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保護者から保育者に!若いお母さんの挑戦【みんなで作るカノア保育園<17>】

カノア保育園の先生と子どもたち
2000年、ブラジル北東部にある人口300人の小さな漁村“カノア・ケブラーダ”に保育園を作った鈴木真由美さんのストーリーの17回目です。>>ストーリーの一覧はこちら

10代のお母さんと、カノア保育園との出合い

私たちがカノア保育園を設立した直後、保育園のある地域で1人の女の子が生まれました。名前はイザベル(Isabel)。彼女の母親は、まだ15歳のフラビアーニ(Flaviane)でした。

観光地として急激な発展を続けるカノア・ケブラーダ地区では、青少年の売春や麻薬が大きな問題となっていました。そしてもう一つ、大きな問題となっていたのが、若年妊娠です。

これは貧困の連鎖の始まりともいわれていました。多くの場合、女性が1人で子育てをします。

両親が手伝ってくれる場合は少なく、祖父母や親せきの家に身を寄せることがほとんど
です。フラビアーニもそんな一人でした。

フラビアーニは叔母の家に居候し、中学中退となり、子どもを育てるために働き始めました。

それから3年、3歳になったイザベルはカノア保育園に入園することになったのです。

初めてカノア保育園を訪れた日、イザベルと一緒にやってきた母親のフラビアーニ。部屋に入ると、カノア保育園の玩具一つ一つを手に取って遊び始めました。



子どもにとっての「おもちゃ」とは?

カノア保育園の様子を初めて見たフラビアーニは、こんな質問をしてきました。

「保育園なのに、おもちゃは木や石、貝殻に、布製品ばかり。なぜ、プラスチックのおもちゃがないの?」

そう問いかける彼女に、私たちは2つのことを伝えました。
  1. 子どもと一緒に、おもちゃになるものを集めているから
  2. プラスチックは壊れたら捨てるしかないけど、木や布で作っているものであれば、修理をしてまた使うことができるから
すると彼女は目を輝かせ、

「それなら私も家でイザベルのためにおもちゃをそろえることができるわ!!」

と、嬉しそうに帰っていったのです。

子どもにとってのおもちゃとは、子どもが遊んでいるものすべての物のこと。

お散歩の途中で拾った木の葉や小石、枝でさえ、おもちゃなのです。廃材を使って子どもと手作りしてもよいでしょう。

子どもは私たち大人よりもずっと、想像力があり、創造性たくましいのですから。
木の実をつかって遊ぶカノア保育園の子ども

好奇心と探求心から感じた「保育者の素質」

フラビアーニの好奇心は止まらず、毎日さまざまな質問を私たちに向けてきました。

そしてある日、エヴァさん(私と一緒にカノア保育園を立ち上げた仲間)は言ったのです。

「あなたさえよければ、私たちと一緒に働かない?」

中学校さえも卒業していないフラビアーニ。彼女は少しためらいながら、うなずいたのでした。

保育の経験のない彼女でしたが、私とエヴァさんは、彼女から感じられた子どものような好奇心と探求心、そして子育てにひたむきな姿に心を動かされていました。

そして「希望を託してみよう!」と思ったのです。

私たちが出した条件は、中学と高校を卒業することでした。それから彼女は夜間学校に通う傍ら、カノア保育園で働き始めました。

最初は掃除や外で遊んでいる子どもの見守りをしてもらいました。そこで、子どもをじっくり観察してもらうことにしたのです。

こうして日中は私たちのサポートとしてカノア保育園で働きながら、夜間中学・高校を無事に卒業しました。

その姿を見ていた村の女の子たちは彼女の後を追うように、中学、高校へと通い始めます。

「若くして子どもを産んでも、自分が望めば、学校に通い続けることができ、自分のなりたい職業につけるのだ。」

フラビアーニの存在は、多くの村の女の子たちの希望となったのです。

その後フラビアーニは大学に通い、教育学の学士の資格を取りました。その後、カノア保育園の大黒柱へと成長していきました。
カノア保育園の子どもたち

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