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課題は環境設定のタイミング。西安の保育園指導で見えた日本の園との違いとは

絵本を読む中国の保育士と子ども
2021年4月、一人の日本人保育士が中国に渡りました。田淵 亜弥香先生が降り立ったのは、内陸部にある陕西省の省都である西安市。ここにある現地の保育園で、日本の保育手法を教える指導員として赴任してきました。右も左も分からない異国の地で、あやか先生の挑戦が始まります。今回は、園での環境設定や食事マナーの指導など、試行錯誤しながら一歩ずつ改善に向けて進んでいく様子について教えてくれました。
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モデルクラスで分かった環境設定のタイミング問題

前回のコラムで少しお話ししましたが、現在はモデルクラスで保育や指導を行っている毎日です。モデルクラスは3歳児、子どもは15名、先生は3名のクラスです。製作遊びと運動遊びの大好きな子どもたち。まずはお部屋の環境設定から、先生たちと意見を交わしながら変更していきました。

製作とお絵かきが好きな子どもが多いので、たっぷりと集中して遊ぶことができるようにしました。ブロック遊びも良く盛り上がっていますので、こちらも外せません。おままごとコーナーは、マットを敷いてお家の様子を再現。静と動の遊びの配置に気をつけながら配置を行いました。
本を読む中国の子ども

配置を変更しましたが、重要なのは環境設定を行うタイミングです。日本の園とは違って食事の回数が多いので、1時間ほどの間隔で食事かおやつの時間がやってきます。以上児(※)でも朝食、午前おやつを食べますので、せっかく遊びこんでいてもそれらを片付けるか、遊びを中断して食事をとります。遊びに使っていた机は食事の際にも使用するので、毎回片づけを行ったあとに食事、そして環境設定という流れになります。当たり前のように感じますが、これが結構忙しい。食事やおやつ後の環境設定については、子どもを待たせる時間を少なく行う”ことを目標に、いつ行うのがベストなのかを先生たちと話し合いました。その結果、机を使わないコーナーから食事中に設定を行うということで落ち着きました。

食事後に子どもがうがいを行っているタイミングで机を使用する製作、お絵かきコーナーを設置。環境設定のタイミングを3人の先生がしっかりと把握できてからは設定もスムーズになり、子どもたちが遊びに入り込みやすくなったと感じています。食事やおやつの間は1時間ほどですが、コーナーの配置を変更してからは子どもたちが一つの遊びに夢中になる姿が増えてきました製作コーナーでお花を作ったり、お絵かきコーナーでは思い思いに好きな絵を描いたり、ブロックコーナーではブロックで作った剣や鉄砲でごっこ遊びを楽しんだりと、遊びを自分で選択して楽しむことができています。今後は、もっと製作コーナーの材料を増やして、イメージしたものを作ることができるような環境を整えたり、手作りおもちゃを増やしたりしていきたいと考えています。
製作活動をする中国の保育園の様子

食事のマナー改善は先生の意識改革から

次に注力したのは、食事の際のマナーについてです。モデルクラスに限らず、西影園の子どもたちの食事の様子を見て感じたのは、食事中によく席を立つことです。ふら~と立ち上がっておもちゃで遊びだす子、トイレに行く子などさまざまでした。トイレは食事の前に済ませておけば、食事中に行くことを減らすことができます。おもちゃで遊びだしてしまう子どもに対して先生たちは、“自由保育なので”とでも言わんばかりの対応でした。“自由”がイコール“何でもあり”と捉えられていたようで、驚きました。また椅子に正しく座ることができておらず、机に対して体が斜めになっていたり、机と身体が極端に離れていたりという状況でした。このような状況を先生たちは、「おかしい」「変だな」と思うことなく過ごしていたようです。
おやつを食べる中国の保育園の子ども

子どもたちに食事のマナーを教えることも私たちの仕事の一部ですので、まずは先生たちの意識から変えていくことから始めました。「食事の時間と遊びの時間の区別をつけよう!」「椅子に正しい姿勢で座って食べることができるようにしよう!」。先生たちの意識が変わってきてからは、子どもたちの姿にも変化が見られました。落ち着いて食事をとることができるようになったり、正しい姿勢で食べることで食べこぼしが減ったり。子どもたちの変化に、先生たちは驚きとともに嬉しさを感じたようでした。

子どもたちの姿が少しずつ変わってきたことに先生たちは自信を持てるようになってきたようで、今ではいろいろな活動を計画して実践するようになっています。すべてがうまくいっているわけではありませんが、自分たちで子どものためを思って考え、実践し、そこからまた次の活動につなげていく。このサイクルを繰り返しながら成長していく姿を、微力ですがアドバイスをしながら見守っています。
外遊びをする中国の先生と子ども

保育指導で感じた厚い言葉の壁

モデルクラスで実際に保育に入る日が多くありましたが、言葉の壁は厚いな~と改めて実感しました。子どもたちの遊んでいる際の言葉が分からない悔しさ、先生にすぐに指導をしたくても通訳さんを通さなければできないもどかしさを感じています。本当に毎日悔しい気持ちでいっぱいです。言葉かけの指導をしたくても日本語と中国語で語彙に差がありますので、うまく伝わらずに肩を落とす日も少なくありません。自分の無力さを痛感しています。保育のスキルアップはもちろん、中国語にも力を入れなければ! と新たな目標ができました。先生たちが日々頑張っているように、私も目標に向かって進んでいきたいと思います。

このモデルクラスが落ち着いてきたということで、次の段階に進む目途が立ったと言えます。中国の運営会社からも「2つ目のモデルクラスを作ってほしい」との依頼がありましたので、現在は新たに違うクラスの指導を開始しています。このクラスの先生たちもやる気満々。どんなクラスになるのか、一緒に改善に取り組んでいけることがとても楽しみです。

※以上児:3歳以上である3歳児、4歳児、5歳児を指す総称のこと。
室内遊びをする中国の保育園の子ども


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田淵 亜弥香(たぶちあやか)

この記事を書いた人

田淵 亜弥香(たぶちあやか)

10年の保育士歴を経て、2021年4月から中国の西安市にある保育園に赴任。現地の先生方に、日本の保育メソッドやノウハウを教える指導員として、日々奮闘している。株式会社キッズコーポレーション(本社/宇都宮市)に所属。

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