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西安での保育園指導を総括。指導の浸透とこれからの課題

西安保育園に通う女の子
2021年4月、一人の日本人保育士が中国に渡りました。田淵 亜弥香先生が降り立ったのは、内陸部にある陕西省の省都である西安市。ここにある現地の保育園で、日本の保育手法を教える指導員として赴任してきました。右も左も分からない異国の地で、あやか先生の挑戦が始まります。今回は、指導してきたことの浸透やこれからの課題、新型コロナウイルス対応など、近況について語ってくれました。>>「西安保育園奮闘記」連載の一覧はこちら

モデルクラスでの指導

6月から2つのモデルクラスで先生方と一緒に保育をしてきましたが、平行して他のクラスの指導も少しずつ行ってきました。それぞれ年齢が異なるクラスで、日々の保育で困っている内容もさまざまです。これまで、すべてのクラスに共通して「子どものことをよく観察し、子どもたちの好きなものや興味のあることを理解、把握して、よりよい環境を作っていきましょう」という指導を行ってきました。「子どもたちが主体的に活動できていることはなにか?」「環境は今の状態でよいのか?」などについて、少しずつ先生たちに伝えながら改善を図ってきました。
西安保育園での室内遊びの様子

モデルクラスよりも関わる時間は少なかったものの、先生たち自身が子どもたちのことを考えながら工夫していく姿を見て、私も刺激を受けました。何と言っても、先生たちが一番子どもに近い存在です。その先生たちが、子どものことを考えていくことにこそ意味があると感じています。子どもたちの成長のためには、私たち保育者は常に考えて学び続けなければいけないということを改めて実感しました。

学びの浸透とこれからの実践

7月・8月を通して、子ども主体の保育を積極的に取り組んでくれる新規の先生たちが増えてきました。「子ども主体の保育とはどのようなものなのか?」「この保育でどんな子どもを育てていくのか?」など、少しずつ研修を通して共通意識を深めてきた結果なのかなと感じています。

研修の中で虐待防止の啓発ポスターを共有した際には、他園から転職してきた先生から「こういう行動が虐待になるのですね。前の園では普通にやっていました。」という言葉を聞きました。特に、「食事を完食するまで食べさせる」ということは多くの園でよく行われているとのこと。なぜ禁止しているのかについて先生に説明をすると、「子どものための保育とはこういうことの積み重ねなのですね」と、理解してくださいました。
西安保育園での研修の様子

このように、少しずつ理解してくださる内容は増えていきますが、実践はこれからです。先生方には、学んだことを実践することが出来るように、自分自身を振り返りながら日々保育を楽しんでほしいと思います。

驚きのスピードで新型コロナウイルス対策

8月に入り、あと数日で夏休みというところで、政府から新型コロナウイルスの発生状況を見て急遽園児の登園禁止が発表されました。午前中に通知が来て、次の日から登園禁止となったため、保護者の方への連絡、年度末の荷物を持ち帰る準備、子どもたちとのしばしのお別れなどが慌ただしく行われました。

日本とは違い、さまざまなことが急な決定で決まること、またそのスピード感に驚きを隠せませんでした。新型コロナウイルスの陽性者が出た7月末には、周辺住民や地下鉄利用者などのPCR検査がすぐに始まりました。コンビニやスーパー、マンションなど、あらゆる場所の入口では検温と通行証のようなQRコードの読み込み掲示をしなければいけなくなり、飲食店は閉店。それらのすべてが、陽性者が出てから2、3日の間に実施され、日本では考えられない状況に圧倒されるばかりです。
新型コロナウイルス対策で検温と通行証の確認をする中国の様子

一気に危機感と緊張感が高まり、私自身もドキドキしながら過ごしていました。一斉検査の結果、陽性者は見つからず、少しずつ街も通常通りに戻ってきて一安心。新型コロナウイルスを流行させないための政策が明確で、実行力があるところが日本とは違うところだと感じました。幸い先生たちの出勤は許可されていたため、余裕をもって新年度の準備を進めることが出来ている状況です。先生たちと一緒に園内の環境を整えたり、研修を行ったりして、子どもたちが笑顔で登園してくれる日を楽しみに待っています。

9月の新年度に向けた準備

この9月からはクラス数が8クラスに、園児の数も100名近くになります。新入園児が多いので、慌ただしくなることが予想されます。初めて保護者から離れて生活する新入園児も多いでしょう。不安でどうしようもない気持ちを受け止めて、まずは園が安心して過ごすことが出来る場所であることを分かってもらうことがとても大切です。

私は、先生たちが子ども一人ひとりに向き合う時間を確保できるよう、困ったこと、悩みなどをすぐに解決出来る体制作りをしていきたいと考えています。園の職員全体で困っている時には助け合う、そんな組織を作り、より良い人間関係の中で子どものために保育をしてほしいからです。
西安保育園の先生が子どもたちに読み聞かせをする様子

園全体でこの慌ただしい時期を乗り越えることが出来れば、職員間の信頼関係も深まり、連携がとりやすく、保育の質の向上に繋がっていくと思います。園長先生や主任の先生がクラスを毎日巡回して子どもたちと触れ合い、先生たちの意見を聞くことで園の状況を把握できます。園長先生や主任の先生を身近に感じることが出来れば、先生たちも困った時、悩んだ時に頼りやすくなり、解決までの道のりが縮まるかもしれません。そういった工夫の積み重ねが、子どものための環境作りにも繋がっていくと思います。

私はビザの関係で9月中旬に帰国します。隔離期間があるので、すぐに園に戻ってくることが出来ません。帰国まであと2週間ほど。私が出来る指導や、サポートを精一杯行っていく予定です。9月中旬以降は、先生たちが今までよりも協力し、お互いを高め合いながら子ども主体の保育の実現に向けて励んでくださることを期待しています。


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田淵 亜弥香(たぶちあやか)

この記事を書いた人

田淵 亜弥香(たぶちあやか)

10年の保育士歴を経て、2021年4月から中国の西安市にある保育園に赴任。現地の先生方に、日本の保育メソッドやノウハウを教える指導員として、日々奮闘している。株式会社キッズコーポレーション(本社/宇都宮市)に所属。

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