子どもはどうしたら食べられるようになる?
現場の保育士さんから多く寄せられる質問の1つとして、子どもの極端な偏食についてがあります。「白米や麺類、パン、みそ汁やスープの汁だけしか食べないのですが、どうしたら食べられるようになるのでしょうか?」
「食べない」のには理由がある
これは「食べない」のではなく、「食べられない」のです。「食べられない」理由その1
感覚の感じ方が原因で食べられない味覚や嗅覚、触覚がとても敏感で匂いが受け付けなかったり、食材が入ることで痛みや不快さを感じる。
例:・給食やお弁当の食材の匂いが混ざることで気持ちが悪くなる
・揚げ物は“痛い”と感じて食べられない
「食べられない」理由その2
見た目のこだわりが原因で食べられない白米や麺類しか食べられないというお子さんにはよく出会います。白米や麺はどこにいっても“白”という安心から、見ただけで味のイメージがつきやすく味の変化が苦手な子どもたちにとっても安心して食べようと思える食材の一つです。
その他にも、丼物の様に混ざり合っている物は見た目、味が混ざり合う事で気持ち悪さを感じて食べられないという子どもたちもいます。
偏食といっても様々なタイプがあり、子ども一人一人に理由が違う事もあります。
食べられない子どもの行動の背景とその対策については、こちらの動画でも詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
「食べられない」子にはどう対応する?
どの理由にしても、大切な事は無理には食べさせないということをお願いしたいと思います。「食べてもみないで好き嫌いするなんて…」と思うかもしれませんが、それは大人の視点です。
大人はこれが美味しい、これは苦手な味など今までの経験を通して見た目の段階で味を想像することができます。また、外食先では自分の苦手な味のメニューは注文することはありません。
この様に、苦手と上手に付き合うことが出来ますが、乳幼児の段階はまだ食材の見た目から味のイメージをつなげる事が難しい子どもがたくさんいるのです。
また、感覚の感じ方は様々で、人一倍の敏感さをもっている子どもたちにとっては、食べるという事自体が不安でたまらないのです。
安心して食べられる経験を積む
大切なのは、食べるということは“安心で楽しいこと”という経験をまずは積みかさねることで、大人から無理にすすめられる、食べさせる等、食への不安を強くしないということです。この様な対応をすることで「この人はいつも僕の嫌なことをする人」という人への不信感も育ててしまいます。
「食べられない」子どもたちに今できることは?
では、今出来ることは何かというと子ども自身から「食べてみようかな」と思える環境を大人が整えるということです。給食の際には、食べられないからといって白米や中身のない汁物など本人が食べられるメニューだけを提供するのではなく、食べられなくても良いので目で見えるように一緒に出しておきます。
大好きな先生やお友だちが美味しそうに食べていたら「ちょっとだけ食べてみようかな」と思うかもしれません。また、調理活動や自分で育てた野菜など楽しかった経験が安心につながり「食べてみても大丈夫そうだ」と感じる事もあります。
いずれにしても、食べるか食べないか、そのタイミングは本人が決めることです。そのタイミングが来たときに目の前に食材がなかったら食べることが出来ません。子どもにとっては勇気が必要な大きな一歩となることから、環境だけを整えて気長に待ちましょう。
井上さんからアドバイス
極端な偏食をもつ子どもは、無理に食べさせることで今まで食べられていた数少ない食材も全く食べられなくなってしまうこともあります。まずは、今食べられるものを安心して食べられるようにすること。新たに食べようと思えるかどうかは本人が決めること、大人はそう思えるような環境を整えて、待つことを継続してほしいと思います。
今後の遊びから経験した様々な感覚的体験から、安心が育ち次第に食べられるものが少しずつ増えていくこともあります。
水分も食事も一切取れなくなった場合には医師への相談が必要です。極端すぎる偏食で栄養バランスが心配と感じるようであれば医師に相談することもよいでしょう。
食事の時間を安心して楽しく食べられる環境を整える、これは明日からすぐに出来る支援です。子どもが自発的に行動したいと思える環境づくりに目を向けていきましょう。
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