パラパラ見るだけでプロの保育士の視点を学べる本
0・1・2歳児クラスの現場から 日本が誇る!ていねいな保育大豆生田 啓友・おおえだ けいこ
小学館/2019年
最初にご紹介するのは『0・1・2歳児クラスの現場から 日本が誇る!ていねいな保育』(著者:大豆生田 啓友・おおえだ けいこ 出版社:小学館)です。
とにかくわかりやすい!フルカラー&約400点の写真
どのページを開いても複数の写真があり、最後までフルカラーなので、本を読むのがあまり得意でない人も読みやすくなっています。もちろん写真だけでなく解説文章もたくさんありますが、イラストや漫画も入っているのでわかりやすさが際立っています。 「買ったから読まなきゃ」ではなく、つい読みたくなる1冊です。
保育の基本と知恵がつまっている
保育士としての基本姿勢から子どもの生活や遊びについて、プロならではの視点がぎゅっとまとめられています。「新人のときに読みたかった!」と思うのは、靴の着脱や活動の移行、砂・土の遊び、ごっこ遊び、保護者への関わり、防災など、取り上げられている保育現場の間口が広く、右も左もわからない新人時代には重宝するからです。
保育園で働けば先輩保育士から教わることもありますが、「質問したいけどその時間がなかなか確保できない」「こんなことまで聞いていいのかわからなくてドキドキする」という人も多いかと思います。
保育のさまざまな場面における子どもの姿や保育士の対応、考えがつまっているので、一人前になりたいと思っている保育士さんにおすすめです。
運動遊びからスモールステップまで身につけられる本
0〜5歳児の発達に合った 楽しい!運動あそび栁澤 秋孝 栁澤 友希
ナツメ社/2014年
次にご紹介するのは『0〜5歳児の発達に合った 楽しい!運動あそび』(著者:栁澤 秋孝 ・栁澤 友希 出版社:ナツメ社)です。
392種類の運動あそびが段階的にまとまっている
乳児(0〜2歳児)は140種類ほど、幼児(3〜5歳児)は250種類ほどの運動遊びがつまっています。各遊びには保育士の言葉かけや遊びのポイント、アレンジ方法なども書かれているので、運動遊びに初めて取り組む人にもわかりやすいです。本書の最大の特徴が「遊びが段階的になっていること」です。例えば、逆上がりを目指す場合、以下のような順番で遊んでいきます。
1.ぶら下がり遊び
ゆらゆら体を動かしたりひねったりするなど、遊びのパターンが何種類もあります。どれも子どもたちが「鉄棒って楽しい!」と思える遊びです。
2.跳び上がり遊び
鉄棒を両手でにぎって跳び上がり、下腹部を鉄棒に乗せて腕で体を支える遊び。顔の位置が自分の背丈よりも高くなるので、高さに自然と慣れていきます。
3.ブタの丸焼き
逆さになる感覚や鉄棒から落ちないように手や足を使って体を支える経験ができます。
この他にも数多くの鉄棒遊びがあり、それを1つずつ遊んでいくことで、逆上がりに必要な体の使い方を自然と身につけられるように設計されています。
スモールステップを体感できる
本書で紹介されている「段階的に進めるやり方」は、実は日頃の保育でも同じことができます。つまり、課題が子どもにとって難しすぎるならば、挑戦しやすい形に変えれば良いということです。いわゆる「スモールステップ」ですが、頭で理解していても普段の保育の中で実践するのはなかなか難しいものです。
しかし、本書をもとに運動遊びを体験することで、目標を段階的に分け、簡単な内容から少しずつクリアする考え方が自然と身についていきます。
この1冊だけで運動遊びはバッチリですし、子どもが達成感を得て意欲的に挑戦できる「スモールステップ」を学べるので、心よりおすすめします。
『子どもとつくる2歳児保育 思いがふくらみ響き合う』
子どもとつくる2歳児保育 思いがふくらみ響き合う監修:加藤 繁美・神田 英雄 編著:富田 昌平
ひとなる書房/2012年
最後にご紹介するのは『子どもとつくる2歳児保育 思いがふくらみ響き合う』(監修:加藤 繁美・神田 英雄 編著:富田 昌平 出版社:ひとなる書房)です。
本書は写真たっぷり&フルカラーの本ではありません。写真はありますが白黒で、何よりも文字がたっぷりつまっています。
しかし、専門書のような固さはまるでなく、子どもと保育士の対話的な関わりが豊富なエピソードで紹介されているのが特徴です。
例えば、春先に「ごっこ遊びやお世話遊びを大切にしたい」と話し合った2歳児クラスの物語があります。人形のお世話遊びは人気でしたが、数体しかない人形の取り合いが起こっていました。
そこで、担任は一人に一つずつ手作り人形を用意して、子どもたちが人形遊びをたっぷり遊べる環境を設定。「自分の」という所有感が心を安定させ、子どもたちはじっくりと遊び込めるようになりました。
すると子どもたちの中で赤ちゃん人形の存在が大きくなり、午睡前に人形に「おやすみ」と声をかけたり、「赤ちゃんはおうたが好きなの」とみんなで歌を歌う姿が見られるほど、人形は大事な存在になりました。
「自分の人形」という確かな存在感が心の安定につながり、遊びの中で人形をまるで自分の赤ちゃんのように思い、お世話をする自分に誇らしさまで感じる2歳児たち。子どもたちの心の成長を支える保育エピソードに「保育って楽しいよね」「こんな保育がしてみたい!」と心が動く1冊です。
*この本はシリーズになっており、0〜5歳まですべての年齢で出版されています。
「こんな保育がしたい!」とわくわくしよう
筆者が持つ100冊以上の保育士本の中から良書を厳選してご紹介しました。 保育士としての基本や運動遊びとスモールステップという考え方、そして、子どもと保育士の豊かな実践がつまった3冊。本との出会いから、「保育が楽しい!」と思える保育士・幼稚園教諭が増えたら嬉しい限りです。【関連記事】