今回のテーマ「ドキュメンテーション」
前回、前々回と「子どもの主体的な学び」をテーマにお話してきました。 今回は、その学びの記録である「ドキュメンテーション」に触れたいと思います。ドキュメンテーションとは園内で起こったことの記録です。記録の手法として、文章、写真、動画、音声などがあります。日本でもドキュメンテーションの認知が広がってきて、実際に取り入れている園もたくさんあると思います。
ドキュメンテーションと聞いて思い浮かぶのは?
ドキュメンテーションと聞くと「保育者が撮った子どもの写真と文章の組み合わせ」をイメージする方が多いと思います。しかしスウェーデンでは、子どもは記録される対象だけでなく、自らも記録する主体ということを重視しています。また、それが次の学びに繋がる架け橋になることも。
今回は、そんな子どものドキュメンテーション~主体性への繋がりを実感した、保育実践をお伝えしたいと思います。
2歳の子どもとiPadの出来事
2歳になったばかりのEちゃんは、公園で他の子どもたちが手をつないで遊んでいる様子を見ていました。その後、Eちゃんは仲間に入ろうとするのではなく、なんと保育者が使っているiPadを持ち出してきたのです。 はじめは何をやろうとしているのか分からず、「iPadは使わないで」と言おうとしたのですが、Eちゃんがカメラを向ける素振りをしているではありませんか。その意図を察知して、私はカメラアプリを立ち上げてあげました。そして画面を食い入るように見て、どうやって写真を撮るのかを探っているのです。それと同時に画面越しに友達の様子もしっかり観察していました。「ここを押すんだよ」と、白いボタンを指さすと、ちょっとはにかみながら触れていました。
写真が撮れた実感がないのか、その後は連打してみたり、画面のあちこちに触れたりしていました。
子ども自身が記録する「ドキュメンテーション」
Eちゃんは保育者が子どもたちにカメラを向けて、子どもたちの学びの様子を写真に撮っていることを知っていたのでしょう。そして、恐らく他の子どもたちの楽し気な様子を、保育者の真似をして写真に記録しようとしたようです。
その様子から、ドキュメンテーションとは子どもの様子を保育者が記録するだけでなく、子どもがどのようにこの世の中のことを学んでいるのかを、彼ら自身も記録できることを理解しました。
さらに、その記録は写真だけでなく、子どもが発した言葉、行動、子ども自身が描いた絵などの作品もその一部になるのです。
子どもが「ドキュメンテーション」に参加する方法は?
Eちゃんのように自分からドキュメンテーションに参加するには、1・2歳児は経験が必要です。そこで今、クラスの子どもたちに自分でひよこ豆の栽培の記録を写真で取ってもらっています。 それだけでは実感が沸かないので、印刷してプリンターから出てくるところを見たり、その写真を壁に張ったりして、いつでも見て振り返れるようにしています。
そのドキュメンテーションによって、活動の再体験ができて、新たな興味や次なる学びに繋がっていくとスウェーデンでは考えられています。 実際、このドキュメンテーションをする活動を通して、子どもたちは誰が撮った写真なのかを気にしており、自他の区別の芽生えが見られています。
とても奥が深いドキュメンテーション。私ももっと子どもの学びが広がるような記録をとっていきたいと思います。
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