閉じる

MENU

ログイン

隔離生活を経ていよいよ保育園に。現地調査で見えた課題とは

2021年4月、一人の日本人保育士が中国に渡りました。田淵 亜弥香先生が降り立ったのは、内陸部にある陕西省の省都である西安市。ここにある現地の保育園で、日本の保育手法を教える指導員として赴任してきました。右も左も分からない異国の地で、あやか先生の挑戦が始まります。今回は、いよいよ始まった園での活動について教えてくれました。
>>連載一覧はこちら

長いようで短かった隔離生活

中国の建物

ホテルで2週間、自宅で1週間の隔離生活も無事に終わりを迎えました。実際に隔離をされてみての感想は「思っていたよりもあっという間」ということです。3週間と聞くととてつもなく長いように感じますが、隔離中もリモートで仕事をしていたおかげで気が付けば最終日でした。3週間外に出ることなく生活することは今後の人生でもなかなかできる経験ではないので、本当に貴重な経験をしたと感じています。

隔離が終わって園へ着任する前に、中国の会社のご厚意でこれから住む場所、職場となる園、そして西安のことについて通訳さんから案内と説明をしていただきました。自宅のまわりを通訳さんと歩いていると、「中国に来たんだ!」と実感。当然ですが周りの人たちが話す言葉やお店の看板はすべてが中国語で、この環境で生活していけるのか少しだけ不安を感じたことを覚えています。しかし通訳さんが買い物の仕方や地下鉄の乗り方などを丁寧に教えてくださったので、だんだんと不安も少なくなっていきました。
中国の建物

この期間に自宅の近くにあるスーパーやデパート、西安のシンボルとも言える建物である「大雁塔(だいがんとう)」、城壁に連れて行っていただきました。世界遺産である大雁塔では最上階まで登り、そこから見える街並みを一望。碁盤の目のようにまっすぐに伸びる道が特徴の西安の街を見た時には感動しました。城壁は歩いてすべてを回ることが困難なほど広大で、風が気持ちよく開放感に溢れていて、中国の広さに圧倒されました。

いよいよ迎えた園での初日

さていよいよ園に行く日がやってきました。住宅地の門をくぐり先へ進んでいくと、3階建ての園舎と広い園庭が見えてきます。園に着くと先生たちが笑顔で挨拶をしてくれたので、緊張が少しほぐれて安心しました。着任当日は、園の説明を受けてクラスの見学を行いました。

クラスは全部で5クラス。1歳児から5歳児が通っています。日本の名物である「おにぎり」を作ってくれているクラスや、「東京タワー」や「金閣寺」の写真を子どもたちに見せながら説明をしているクラスなどがあり、歓迎していただいていることが伝わってきました。子どもたちも「日本人の先生ですか?」と、興味津々の様子。お父さんお母さんから教えてもらったという日本語でのあいさつをしてくれる子どももいて嬉しかったです。

現地の調査で見えてきた課題

中国の保育園の給食の様子

着任後の2週間は、現在の園の状況調査がメインでした。クラス、園庭、調理室の環境や保育の仕方などのさまざまな現状を確認し、日本側と共有します。課題を見つけ出して改善できるように、指導方法を考えて指導を行う準備をします。すぐに改善できるものもあれば、保育者の意識から変えていかなければならない部分もあり、前途多難といった感じでのスタートになりました。

日本の園との大きな違いは、園で食べる食事の回数が多いことです。8時から登園が始まり、8時40分に朝食を食べます。そして10時過ぎに午前おやつ、11時半ごろ昼食、午睡から起きた15時ごろに午後おやつ、16:30すぎに夕食を食べます。1度の活動の時間が短く、夢中になっている遊びがあってもすぐに片付けなければいけません。まだまだ遊びたい子どもたちと、おやつやご飯を食べてほしい先生たちの気持ちがぶつかって、おやつを食べながらおもちゃで遊ぶなどということもよく目にしました。
中国の保育園の給食の様子
また日本の保育士と違うと感じた点は、先生同士の声掛けが少ないということです。部屋から出ていくとき、何かを始めるときなどに声掛けをしないということが当たり前の状況で、「あれ?あの先生どこに行った?」ということがよくありました。そのせいか先生たちの連携が取れていないクラスがあり、この面を改善していくことに苦戦しています。

子ども主体の保育を浸透させるには

おもちゃが広がった保育室

子ども主体の保育については現状、先生たちに浸透している、実行できているとは言えません。先生たちは「自由保育」と呼ばれる名称に囚われているのか、「何でもあり」の保育になっていました。机に上る、上履きのまま戸外に出ていく、お片づけをしないなどの状況を保育者がスルーしている、またはどのように声をかけていいかわかっていない状況。この点については、一つひとつを根気強く先生たちから子どもたちに伝えて、習慣づけることができるように励んでもらっています。

課題がたくさんあるということは、一つひとつをクリアして行くことが出来れば、子ども主体の保育を実現することができるということです。「子ども主体の保育を学んで実践したい!」という、強い気持ちを持っている先生がこの園にはたくさんいます。今までやってきた保育を変えていただくことは簡単なことではありませんが、変えていくことのできる先生たちがいると感じています。
中国の保育園の様子

現在は5クラスあるうちの1クラスをモデルクラスとして設定し、私も日々保育に入りながら担任の先生たちと一緒に部屋の環境設定を考えたり、壁面を作ったり、保育の振り返りをしたりしています。このモデルクラスで子ども主体の保育を実現させて、園全体に広げていくことが今後の目標です。モデルクラスの先生たちは、小さなことでも質問をしてくださる熱心な先生たちです。より良くしていくために意見交換、指導をしながら、「子どものために」を考えて保育を行っています。モデルクラスの先生たちが、そして子どもたちが成長していくことができるように、私も保育スキルの向上に努めていきたいと思います。

【ほかおすすめの記事はこちら】
田淵 亜弥香(たぶちあやか)

この記事を書いた人

田淵 亜弥香(たぶちあやか)

10年の保育士歴を経て、2021年4月から中国の西安市にある保育園に赴任。現地の先生方に、日本の保育メソッドやノウハウを教える指導員として、日々奮闘している。

関連タグ

シリーズ関連記事

おすすめ記事