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子どもの自己肯定感はどう育つ?|発達支援の現場から

子どもの自己肯定感はどう育つ?
児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上さんが、現場の保育士さんから多く寄せられるお悩みに回答します。>>連載一覧はこちら

「○○君は自己肯定感が低い」という言葉は保育の中でよく聞かれる言葉ですが、どうしたら「自己肯定感」が育つのでしょうか?「自己肯定感」とは一体どういう意味でしょうか?

お友だちとのトラブルで、先生から注意されると「どうせ私なんて。」「いつも僕ばかり怒られる。」「先生は僕のことを分かってくれない。」と発する子、製作や運動などで失敗した時に「いつも失敗ばかり。」こんな言葉で自分に自信がない子はいませんか?

先生たちの中で「自己肯定感が低いから…。」「出来るようにして褒めていこう」という言葉はよく聞かれます。確かにそれも良いでしょう。しかし、何かが出来るようになる、それに対して褒められる、褒められたから自己肯定感が育つ、その構図では、苦手なことにいつまでフルパワー以上の力を使い続け、走り続ければ良いのでしょうか?

“できるようになること”=“自己肯定感を育てる”ではない

出来なくて泣く子ども

 発達に偏りをもっている子どもたちは、さまざまなことにアンバランスをもっています。得意な部分だけを見て、大人が勝手に “○○が出来るのだから○○も出来るだろう” と、バランスの良い育ちに当てはめることは子ども達を苦しめます。

例えば、これだけおしゃべりが出来るのだから「嫌なことがあった時には、手を出すのでは無く言葉で伝えなさい。」ということはよく聞かれます。

しかし、言葉は喋れてもコミュニケーションとしての言葉を獲得出来ているでしょうか?また、自分の気持ちを理解しそれに当てはまる言葉を知っているでしょうか?怒りをコントロールし、手を出したい気持ちを抑えて言葉にして伝える発達段階にあるでしょうか?

日頃、落ち着きなく動き回っている、だから運動は得意だろうと勘違いし「縄跳びは練習すれば跳べるようになる、頑張って毎日練習しなさい」とひたすらに苦手なことを努力の方向性を間違えて声をかけていないでしょうか?



どんな自分でも肯定できる力が“自己肯定感”を育てる

自己肯定感を育てる

大人は苦手なことは、ほどほどに頑張る又は得意な人に任せる、誰かの力を借りながらくぐり抜ける等、上手に自分の苦手と付き合うことが出来ます。そして、得意なことで力を発揮しながら社会の中で自分の価値観を感じることが出来ます。

子どもにも得意なことと苦手なことがあります。苦手なことをいつも指摘され、努力を求められ、出来た時に褒められるということが本当の自己肯定感の育ちではなく、誰にでも苦手なことはある、上手く出来ないこともある、失敗することもある、それでも自分は自分、出来ないことがあっても大丈夫という、どんな自分でも肯定できる力が“自己肯定感”だと思います。

それを、育てるのが、まだ思考の柔らかい乳幼児期である保育園、幼稚園の先生方の大切な役目ではないでしょうか?

井上さんからアドバイス

何かが出来るようになることに成長を感じることは自然なことですが、何かが出来なくても誰かに助けを求められる力や、イライラすることでなく「まあ、いっか。」と諦められること、みんなと一緒に出来なくても大丈夫、私は私と考えられる力、工夫できる思考、自己を肯定できる力を育てることが“その子らしく”生きられる力です。

大人の価値観で、その子らしさを決め、育てるのではなく、一人ひとりが皆ちがう自己を肯定する力を育てていきましょう。そのためには、保育士さん自身もどんな自分でも自己を認められる、肯定できる自分になれるよう、人にも優しく、自分にも優しい価値観を育てていけると良いですね。


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井上綾乃(いのうえ あやの)

この記事を書いた人

井上綾乃(いのうえ あやの)

発達支援センターでの実践や短大非常勤講師の経験を積み、自ら法人を立ち上げ、児童発達支援管理責任者(保育士と)して療育の現場で活動中。子どもをプログラムに合わせるのではなく、子どもに合わせた療育プログラムを行いながら、「楽しい」と感じる事で発達する支援を実践。現在では自治体の保育園巡回相談、保育ゼミ講師、依頼を受けての保育園、幼稚園研修講師等人材育成も行っている。
<シャインキッズホームページ>
https://shine-kids.com/

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