保育園への不審者侵入事件
2021年11月9日、宮城県登米市の認定こども園に刃物を持って侵入した男が、職員に取り押さえられて現行犯逮捕されたニュースが大きく報道されました。犯人が「子どもを殺す目的で侵入した」と話しているということに、大きなショックを受けた保育関係者も少なくなかったと思います。その他にも過去には、2006年に鹿児島県にある保育園にカッターナイフを持った男が侵入した事件や、2017年に大分県にある認定こども園に刃物を持った男が侵入し、保育士や児童が切り付けられた事件など、保育施設での不審者侵入のケースがありました。
このような事件による被害を未然に防ぐためにも、保育士は日頃から防犯の意識を高く持って対策をしておくことが必要です。
日頃からできる防犯対策
各園では防犯訓練などを行うなど、非常事態が起きたときの対応や職員の役割について考えているかと思います。それ以外にも普段の園生活の中でできる防犯対策がありますので、確認してみましょう。施設に入るときには確認を
お迎え時、普段は父母が来るけれど今日はおじいちゃんが来た、などということもあると思います。「〇〇の祖父です」などと言われ、安易に園内に通してしまうのは危険です。普段と違う人がお迎えに来るときには事前に連絡をもらうように徹底し、園内に通す前には名前や連絡先を書いてもらうなどの対応を決めておきましょう。合言葉を決めておく
不審者の侵入が確認されたとき、そのまま「不審者が侵入しました」と周知してしまっては、相手を刺激することになるかもしれません。そのため、あらかじめ園内だけで通じる合言葉を決めて、職員全員で共有しておくことも有効な手段です。合言葉は必ず全員で理解して、すぐに対応できるようにしておきましょう。【合言葉の例】
- 「ハチが侵入しました。子どもたちは教室に入ってください」
- 「〇〇先生(いない先生の名前)職員室へ来てください」
- 「〇〇(実際にはない活動名)の時間になりました。みんな教室に戻りましょう」
- 合言葉ではないが、決まった音楽を流す
定期的な防犯訓練
毎月とまではいかなくても、数ヶ月に1回など定期的に防犯訓練を行っておくことも大切です。「園内に全員がいる場合」「あるクラスはお散歩に出ている場合」など、さまざまなシチュエーションを想定しておくと臨機応変な対応ができるようになります。ほいくisで実施した保育者へのアンケート調査で、実際に行っている防犯訓練の内容を聞いてみたところ、さまざまな回答が集まりました。
【保育園や幼稚園での防犯訓練】
- 警察署の人が不審者役をやって、110番通報までする
- 刃物を持った人やなりすましの親戚役などさまざまなパターンを予測し、いろんなところから侵入しています
- 訓練日は職員には内緒で行っています
- 不審者がいた際の暗号を言い、部屋に入る練習
- 避難訓練後、職員がさすまたの使い方の講習を受けています。女性職員のみで成人男性に勝つために
調査期間:2022年8月16日(1日)/調査方法:Instagramでアンケートを実施/調査対象:Instagramユーザー/有効回答数:1問目「Q. 園内に不審者が侵入したケースの対応など、園で実施している防犯訓練についてお聞きします。どれくらいの頻度で行われていますか?」2,966件、2問目「Q. 防犯訓練の内容はどのようなものですか?(フリー記述)」186件、3問目「お勤めの園ではどんな防犯グッズを置いていますか?例:さすまた、カラーボールなど(フリー記述)」
名前を表に出さない
今は、不審者対策で名札を外して登降園する園や小学校がほとんどですよね。どこかで園児の名前を知られてしまい、保護者や家族を装って園内に侵入したり声かけをしてきたり…ということを避けるためにも、名札の外し忘れがないように保育士が降園前に確認しましょう。また、かばんや帽子などへの名前の記載は内側にするなど、園で対応をそろえておきましょう。今は、子どもに「マーク」を振り分けている園も増えています。直接名前を書かなくてもマークを覚えることで持ち物の見分けがつきますね。
防犯用具の設置・マニュアル作成
先がU字になっている防犯用具の「さすまた」や、防犯スプレーなど、防犯用具を園内に設置しておきましょう。門のオートロックや防犯カメラの設置がされている園も多いと思いますが、未設置のところは、子どもの安全のためにも検討する必要があるでしょう。また、園ごとに防犯マニュアルがあると思うので、全職員がしっかり目を通し把握しておくことも重要ですね。
近隣の不審者情報は共有
近隣地域で不審者情報があった場合は、必ず保護者にも情報共有をしましょう。保育士だけでなく、保護者も含めて安全を意識した行動をすることで子どもたちを守ることができます。メール配信などの体制をしっかりと整えておきましょう。おすすめの防犯グッズ
ここでは、園で常備したり、戸外活動で持っておきたい防犯グッズを紹介します。防犯スプレー
[motedo 防犯スプレー TG-2508 護身用 コンパクト]コンパクトで持ち運びに便利な催涙スプレーです。お散歩や戸外活動中の不審者との遭遇時などに使えるグッズとしておすすめ。お散歩バッグの中に入れておくと良いでしょう。
防犯ブザー
[防犯ブザー【2個セット ピンク+ブルー】 LEDライト付き 防犯アラーム]防犯ブザーも、お散歩バッグにつけておくと良いでしょう。LEDライト付きで防水加工、USB充電可能で使い勝手もばっちりです。
カラーボール
[防犯用 蛍光カラーボール【大玉2個入り】]防犯用カラーボールも園に設置しておくと安心です。大玉で投げやすいサイズがおすすめですよ。
「いかのおすし」を覚える
大人だけでなく、子どもたちにも防犯意識を持ってもらうことは大切です。防犯訓練では定番の「いかのおすし」は、東京都教育庁と警視庁少年育成課で考案され、現在では園での防犯訓練や園児への安全指導でもよく使われています。子どもたちにも覚えやすい防犯標語なので、しっかりと伝えておきましょう。- いか・・・ついていかない
- の・・・車にのらない
- お・・・おおきな声で叫ぶ
- す・・・すぐ逃げる
- し・・・しらせる
- つ・・・ついていかない
- み・・・みんなといつもいっしょ
- き・・・きちんとしらせる
- お・・・おおごえでたすけをよぶ
- に・・・にげる
このような合言葉を、保育士さんだけでなく子どもたちも一緒に覚えて意識しておくと良いですね。
本・紙芝居で意識を持たせる
絵本や紙芝居で不審者などについての話を聞くと、子どもたちにも理解しやすくなるでしょう。数は少ないですが、防犯をテーマにしたものがあります。子どもたちが自ら興味を持つことで、しっかりと覚えてもらうことができます。きをつけなくちゃ!
[きをつけなくちゃ! (ミキハウスの絵本 こぐまのくうぴい)]作・絵:なかや みわ
出版社:三起商工(ミキハウス)
大人気「「こぐまのくうぴい」シリーズです。迷子になったら…知らない人に声を掛けられたら…子どもたちの周りに起こりうる危険。そんなときはどうすれば良いのか、絵本で学びましょう。
ぜったいについていかないよ!
[ぜったいについていかないよ!: ゆうかい・つれさりにあわない]作:島崎 政男
絵:すみもと ななみ
出版社:あかね書房
ぶんでじぶんをまもろうシリーズ第1弾。「お母さんが事故にあった」「欲しいものをあげるからおいで」など知らない人に言われたら…? 誘拐、連れ去りにあわないための方法が分かる絵本です。
防犯をテーマにした紙芝居も
絵本の他にも、防犯紙芝居が販売されています。紙芝居は大人数でも見やすいので、防犯教室などで使うのにも便利ですよ。- 防犯標語紙芝居『いかのおすし』
絵:たんじあきこ
>>詳細はこちら
- 防犯紙芝居『しらないひとにきをつけて』
絵:川端理絵
>>詳細はこちら
日頃から意識を持った対策を
防犯対策は、日頃からの用意や対応が重要になります。いざというときに慌てないよう、訓練や毎日の習慣などを通して備えておきましょう。【関連記事】