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スウェーデンでの保育内環境の捉え方
日本の幼児教育の五領域の1つである「環境」。スウェーデンではどのように捉えているのでしょうか? 環境といってもさまざまありますが、今回は室内環境の作り方を中心にお話したいと思います。スウェーデンの幼児教育においても、よく考えられた環境・おもちゃ・その他の素材(以下、環境と表記)は、「第三の教育者あるいはパートナーである」と語られています。
環境は、保育者たちが行う教育活動を助けてくれるものです。特に私の職場のプレスクール教師は、環境は子どもたちにとって“興味をそそり、探求したくなるようなもの”であることが望ましいと言います。
職場のプレスクールの環境を変更
そこで、子どもの探求心をより引き出すために、プレスクール教師主導のもと、職場の室内環境をがらっと変更しました。これまでは1~2歳児クラスのために、さまざまなケガのリスクを考えて広めのスペースをとっていました。しかし、今年の子どもたちには合わないようで、スウェーデンのプレスクールではよく見られる「ステーション型」の配置に変更しました。
ステーション型とは、室内をいくつかのエリアに区切って、1つの活動に集中できるようにするものです。
私たちは1つの部屋を4つのエリアに区切りました。
- レゴなどを組み立てる遊びの場所
- アトリエスペース
- デジタル機器を使う場所
- サムリングの場所(午前に行う朝礼のようなもの)


私はその“決まり”について、子どもの自由な発想・表現に制限をかけるのでは…と、違和感があります。しかしスウェーデンでは、ある活動の中ではさまざまな素材をかけ合わせることをする一方で、それ以外の自由時間ではこのような決まりの元に過ごす方法を取っています。「素材のかけ合わせ」とは、例えば車のおもちゃと絵具を使ってタイヤの動きを視覚化するなど、普段は混在することがないおもちゃ同士を使う活動を、保育士らが計画して行うことがあります。
環境変更の結果は?
このような環境の変更をした結果、子どもたちがそれぞれの興味がある場所に長く留まり、探求する姿が多く見られるようになりました。特にアトリエスペースが人気で、一人が絵を書き始めると次から次へと子どもたちが寄ってきて、順番待ちになるほどです。今までのアトリエスペースは別室にあったため、子どもたちが自由に行き来できないようになっていました。すぐにアクセスできることで、子どもたちの表現活動を助けることになって、大満足です。
そして、スウェーデンでは子どもたちの声を大切にしています。声といっても直接的なものからジェスチャーや態度まで、子どもの発するものすべてです。
子どもたちが過ごすプレスクールは「大人が決めるだけでなく、彼・彼女たちの意見も反映させるべきだ」と、カリキュラムにも述べられています(子どもの発言権)。
そのため、今回のように子どもたちに合わない環境と判断した場合は、あっさりと形を変えていくのがスウェーデンのプレスクールの方針です。
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