自然の中で過ごしている時、子どもたちはさまざまな体験をしています。そして、その体験をその子どもなりの言葉や身振りで表現しています。
ある保育園でのお散歩中の出来事です。1人の子どもが、陽の光に照らされていた真っ赤なもみじの木を見つけて、
「ひかってる~!」と言いました。
周りにいた他の子どもたちも
「わーほんとだー!」「きれい!」
と言いながら、もみじの木の下に駆け寄りました。私も木の下に入ってみると電気がついたように明るく感じたので、思わず「わ〜きれいだね〜」と呟き、子どもたちと一緒にそのもみじの光に包まれる体験をしました。
中には「ひかってるんじゃないよ」と冷静に指摘している子もいましたが、その子も一緒にもみじの下に入ると、「ひかっている」という表現が正しいか間違っているかは関係なくなって、みんなと一緒にもみじの光を楽しんでいました。もみじの色や明るさを一人ひとりが体験していたひとときでした。
『きれいだな~』『おもしろいな』『これなんだろう?』と感じる体験をすると、人は誰かに知らせたい、伝えたいと思います。
子どもたちも自分が感じているその体験を、その時その子が持っている言葉で一生懸命に伝えてきます。
子どもが言っている意味や状況はなんだかわからないけれど、“楽しかった”ということは伝わって来る経験が、皆さんにもあるのではないでしょうか。
大切なのは、“話している内容や状況が正しく説明されているかどうか”ではなく、その子が発する言葉から伝わってくる体験の“質”をキャッチすることです。
子どもはきちんと言えなくても、伝えたい体験があると、それをいろいろな言葉や表現で捻り出そうとします。その時大人は急かしたり、訂正したりしないこと。ただその子が伝えようとしていることを受け取るだけで良いのです。
こうした体験を話す、シェア(分かち合い)の時間を設けることで、一人の体験がみんなの体験へと繋がることがあります。
“捕まえたカマキリを潰してしまった時の悲しさ”
“高い所からジャンプできた時のドキドキ感と達成感”
“きれいな花を大事に持ち帰って来た時の気持ち”
“みんなで長い枝を持ち上げて運んだ時のワクワク感”
その時その子どもが感じていた “内面の体験”が伝わり、聴いている側の心に伝わって来るのです。
“悲しかったね…”と共感が生まれ、
“ぼくもそういうのやったことある”と自分の体験を思い出し、
“わたしも今度それやってみよう”という次への期待に繋がり、
“あれ、楽しかったね!”と共通体験を認識する…
他の子の体験のシェアから、自分も体験したことを思い出したり、自分は体験してはいないけど、一緒に体験したような気持ちになったり…ということが起きて来ます。
こうした体験のシェアから、子どもたちの中に、次のやりたいこと、次の目標、次の可能性が見えはじめ、そこから子ども同士での対話が生まれてきます。
体験のシェアを聴く時は、“良い”とか“悪い”とかの評価の耳ではなく、一緒に体験しているかのように聴く耳を持つことが大切です。すると、聴いている側にもシェアしたいことが出て来て、そこから豊かな対話が生まれて来ます。
こうして子どもたちの体験のシェアから生まれる豊かな対話は、豊かな体験となっていくのです。