発達支援の専門家監修の絵カードについて
園児の中には、一斉指示で動けない、自分の気持ちを伝えるのが苦手などの理由で過ごしにくさを感じている子がいます。そういった子どもたちが園生活で感じている困りごとを減らせるよう、発達支援の専門家である井上綾乃先生監修のもと、ほいくisオリジナルの絵カードを作成しました。絵カードは、園生活をサポートするものを37種類、コミュニケーションに役立つものを24種類用意しています。園生活の中で絵カードをもっと活用していただきたく、井上先生に絵カードの使い方や保育現場で使うときのポイントについてお話を伺いました。どのように保育に取り入れると効果的なのか、発達支援の目線から教えていただいたので紹介します。
合同会社シャインキッズ 代表
管理者兼児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士
発達支援センターでの実践や短大非常勤講師の経験を積み、自ら法人を立ち上げ、児童発達支援管理責任者(保育士と)して療育の現場で活動中。子どもをプログラムに合わせるのではなく、子どもに合わせた療育プログラムを行いながら、「楽しい」と感じる事で発達する支援を実践。現在では自治体の保育園巡回相談、保育ゼミ講師、依頼を受けての保育園、幼稚園研修講師等人材育成も行っている。
<シャインキッズホームページ>
https://shine-kids.com/
<遊んで発達 シャインキッズ井上チャンネル>
http://www.youtube.com/@user-nt6dp8ji5c/
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視覚支援の絵カードとは?
まずは、絵カードとはどのようなものなのか教えてください。
絵カードは子どもが日常生活をおくりやすくなるようサポートするアイテムです。また、周囲の人とコミュニケーションを取るときの手段のひとつとしても使われています。絵カードは相手に伝えたい気持ちや、これから行われる全体や個別の行動を絵や文字で表しているのが特徴です。シンプルなつくりで余分な情報が入っていないため、子どもにとって何を伝えられているのかや何が描かれているのかがわかりやすくなっています。
絵カードは、どのようなお子さんに使われていますか。
療育現場や保育・教育施設で取り入れられている絵カードは、環境から今何をする時間なのかを読み取ることが苦手なお子さんや、自分の伝えたいことを相手に伝えることが上手くいかないお子さんにおすすめです。障害のあるなしに関わらず、全てのお子さんにとって生活を助けるためのひとつの道具です。
園生活の中で、絵カードをどのように活用することができますか?
園生活では「今はこれをする時間」とスケジュールが決まっていますね。しかし、見通しをもって行動することが苦手な子や、先生が説明した1日の流れを覚えるのが難しい子、1日の中で楽しみを見つけることで少し苦手な活動を頑張っている子には、絵カードのような目で見える形でスケジュールを伝えることで、いつでも自ら確認して行動にうつすことができます。
具体的に、どんな場面で絵カードを使うと効果的でしょうか。
環境の中から情報を読み取って行動することが難しいというときに絵カードを使うのが有効です。例えば、登園したとき園の玄関は人が多くざわざわしていますね。たくさんの人や音がある中で、自分が一体何をすれば良いのか分からずに行動に移すことができない場合があります。そのようなときに大人が声をかけるのも良いですし、「靴を脱ぐ」絵カードを見せるのも良いでしょう。また、その子の視界に入る場所に貼っておくことで、先生が一人付かなくても自ら今何をすべきなのかが分かり自立して行動することができます。
- 絵カードは障害の有無に関わらず誰にでも使える認知の手助けである
- 1日のスケジュールを伝えるときに絵カードを活用してみる
- 先生からの指示待ちではなく、自ら行動できる自立に繋がる
絵カードは子どものためのアイテム
絵カードを使うときのポイントをお聞かせください。
一番大切なポイントは「絵カードは大人の思い通りに動いてもらうためにあるのではない」ということです。今はこれをしてほしい、次はここに行ってほしい、といった大人の思いを伝えても、カードを出したからといってその通りに行動に繋がるわけではありません。子どもには必ず行動の理由があり、全体に添えない場合には、何が理由なのかをよく観察し支援する必要があります。
あくまでも、子どものために用意するものなのですね。
はい。子どもが、園で生活しにくいと感じている場面で使ってみるといいですね。「今何をすべきかわからない」ときには本人が理解できる内容の絵カードを提示することで子どもの理解の手助けとなり、安心して行動に繋げることができます。- 絵カードは大人のためでなく「子どものためのアイテム」ということを忘れずに
- 園で生活しにくさを感じている子どもがいたら絵カードを活用してみよう
ほいくis絵カードの特徴
今回の絵カードについて教えてください。
保育士の皆さんが現場で使えるよう工夫しました。保育園・幼稚園をはじめ、療育施設といった場所で活用しやすい絵カードになっています。カードに描かれている情報が多いと何を伝えられているのか間違えて捉えてしまうことがあります。そのため情報過多なカードにならないようシンプルなつくりにしていただきました。また、中間色ではなくはっきりした色味を使うことで、より認識しやすい内容になっています。
イラストで捉える子と文字で捉える子両方のお子さんに使える物となっています。特に、上履きのイラストだけでは、履くのか脱ぐのか行動の前後関係から予測を付けることが難しいお子さんもいるため、矢印等の記号も取り入れました。
絵カードの使い方と活用例
保育現場では、絵カードを使ってどのようにコミュニケーションの幅を広げられるでしょうか。
今回監修した絵カードは行動を示すものだけではなく、気持ちを伝えるカードも準備しています。「はずかしい」「やりたくない」「こまっている」といった感情の絵カードを使って、言葉で伝えることが苦手な子も自分の気持ちを発信することができます。いくつか使い方の例を紹介します。
①部屋の中が騒がしいと出て行ってしまう子への活用例 |
②工作の時間に手先が不器用で取り組もうとしない子への活用例 |
③言葉でのコミュニケーションが苦手な子への活用例 |
絵カードひとつで使い道は多種多様
保育士の皆さんに、絵カードをどのように活用してほしいですか?
絵カードを取り入れる支援でも、子どもによってぴったりはまるやり方は1人ひとり違うでしょう。現場で保育をする皆さんには、たくさんの引き出しを持ってほしいと思っています。例えば、楽しい要素を加えて絵カードを使うのもおすすめです。「かばんを かける」や「タオル」など支度に関するカードの裏に好きなキャラクターや花まるを描いておき「終わったら裏返そうね」と伝えてみてはいかがでしょうか。絵カードを使うことで支度をすることが楽しくなるかもしれません。
今回の絵カードは、大きさにバリエーションがあるので、子どもにとってどんな方法が効果的か試すことができますね。「カードとして持ち歩く」「マグネットをつけて壁に貼っておく」「チケットのように先生に手渡せるようにしておく」など、たくさんの引き出しを用意して、子どもに合った活用法を探してみてください。
井上先生が解説する動画もご覧ください
井上先生がご自身のYoutubeチャンネルで絵カードの使い方を教えてくださいました。絵カードを保育の中で活用したいと考えている方は、ぜひご覧ください。
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絵カードを使って保育の引き出しを増やそう
今回は、絵カードを監修していただいた井上綾乃先生に、使い方やポイントについてお話を伺いました。自分の伝えたいことを相手に伝えることが上手くいかないお子さんに伝わりやすいよう作成しているので、日々の保育に役立ててください。【関連記事】