今回のお悩み:発語のない子とのコミュニケーションについて
マトロスカさん(一般保育士 5年)からのご相談保育園及びベビーシッターとして勤務しており、ASDの子どもを保育しております。
4歳で発語なし。 私と遊びの中で楽しい遊びを繰り返したいときに教えて覚えた単語が「もういっかい」 。絵カードを使ってコミュニケーションを取ろうとするがカードに興味がなく見向きもしないため使えない。 いらない(ごはんなど)時は手で押し返すなどアピールをするが、他にどのようにコミュニケーションを取る練習をすればいいのでしょうか。
何かを要求することがあったときにその行動の前後でわかるともあるが、全くわからず理解されないと癇癪を起こしてしまう。 言葉ではなく他に方法があれば教えていただきたいです。 よろしくお願いいたします。
専門家からマトロスカさんへの回答
まず、先生の素晴らしいところは、お子さんとやりとりをしたい、お子さんの伝えたいことをキャッチしたいという想いをしっかりともっているということです。
コミュニケーションの基本とは
コミュニケーションの基本は、この人に伝えたいという気持ちを、まずは育てることです。
先生がまさに今行っている、楽しい遊びをもっとやって欲しいという『もう1回』の要求ですね 。おそらくこれは、どのように獲得したのか想像すると、先生がいなければ成立しない遊びを行い、繰り返してほしい様子が見られたら、『もう1回?』と人差し指を出し、繰り返し伝えてきたのではないでしょうか?
これを「ソーシャルルーティーンの遊び」といい、大人との楽しい繰り返しの遊びから、人への興味ややりとりの気持ちを育てていくことができます。
行動に名前(もういっかい)があるということを理解し、表現できるようになったことは素晴らしいですね。
「物には名前がある」ことの理解
さて、このお子さんは、まだ発語がないということですが、物には名前があるというシンボル表象機能は育っているでしょうか?
言葉の獲得には、相手に伝えたい気持ち、三項関係、口腔機能の発達等の他に、それぞれ物には名前があるということが理解出来ているということが必要です。 ※三項関係とは「自己」と「他者」と「もの」の3者間の関係
では、どうやって知っていくのでしょうか? コミュケーション手段の一つに、PECS(絵カード交換式コミュケーションシステム)というものがあります。PECSを学んでいただくと、詳細なコミュケーション手段の段階を知ることが出来ますが、ここでは省略させていただきます。
絵カードを使った支援の方法
そこに、スタートは1枚のカードまたは具体物を準備します。
例えばお菓子なら、そのカードを渡すと自分の食べたいお菓子がもらえる。また、カードを渡すと自分が欲しかったおもちゃがもらえるといった感じです。
カードを渡すと伝えたいことが伝わるという伝わることの喜びが感じられるようになります。伝えたいという意欲を育てコミュケーションとはやりとりなんだということを、カードや物が介在することで行き来がわかりやすくなるよう支援してみましょう。
また、渡す際にはその物の名前を言うことで、物と名前の1対1の関係のシンボル表象機能の育ちの手助けとなるようにしてくださいね
突然カードが置かれていたからといって、カードを取って渡せるようにはなりません。 まずは、大人がプロンプターとして黒子のように行動のサポートをして、体験からその行動の意味がわかるよう支援してください
大人が勝手に、この場面で使えるようになって欲しいという理由でスタートするのではなく、子どもが落ちついている環境で、わかりやすく、要求が出たらすぐに対応できる場面で繰り返し行っていくと良いでしょう。
いつでも主役は子どもです。大人の都合ではなく、子どもが伝えたいと思っている場面を見極め、少しずつ伝わる喜びや、具体的に伝えられる手段が身につくよう丁寧に関わっていくことをおすすめします。きっとご質問くださった先生なら出来るはずです。 応援しています。
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