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小児てんかんを解説|基礎知識と保育士の対応

カルテと医療器具と「てんかん」の文字
園に通う子どもの中に、てんかんを持つ子も少なくありません。そのため保育士は、てんかんに対する知識や発作が起きた時の対応を学んでおく必要があります。今回は、てんかんの子どもを受け入れる上で重要なポイントを解説していきます。

てんかんとは

脳の中を流れる電気信号のイメージ
脳から流れる電気信号は、身体のさまざまな部分に指令を送ることで身体を動かすことが出来ます。しかしてんかんの場合は、脳の神経細胞が過剰に興奮し放電をすることで、身体の神経細胞が異常に働いてしまいます。てんかんには痙攣(けいれん)のイメージがあるかもしれませんが、意識消失をせず周囲も気付かない程軽い場合もあります。

てんかんは、小児期に起こりやすい慢性疾患のひとつです。子どもの年齢によって発症しやすい症状もあり、てんかんの診断があることは、発作や知的発達の予測をする上で重要となっています。


てんかんの全体数

さまざまな人がいるイメージを表したピクトグラム
平成24年度(2012年度)に行われた、てんかん有病率等に関する研究によると、国内のてんかん患者数は人口1,000人あたり7.24人、日本全体で100万人(人口の 0.8%)と推計されています。子どもや高齢者での発症率は高くなりますが、どの年齢でも発症する可能性があり、園でてんかん発作が生じる場合もあります。

出典:平成24年度厚生労働省科学研究費(障害者対策)「てんかんの有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療体制の整備に関する研究」/平成23-25総合報告書疫学 
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てんかんの原因

てんかんの原因は大きく「症候性てんかん」と「特発性てんかん」の2つに分類されています。

症候性てんかん

寝ている赤ちゃんの手
乳幼児揺さぶられ症候群などで脳が傷ついてしまった場合や、赤ちゃんの脳が作られる過程で異常を認めている場合(先天異常)など、脳の画像検査などで明らかな病変が見られるものを「症候性てんかん」と言います。
 
※乳幼児ゆさぶられ症候群
乳幼児が揺さぶられ時に起こる重症の頭部損傷です。赤ちゃんの頭は重く自分で支えることが出来ないため、力強く揺さぶられると脳の中で出血が起こり(硬膜下血腫など)てんかん発作を起こしてしまう場合があります。

特発性てんかん

症候性てんかんとは反対に、画像検査などで脳に大きな異常がみられず、原因が不明なものを「特発性てんかん」と言います。

てんかんの発作

てんかんの発作が起きている子どものイラスト
「てんかん発作」は一過性の症状のことで、大きく全般発作と焦点発作の2つに分類されます。全般発作は脳の全体が興奮して起こる発作で、焦点発作は脳の一部から異常信号が出るものになります。中には全般発作と焦点発作両方の特徴を持つものや、得られた情報からは分類が難しい場合もあります。

全般発作

脳の全体が興奮して起こる発作で、ほとんどの場合、意識を消失してしまう特徴があります。子どもの全般発作の代表的なものを確認していきましょう。
  • 強直間代性発作(きょうちょくかんだいほっさ)
全身を硬直(力が入った状態)させた後、ガクガクと手足の震えを繰り返します。意識を失い、一点を見つめ口から泡を吹くこともあります。発作は通常5分以内に終わり、身体の筋肉がゆるみ朦朧状態になることが多くあります。
  • 若年ミオクロニーてんかん
身体の一部または全身の筋肉が一瞬(0.5秒以下)収縮する発作。発作の間に意識を失いますが、発作の時間が短いため意識障害を自覚されないことが多くあります。
  • 小児欠神てんかん(しょうにけっしんてんかん)
数秒から数十秒意識が突然無くなります。行なっていた動作のまま動きが止まり、発作から回復すると再び行なっていた動作を開始します。目がうつろになることが多くあります。

焦点発作

脳の一部から異常信号が出て起こる発作。脳は部位に応じて果たす機能が異なるため、異常信号が出される部位により症状が異なります。身体の特定の部分に症状が見られることが多く、一時的な麻痺が生じることもあります。子どもの焦点発作の代表的なものを確認していきましょう。
  • ローランドてんかん
入眠時や寝起きに起こることが多く、意識は保たれているが口周辺から顔の片側に1〜2分程度のけいれんが見られます。時に、全身のけいれんを伴うこともあります。思春期になると発作は消失します。

※この他にも数多くの発作があります。

てんかんが起きた時の保育士の対応

子どもを開放する保育士
2018年(平成30年)の研究論文(※)によると、保育者のうち36%がてんかんのある子に関わった経験があると回答しており、保育者が発作に対応する可能性も少なくないと言えます。

※参考:保育の場におけるてんかんの子どもへの保育者の対応(2018年)

てんかん発作が起きた時には、慌てずに発作時間や症状を観察し、可能であれば様子を録画しましょう。録画がされた情報があることで、診断に役立つこともあります。基本的に多くのてんかん発作では数分で治まりますが、発作が止まらない場合は救急要請し保護者への連絡など早急な対応をとりましょう
  1. 安全な場所へ移動する
  2. 子どもの様子を見ながら他の職員を呼ぶ
  3. 息がしやすいよう衣類を緩め、横向きに寝かせる
  4. 発作の持続時間や、どのような様子なのか映像やメモで記録する
  5. 発作が治まらない場合は、緊急要請をする

注意すること

発作の際、嘔吐が生じる可能性もあります。嘔吐による窒息を防ぐため顔を横に向け、無理に体を揺さぶったりしないよう注意して下さい。また誤って口にハンカチを入れたり(※)身体を押さえたりせず、落ち着いて対応しましょう。
※以前は舌をかまないようにするために行われていましたが、現在は窒息などのリスクがあるため行いません

保護者に確認しておくこと

子どもを抱いた保護者と話をする保育士
園で子どもを預かるにあたり、保護者からの情報はとても大切です。必要なポイントを確認していきましょう。

服薬管理について

子どものてんかん治療では抗てんかん薬の服薬が基本となり、決められた服薬回数を守ることが大切です。

抗てんかん薬の副作用には眠気やふらつきやなどの症状があるため、自宅での服薬後の様子について確認しておきましょう。また園での服薬管理が必要な場合、服薬時間や服薬方法を確認し、子どもを安心して預けられる体制づくりも必要になります。

発作の予防

保護者にとって発作が起きることは不安の一つでもあるかもしれません。保護者の思いに寄り添いながら、どのような状況で発作が起こりやすいのか、発作が起こったときはどのような対応が必要なのかを確認しましょう。てんかん発作は光や睡眠不足など、決まった刺激や出来事により生じる可能性があります。リスクを避けながら過度な行動制限をせず、子どもが安全に生活できるよう情報を共有し対応していくことが大切です。

安全な生活の体制づくりを

子どものてんかんといっても、症状や原因はさまざまです。てんかんについての学びを深め、子どもの成長や発育を支援し、安全な生活の体制作りをしていきましょう。

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