくさんの子どもたちを見ている先生方は、今までの経験や他児との比較から何かしらの発達上の違いを感じて、それを保護者の方に伝えたい、できるだけ早く療育に行ってほしいという想いが芽生えることは自然なことなのかもしれません。
しかし、思うことと伝えることは違います。保護者の方が、我が子の発達を気にしていて、集団生活の情報を知りたがっているのか? 伝えた際に受け入れられる先生との関係性が出来ているのか? 保護者自身の受け入れられる精神状態にあるのか? 等、さまざまな状況を考えなくてはいけません。
保護者の方は、父、母になって何年でしょうか?長くても5、6年しか経っていないのです。理想の子育てをイメージして妊娠期を超え、子育て期を過ごしている。それがイメージしているものと違ったとしたら? 受け入れることは容易ではないということをよく考えていただきたいと思います。
すべきことは「その子の発達を支えること」
私が園に訪問した際に気をつけていることは、その子を療育に繋げることではなく、今、目の前にいるその子の発達を支えること。そして、安心出来る環境を整えること。それを園全体で行うことという、外の世界はひとまず置いておき今すぐ出来る、明日からできることを実践していけるようなアドバイスを行うようにしています。
「子どもが発達障害かもしれない」と知らされることは保護者にとっては想像以上に大きな出来事です。そう簡単に受け入れられるご家庭は多くないでしょう。そのような現実を保護者の方に伝え、関係性を崩すのではなく、どのような環境整備や関わりがその子の安心につながり、その子の力になったのかを肯定的に伝えてもらうようにしています。
井上さんよりアドバイス
子どもたちは、園生活を終えると小学校という大きな環境の変化に向き合っていきます。それは保護者も一緒です。そんな時に、いつでも相談しに来られる関係性と環境をつくって置くことは、保護者と子ども達にとって一生の宝物です。たとえ、保護者と先生方の見ている先が違う方向であったとしても、その子をこの先もずっと育てていくのは保護者です。先生方の内なる想いと行動は分けて考え、保護者の方と一緒に併走していってもらいたいと思います。
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