ここは天使が住む村だ
私たちが運営する「カノア保育園」は、ブラジル人が「地の果て」と呼ぶような場所にある、海と砂丘に囲まれた、自然豊かなところにあります。ここを訪れたある人は、「ここは天使が住む村だ」と語っていましたが、訪れる人がそんな風に感じてしまう場所なのです。2000年。私は、“保育園を作る”ために、この場所に来ました。そこには、サンパウロで保育士として働いていたエヴァさんという方がいて、この村で療養をしながら自宅を開放し、日本でいう、“子育て広場”のような場所を開いていました。 多くの母親たちは、観光地として名高くなっていく“カノア・ケブラーダ”での暮らしに大きな不安を抱いていました。小さな漁村であるこの村。彼女たちは、海と砂丘、そこにある自然豊かな森に囲まれた村で生まれ育ちました。
しかし、そんな状況も1980年代後半から大きく変わってきていたのです。物々交換で生活していた彼女たち。観光地化が急激に進む中、貨幣経済の波にのまれ、日々の暮らしにお金が必要となってきたのです。
漁師だけでは暮らしが成り立たなくなり、観光地の民宿やレストランなどで母親たちは洗濯や食器洗い、掃除などをしながら働くようになっていました。「昔のように、大家族の中で子どもたちが育つという環境がなくなっている。」そう母親は訴えたのです。
なぜか?
大人は仕事に出ているため、家にいません。子どもたちだけで家にいるといっても、10代になると売春や麻薬などに手を出す子どもが後を絶たちません。小さな子どもだけを家に残していくのは難しいという現実。どうしたらよいのか?