非認知能力とは?

この言葉は、2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者であるジェームズ・ヘックマン教授が提唱したもの。近年の研究から、乳幼児期にこれらの非認知能力を育てることが、教育の観点から重要ということが知られるようになり、注目を集めています。また、合わせて「認知能力(認知的能力)」についても知られるようになってきましたが、こちらは読み書きや計算、論理を理解する力などを含めた「思考をする力」のことです。学力テストやIQテスト(知能テスト)の点数など、計測して数値化できる能力のみが取り上げられるケースもありますが、実際はこれらを含めた広範な思考力を指しています。
保育・幼児教育の方向性を決める重要な要素
非認知能力については、日本の保育・幼児教育の方向性を決めるに当たっても重要な要素として考えられています。例えば、社会保険審議会児童部会保育専門委員会による、『保育所保育指針の改定に関する議論のとりまとめ(案)』では、このような記述があります。「自尊心や自己制御、忍耐力といった社会的情動的スキルやいわゆる非認知的能力を乳幼児期に身に付けることが、大人になってからの生活に大きな差を生じさせるといった研究成果などから、乳幼児期、とりわけ3歳未満児の保育の重要性への認識が高まっている。」¹
この資料の中ではその他にも、他者への信頼感、感情を調整する力、粘り強くやり抜く力などを「非認知的能力」であると述べています。
乳幼児期は、読み書きや計算など、結果が見えやすい点につい目が行きがちです。しかし、実際にこれらは認知能力(認知的能力)のごく一部を示しているに過ぎません。また、数多くの研究結果から、基本的な人格形成へとつながり、人間力の土台となる“非認知的能力”を育むことが、認知能力を伸ばすためにも重要であることが分かっています。
認知能力だけ伸ばしても、効果は一時的で長続きはしないというデータもあります。非認知能力の土台があって、初めて認知能力を伸ばし続けることができ、将来的に成長を継続することができます。非認知能力は、計算や読み書きなどの学校の勉強など認知能力の土台となる、「生きるための力」と言っても過言ではありません。
出典:保育所保育指針の改定に関する議論のとりまとめ(案)/社会保険審議会児童部会保育専門委員会(平成28年12月)
園でできる「非認知能力」の育て方
子どもたちの非認知能力を育てることは、保育士や幼稚園教諭の大切な役目になってきます。具体的に園での活動を通して、子どもたちとどのように関わっていけばいいのでしょうか。いくつかポイントをまとめましたので、見ていきましょう。遊びを自ら見つけ出す

子どもの気持ちを受け止める
子どもが先生にお願いをしてきたとき、泣いているとき、怒っているとき…。子どもたちの気持ちを感じ取り、受け止めていくことも大切です。「自分の気持ちを受け止めてもらえた」という経験は、信頼関係の形成や自己肯定感を高めることにもつながります。「こうしたかったんだね」「これが嫌だったんだね」と、受け止める言葉をかけていきましょう。環境を用意する
「環境設定」として、棚の配置やおもちゃの置き場などに力を入れている園もあるかと思います。しかし、最も大切な環境設定は、「子どもたちの興味が広がるような素材を用意すること」です。子どもたちの興味を常にキャッチし、どのような環境であれば子どもたちが遊びこむことができるのか考えることが大切になります。今、子どもたちがなにに夢中なのか、ぜひ様子を観察してみてくださいね。非認知能力を育てる鍵は大人にある⁉
いかがでしたか? 大人との関わりや、子どもたちが過ごす環境は、非認知能力を育てるのに大きな役割を持っています。子どもの気持ちに寄り添い、子どもの主体性を大切にした保育を実践してみてくださいね。【関連記事】