午睡中の死亡事故の状況
はじめに、近年における午睡中の死亡事故について見てみましょう。死亡事故の事例
2023年(令和5年)12月に、認可外保育施設で午睡中の死亡事故が発生しました。生後4ヶ月の赤ちゃんが午睡時間中に意識不明の状態で発見され、同日中に死亡が確認されました。報道によると、うつぶせで眠っている20分間の間に、職員による呼吸の確認は行われていなかったようです。口や鼻の周囲の布団が多量の唾液で濡れており、それが死亡の原因なのではないかという見方もあります。
出典:認可外保育施設で乳児死亡、昼寝時間中に 東京・世田谷/日本経済新聞 >>記事はこちら
令和5年の死亡事故の発生状況
こども家庭庁が公表している「令和5年 教育・保育施設等における事故報告集計」によると、令和5年の保育施設や放課後児童クラブでの死亡事故は9件、そのうち睡眠中に起きているものは4件でした。死亡事故の半数近くが睡眠中に発生していることが分かります。静かで動きが少ない睡眠中こそ、注意深く子どもの様子に気を配る必要があると考えさせられます。
出典:「令和5年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について/こども家庭庁 >>詳細はこちら
午睡中に事故が発生する原因
午睡中の事故を防ぐために、危険につながる要因は取り除いておくことが大切です。ここからは、午睡時に留意しておくべきことを確認していきましょう。
窒息
口元や口の中に物があると、窒息の可能性があり危険です。呼吸ができないと泣き声をあげることもできません。きちんと呼吸ができる状況の中で眠っているか、定期的な確認が必要です。食べ物による窒息
食事の最中で眠たくなる子どもも少なくありません。食べ物が少しでも口の中に残ったまま横になると、窒息の危険性があります。眠たそうにしていたら食事は終わりにして、口の中に食べ物が残っていないか確認してから布団へ行くようにしましょう。
SIDS(乳幼児突然死症候群)
SIDS(シッズ)とは、「Sudden Infant Death Syndrome」の頭文字を取った略称で、日本語では「乳幼児突然死症候群」と呼びます。その名前の通り、何の予兆や既往歴もないのに乳幼児が突然死に至ってしまう病気のことです。原因不明で、窒息死などの事故とは異なります。うつぶせ、あおむけ、いずれの場合も発症の報告があり、明確な因果関係が証明されている訳ではありません。しかし、発症率はあおむけ寝よりもうつぶせ寝の方が高いことが、研究結果から分かっています。
お医者さんから医学的な理由でうつぶせ寝を勧められている場合を除いて、うつぶせ寝をさせてはいけません。寝返りをしてうつぶせになった場合も、保育者があおむけに体勢を戻すようにしましょう。
出典:乳幼児突然死症候群(SIDS)について/こども家庭庁 >>詳細はこちら
SUDI(予期せぬ乳幼児突然死)
SUDIとは、乳幼児における原因不明の突然死全体のことを指します。「Sudden Unexpected Death in Infancy」の頭文字をとって、SUDI(スーディー)とも呼ばれています。前述したSIDS(乳幼児突然死症候群)は、SUDIの一つとして位置付けられています。園でできる予防策
睡眠中の事故を防ぐために、保育園ではどのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。こども家庭庁が公表している「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」に記載されている「窒息リスクの除去の方法」をもとに、必ずしておきたい対策についてまとめました。出典:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン/こども家庭庁 >>詳細はこちら
安全に寝られる環境を整える
枕やぬいぐるみなど、柔らかいものを顔周りに置かないようにしましょう。ガーゼやタオルなど、口元を覆ってしまう可能性があるものにも注意が必要です。スタイは外し、おんぶ紐など首に絡まりやすいものは離れたところに片付けておきます。部屋は、子どもたちの顔色が見える明るさに保ちましょう。カーテンを閉め切った暗い部屋では顔色の変化に気付くことができません。
また、子どもたち全員が眠っていたとしても、保育者が不在の状態になることは避けましょう。全員が見渡せる場所で、子どもの様子を見守ることが大切です。
口の中に異物がないか確認する
眠る前に口の中に異物がないか確認しましょう。食べ物の他に、小さな玩具やティッシュ、嘔吐物なども、子どもが口の中に含んでいる可能性があります。月齢が低いほど、自分で訴えたり、口から出したりしない場合が多いので、必ず保育者が確認するようにします。
また、鼻水や痰が喉に絡む場合もあります。体調が良くない子は保育者の近くに寝かせるなどして、特に注意深く状態を観察しましょう。
定期的に子どもの状態を確認する
子どもが眠っている時は、体位だけでなく、呼吸や顔色などのチェック(ブレスチェック)を行います。午睡時に行うチェックは一人ひとり丁寧に行います。確認の間隔は「0歳児は5分に1回、1〜2歳児は10分に1回が望ましい(※)」とされています。3歳児以上児であっても、定期的に様子を確認することが大切です。
※出典:保育施設における睡眠中の事故防止及び救急対応策の徹底について(通知)/東京都福祉保健局 >>詳細はこちら
睡眠中の事故を防ごう
午睡中は子どもから目を離さず、定期的に姿勢や呼吸などを確認することが大切です。睡眠中に事故が起こりやすいことを認識し、適切な見守りと対応を行っていきましょう。午睡中の保育に携わる方は、参考にしてみてください。
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