今回のお悩み:性格?発達特性?ルールを守れない5歳児にどう対応するか
そらさん(一般保育士 8年)からの相談現在年長児を担任しております。
身の回りは自分でできるが集団遊びで自分の嫌なルールは守れない、守りたくない。友だちに指摘されても黙ってしまう。状況判断ができずふざけてしまう、簡単な声掛けをされてもなぜされているのか理解できず元に戻る。製作では作ることに集中できず友だちとのお話に集中、時間内に作れない。自分の好きなとこ(おもちゃのジスターで立体模型のようにキャラクターを作り上げる、説明書を見て組み立てる等)は何時間でも集中して行える。
少しグレーなのではないかと5月ごろから心配になり園長主任に相談するも性格だと一括。現在も就学に向けて時間内に行うことや自分で気持ちを切り替えることなど取り組みがはじまりこのまま成長しき大人になってから苦労するのでは?と心配です。
就学に向けての保護者との面談では現在の様子のみお伝えしましたがご自宅でも同じ様子が見られるということで保護者の方が心配しておられます。(隣にいた主任からはその子の性格だとお伝えされました)
その都度声はかかるのですが本人もルールやどうしたらいいのかは理解しているのですがその場の理解等ができなかった。という状況で私自身の経験、勉強不足でお手上げです…
あまり声をかけるのも本人のストレスなのではと思うのですが普段の保育やご家庭での声掛けはどのようにしたら本人がストレスなくすごくことができるのでしょうか…
専門家からはなさんへの回答
ご質問いただき、ありがとうございます。5歳児さんということで周囲では就学相談が始まるなど「小学校入学が近いから・・・」「このままでは、1年生になって適応出来ないのでは」と考えてしまうことも多くなっている様子が文章から感じ取れます。小学校就学を目的としない支援が大切
まずは、保護者の方と先生方も含め、小学校入学を目的にその子の行動を評価しないことが大切です。また、性格のせいなのか発達特性なのかという部分で上司との意見が分かれたとしても、本人にとって支援は必要なことであり、先生は特性理解をしっかりと学び、支援を実践していくと良いでしょう。支援のヒントは「できていること」の中にある
ご相談いただいた先生はお子さんの出来ることや得意なこと、苦手なことがしっかりと行動観察出来ていることがよく分かります。出来ないことだけに注目せずに出来ることにも注目出来ていることで、この「現在できていること」の中に支援のヒントが隠れています。また、現在の関わりが、本人にストレスを与えていて、どのようにしたらストレスなく過ごしていけるかという、「本人を変えずに周囲の関わり方を変えていく」という支援を行う上で大切な社会モデルの考えをしっかりと持てているということに、先生は必ずよい支援を行えると感じ、この質問回答を書かせて頂きました。
得意から見つける「支援に導く方法」
それでは、本人の得意から導く支援方法についてお話していきましょう。文章の中では、自分の好きなものであれば何時間でも集中して作ることが出来るとかかれています。しかし、一斉活動の制作時間には集中することが出来ずにお友だちとのおしゃべりに集中してしまうようですね。では、この二つを比較すると出来ているときと出来ていないときには何が違うのでしょうか?
興味のない活動に興味を持てるようにするためにできること
例えば、製作場面では皆で一緒のものを作る、つまり自分が作りたいものではない活動だと興味をもてずに集中することが出来ず、お友だちとのおしゃべりが止まらなくなってしまうようです。しかし、興味のあるもので、難しい物でも説明書があれば作成することが出来ているようです。つまり、興味のない活動をどの様に興味をもてるよう工夫するかという部分と、実行機能という物事を組み立てる脳の働きをどう助けるかという部分がこのお子さんの支援で必要なことだと感じます。
このお子さんの好きな物は何でしょうか?文章上では何かのキャラクターが好きなようですね。でしたら、このキャラクターを上手に活かしてみたらどうでしょうか?
例えば、○○のキャラクターが大好きなスイカを作ってここに貼ってみようなど。本人の興味が向くような準備を行って見てください。また、あまり興味のないものの説明を聞き続けることは難しそうですのですし、説明書を見てつくることは得意なようなので、おしゃべりをしてしまう全体の説明時間には、そのお子さんには説明書を渡して先に作り出してもらうのはどうでしょうか?
先生の話を聞いて理解し、覚えて、順番に思い出し、実行にうつすことは難しい。でしたらそれを助ける説明書を利用すれば良いのです。
ルールを守って遊ぶためにできること
次に集団あそびでルールを守れない、守りたくないという部分ですが、このお子さんの知的レベルがどのくらいあるかも気になりますが、まずはルールを本人が理解出来るように伝えられているかどうかです。集団遊びのルールは、状況により変化が激しく全体を見ながらその変化に自分の立場を入れながら対応していかなくてはなりません。遊びのスタートのルールと、こうなったらこうなるというルールの変化から終了までを正しく理解出来ているかを知る必要があります。
また、本人が理解出来ていないようであれば、理解出来るように説明する必要があります。製作場面の情報から実行機能の難しさがあるため、イラストを用いて紙芝居のような形で説明することをおすすめします。
まぁいっかの経験を積むためにできること
次に、理解できていても負けることや自分が鬼になるということが受け入れられない思考のかたさを持っている場合の支援です。このような場合には、理解とは別に分かっていても、自分の思い通りにいかないことを周囲が考えている以上に苦しく「まぁいっか」と柔軟に考えられないため、勝手にルールを変えてしまう、ルールを守らずに参加するため周囲からの反感をかってしまうことがあります。
ルール自体は理解出来ているようであれば、事前に負けるようなこともある、鬼になることもあるという説明を事前に行い、それでも参加したいのかという意思確認をします。そして、負けそうになってルールを変えたい、イライラする等の状況が起きるのであれば、爆発する前にその場から離れる、一息休憩をいれにいく、集団遊びから離れるなど、幾つかの手段を提案するとよいでしょう。
初めは、自ら手段を思いつくことは出来ないため、大人の提案が必要です。また、普段の生活の中から自分の思い通りにいかないことでも「まぁいっか」と思えるよう、○○はだめだったけど○○ができたなど、諦めても良いことが起きた経験をたくさん積み上げていくと良いでしょう。
井上さんからアドバイス
ご相談いただいた先生が気にしているように、本人の行動を修正されるような声かけばかりの生活では、「また、上手くいかなかった」という経験と想いばかりが積み上がってしまいます。環境を整え出来た!と思える経験と共に、出来なくても優しく手助けしてもらえる環境をつくり、安心して自分自身をありのままでよいと思えるお子さんの発達を手助けしていってください。きっと先生ならできるはずです。そのための勉強も頑張ってくださいね。応援しています。 普段の保育で感じている発達支援のお悩み、井上さんに質問してみませんか? このコラムも実際に寄せられた質問にお答えしています。ほいくisでは、保育者のみなさんが抱える発達支援のお悩みを募集し、児童発達支援管理責任者/保育士/発達支援専門士として自治体とともに現場の保育士さんと一緒に発達支援を考える井上さんに回答いただく企画が好評です。
あたたかい目線でいつも保育者に寄り添う井上さんのコラムは、現場の保育者の方からも非常に好評です。ぜひみなさんが感じていること、相談したいことがありましたら以下のバナーをクリックして相談を教えてください。 詳細については、相談応募フォームにてご確認ください。
◆関連記事